神使(読み)シンシ

デジタル大辞泉 「神使」の意味・読み・例文・類語

しん‐し【神使】

《「じんし」とも》神のつかい。ふつう、その神に縁故のある鳥獣虫魚である場合が多い。例えば、稲荷神の狐、八幡神の鳩、春日明神の鹿、熊野権現の烏、日吉ひえ山王の猿など。つかわしめ。

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精選版 日本国語大辞典 「神使」の意味・読み・例文・類語

しん‐し【神使】

〘名〙 (「じんし」とも) 神のつかい。ふつう、その神に縁故のある鳥獣や虫魚である場合が多い。八幡神の鳩、春日明神の鹿、日吉山王の猿、熊野権現の烏の類。つかわしめ。
※中臣祓訓解(12C後)「神光神使駅於八荒、慈悲慈檄、領於十万以降」
随筆北越雪譜(1836‐42)初「これを花水祝ひといふ。毎年正月十五日の神事なり。新婚ありつる家毎に神使(ジンシ)を給はるゆゑ」

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改訂新版 世界大百科事典 「神使」の意味・わかりやすい解説

神使 (しんし)

神の使いや神と特別な関係のある動物をさす。眷属,霊獣ともいう。代表的な例として,京都・伏見稲荷大社の狐,滋賀・日吉大社の猿,京都・護王神社の猪,奈良・春日大社,茨城・鹿島神宮の鹿,奈良・大神(おおみわ)神社の蛇,和歌山・熊野三社の烏,島根・出雲大社鶺鴒せきれい),埼玉・三峯神社の山犬など,種々の動物が神使となっている。これら神使としての動物たちは,鳥類,哺乳類から爬虫類,はては空想上のものまで,あらゆる範囲にわたっている。そして,その地において他の動物と区別され,神聖視,保護されている。ある種の動物が,神の使いあるいは神そのものとなるのは日本だけの事象ではない。外国でも,有史以前の遺跡から,動物をかたどった,あきらかに祭具であるというものが多く発掘されている。神使は古今東西,普遍的に存在している事象である。人間を越える,動物のすばやさ,強暴性,華麗さ,沈着性,これらに加えて動物の目の表情などに,人間は太古から一種独特の神秘性をみたのかもしれない。なぜ,ある特定の動物がその地において神使になったかは,土地土地によって種々の伝承あるいは故事がある。一例をあげると,島根県美保関住民は,最近まで鶏の卵を絶対に食さなかった。当地に鎮座する美保神社の祭神事代主命,通称えびすさまが鶏のために大けがをしたという伝承があり,それを理由に食さないという。この習俗は鶏を神聖視していることを如実に物語っている。他の神使としての動物に関しても同様の伝承が付随している場合が多い。他方,直接,宗教にかかわるものではないが,国や軍隊の紋章には必ずといってよいほど動物が登場している。源は同じものと考えられる。
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