1956年(昭和31)秋からの、民間設備投資ブームによる好景気のこと。1955年以来、世界景気の好転を背景とした輸出伸長、米の豊作、卸売・消費者物価の下落によって生じた「数量景気」は、56年秋ごろから「価格景気」に転化した。同年10月スエズ戦争(第二次中東戦争)が勃発(ぼっぱつ)して国際商品相場と海上運賃が高騰、在庫投資による銑鉄、鋼材の思惑的輸入が増大し、56年度の民間企業設備投資は名目で58%、実質で39%と、戦後最高の伸びを示した。有史以来の好景気という意味で「神武景気」と名づけられたこの景気は、「三種の神器」といわれた白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫の家庭電化ブームの端緒を開き、大衆消費社会形成の糸口ともなった。だが、輸入急増によって外貨危機が生じ、57年2月ごろからの国際商品相場と海上運賃の反落もあって国際収支は一挙に悪化、57年後半から58年なかばにかけて「なべ底不況」が訪れた。
[荒 敬]
『内野達郎著『戦後日本経済史』(講談社学術文庫)』▽『有沢広巳監修『昭和経済史』(1976・日本経済新聞社)』
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高度経済成長の始まりとなった1956~57年(昭和31~32)の本格的な好況。特需ブーム後の国際収支危機に直面したのち,日本経済は劇的に好況に転じた。スエズ危機を背景に国際的な物流が変わったこと,重化学工業を中心とした設備投資の時代を迎えたことがその理由であった。経済白書は「もはや戦後ではない」と書いたが,57年国際収支の悪化で強い引締め政策がとられて,景気は急速に冷却した。
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…保守合同後の第3次鳩山一郎内閣は,55年12月経済自立五ヵ年計画を立て,独占資本を中心とする合理化と弱小企業切捨て政策を積極的に推進した。55年は世界経済が好況を続け,国際的な緊張緩和(デタント)の影響もあって,後半から輸出船のブームが始まり,〈神武景気〉とうたわれた。56年日ソ国交回復と国連への加入が実現し,国際社会に日本が正式に復帰したことにより,貿易が拡大した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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