神流川(読み)カンナガワ

デジタル大辞泉 「神流川」の意味・読み・例文・類語

かんな‐がわ〔‐がは〕【神流川】

群馬県南西部を流れる川。三国山北方に源を発し、利根川支流烏川からすがわに注ぐ。長さ約77キロ。中流下久保ダムによる神流湖三波石さんばせきがある。

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日本歴史地名大系 「神流川」の解説

神流川
かんながわ

埼玉・群馬・長野の県境にまたがる三国みくに(一八一八メートル)北麓、群馬県多野たの上野うえの村に源を発する。流路延長七六・九キロの一級河川。同郡中里なかざと村・万場まんば村の中央部を貫流し、秩父郡吉田よしだ大田部おおたべ付近から下流は埼玉・群馬の県境をなす。神泉かみいずみ村付近から北東流し、神川かみかわ新宿しんしゆく地先で関東平野に出て、この付近から利根川に至る間に神流川扇状地を形成し、上里かみさとまゆずみの北方で利根川支流のからす川に合流する。神奈川・神名川・神野川とも記す。上流域の上州側は近世には山中さんちゆう領と称され、上流から中流部にかけては山がちで谷が狭い。関東平野に出ると川幅を広げて分水・伏流するため、流域では古くから水害や干害に苦しみ、江戸時代中期以降数度にわたって大規模な河川改修工事が行われた。伝承によると、日本武尊が上流で弟橘姫の遺髪を流したことから、髪流川とよばれるようになったという。一説にカンナは鉄穴の意で、砂鉄採集地の名称ともいう。

文明一八年(一四八六)八月、聖護院道興は「かみ長川」などの名所を経て「おしまの原」(現本庄市)へ向かっているが(廻国雑記)、かみ長川は神流川のこととされる。「河越記」には「加美の川」と記される。天正八年(一五八〇)一二月一日、鉢形はちがた(現寄居町)城主北条氏邦は「かんな川」を境として上野の武田方への塩荷を押えることを長谷部備前守に命じている(「北条氏邦印判状」長谷部文書)


神流川
かんながわ

上野・信濃・武蔵三国の国境にあった三国山(一八一八メートル)の北麓、上野うえの村に源を発する。東流蛇行して中里なかざと村・万場まんば町の中央部を過ぎ、万場町柏木かしわぎより下流は右岸が埼玉県、左岸が群馬県に属し東北流する。鬼石おにし町で三波さんば川を合せ、藤岡市を経てしん町の先でからす川に合流。全長七六・九キロ。烏川は東に折れて利根川に注ぐ。神野川・神奈川・神名川などと記され、文明一八年(一四八六)の「廻国雑記」には「かみ長川」とある。川名の由来は明らかでない。上流地域は近世には山中さんちゆう領と称せられ甘楽かんら郡に属し、明治一一年(一八七八)から同二九年まで南甘楽郡であった。当川に沿って十石じつこく街道が走る。

元禄一一年(一六九八)幕府が国絵図改を実施した際、古絵図山中領と武州秩父との境が落ちていたことから上武国境論争が展開された。幕府は法久ほつく(現鬼石町)から上は神流川を国境としているのに、山中領が峰切とする理由を求めてきた。

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改訂新版 世界大百科事典 「神流川」の意味・わかりやすい解説

神流川 (かんながわ)

群馬・埼玉・長野3県境の三国山の北斜面に源を発し,群馬・埼玉県境付近を北東流して埼玉県上里町,群馬県玉村町の境付近で利根川支流の烏(からす)川に注ぐ川。全長76.9km,流域面積407km2。流路の大部分関東山地中生代古生代の古い地層でおおわれる。上流部はほぼ東西方向の山中(さんちゆう)地溝帯を流れ,中流部には三波石(さんばせき)峡に見られる美しい緑色片岩が分布する。三波石峡のすぐ上流に下久保ダム(1967竣工)があり,神流湖をたたえる。ダムは堤高129m,有効貯水量1億2000万m3。発電(下久保発電所,最大出力1万5000kW),水道用水工業用水灌漑洪水調節などの多目的ダムで,水資源開発公団(現,独立行政法人・水資源機構)が管理している。江戸時代に信州の米を関東に運んだ十石峠街道はこの川の谷を通っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神流川」の意味・わかりやすい解説

神流川
かんながわ

群馬県南西部を流れる川。一級河川。関東山地の三国(みくに)山北方に源を発して北流し、やがて東流に変じ蛇行しつつ多野(たの)郡神流町を過ぎ、埼玉県境を流れて烏川(からすがわ)に合流し、利根川(とねがわ)に注ぐ。延長87.4キロメートル、流域面積407平方キロメートル。昔、上流の野栗(のぐり)集落(上野村)に疫病が流行したとき、御神体の髪を流したことからこの名が出たという伝説がある。流域は古い岩石の長瀞(ながとろ)系、秩父中・古生層および白亜系で、上流に山中(さんちゅう)地溝帯、中流に三波石峡(さんばせききょう)があり、川沿いの十石峠(じっこくとうげ)街道も難所が多かったが現在は改善された。1967年(昭和42)下久保ダム(しもくぼだむ)と神流湖ができ、東京の上水源の一つとして脚光を浴びている。

[村木定雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神流川」の意味・わかりやすい解説

神流川
かんながわ

群馬県南西端部を流れる川。群馬,長野,埼玉3県境の三国山北斜面に源を発し,初め北流し,のち東流して利根川の支流の烏川に注ぐ。全長 87km。流域の大部分は関東山地で,上流部に山中 (さんちゅう) 地溝帯があり,三波川系,御荷鉾 (みかぼ) 系の古い結晶片岩地帯を穿入蛇行する。中流部に多目的ダムの下久保ダムがあり,ダムの下流に三波石峡 (名勝・天然記念物) がある。ほぼ流路に沿って十石峠街道が通る。下流部は河岸段丘が発達。川の名には「上流の野栗集落に疫病が流行したとき,御神体の髪を流したことから出た」という伝説がある。

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