神魂神社(読み)かもすじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「神魂神社」の意味・読み・例文・類語

かもす‐じんじゃ【神魂神社】

島根県松江市大庭町にある神社。旧県社。祭神伊邪那岐命(いざなぎのみこと)伊邪那美命出雲国造(くにのみやつこ)の最初の斎場のあった地で、本殿(国宝)は現存する大社造の最古のもの。大庭大宮。

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日本歴史地名大系 「神魂神社」の解説

神魂神社
かもすじんじや

[現在地名]松江市大庭町 宮山

神納かんのう山の北西方に鎮座する。祭神は伊弉冉尊。旧県社。大庭おおばの大宮と称され、史料上は神魂大社・伊弉冊いざなみ社ともみえる。社伝によるとこの地は出雲国造の遠祖天穂日命の降臨の地といわれ、付近には古墳群も存在する。神魂社の前身は国造出雲氏の邸内斎館として成立し、のち熊野大社(現八雲村)・杵築大社(出雲大社)の遥拝場を兼ねていた。しかし「出雲国風土記」「延喜式」神名帳にその名がみえず、独立した神社となるのはこれ以後のこと。神魂社の成立は出雲氏が国衙から国造職に任命される一一世紀中頃まで下ると考えられ、成立当初から杵築大社の末社として国造出雲氏の管轄下にあった。

〔中世〕

建長七年(一二五五)二月日の二通の出雲国司庁宣(千家家文書)では「伊弉冊社」として、出雲国衙の管轄下にある出雲国惣社(現六所神社)伊弉諾いざなぎ(現真名井神社)と同様に国衙から神田・経田などを与えられており、国衙関係神社の一角をも構成していた。

神魂社の神田・経田などは国衙在庁官人が領有していたが、建長年間にはそれらすべてが杵築大社の国造出雲義孝の支配下に組込まれた。建長七年二月国衙在庁官人と思われる高貞・義元が領有していた伊弉冊社の料田七段半および灯油田一町は、訴訟の結果二人が出雲府中いずもふちゆうから追放されたためいずれも出雲義孝の領知とされている(前掲国司庁宣)。このような経緯を踏まえて、康元二年(一二五七)二月に伊弉諾・伊弉冊両社および惣社の神田・神畠は杵築大社に寄進されたものとして出雲義孝の直接的な支配下に入り、杵築大社の末社となることが承認された(「出雲国司庁宣」千家家文書など)。文保二年(一三一八)一月一四日には国造孝時(義孝の孫)から子息三郎(のちの清孝)へ「いさなき社・いさなみ社」などの神田・経田などが譲られている(「国造孝時去渡状」同文書)

南北朝期に出雲国造家が千家と北島の両家に分裂した際、杵築大社に関する運営については神事を含めて千家家が優位に立っていた(康永三年六月五日「千家孝宗・北島貞孝和与状」千家家文書)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神魂神社」の意味・わかりやすい解説

神魂神社
かもすじんじゃ

島根県松江市大庭(おおば)町に鎮座。大庭大宮ともいう。祭神は伊弉冉(いざなみ)大神、伊弉諾(いざなぎ)大神。神社名の「かもす」は「神坐(かみま)す」の転訛(てんか)。古代、当地は出雲国造(いずものくにのみやつこ)の根拠地で、その邸内に祀(まつ)られていた祭場が、国造家が杵築(きづき)(出雲市大社町)の地に移ったのちも、そのまま旧地に祀られ、独立の神社となったものと伝えるが、創建については明らかでない。旧県社。本殿は切妻造で、大社造の最古の遺構として国宝に指定されている。末社貴布禰(きふね)・稲荷(いなり)両神社の本殿は二間社流造で、国重要文化財。例大祭10月18日。

[菟田俊彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神魂神社」の意味・わかりやすい解説

神魂神社
かもすじんじゃ

島根県松江市大庭町所在の神社。創立は明らかではないが,鎌倉時代には総社として尊崇された。イザナギノミコト,イザナミノミコトを祀る。本殿は正平1 (1346) 年造立のものを天正 11 (1583) 年に再建した大社造最古の遺構で,国宝。

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事典 日本の地域遺産 「神魂神社」の解説

神魂神社

(島根県松江市大庭町377)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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デジタル大辞泉プラス 「神魂神社」の解説

神魂神社

島根県松江市にある神社。「神魂」は「かもす」と読む。1583年に建てられた本殿は国宝、末社の貴布祢稲荷両神社の本殿は国指定重要文化財。

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世界大百科事典(旧版)内の神魂神社の言及

【出雲大社】より

…大社造は神明造とともに神社建築のもっとも古い形式であって,出雲地方を中心におこなわれた。大社造のもっとも古い遺構は,1583年(天正11)造替の神魂(かもす)神社本殿(国宝,松江市大庭町)である。【宮沢 智士】。…

【神社建築】より

…この形式を大社造といい(図2),島根県にのみ分布する特異な形式である。大社造の古い遺構として1583年(天正11)の同県神魂(かもす)神社本殿がある。
[住吉造]
 大阪の住吉大社本殿の形式を住吉造という(図3)。…

【火継】より

…出雲国造(いずものくにのみやつこ)家では古来新国造の就任にあたって必ず火継神事を行った。元来,これは意宇(おう)郡の熊野大社で行われたが,中世以降,もと国造の居館近くの斎場であった神魂(かもす)神社(松江市大庭)で行われるようになった。国造家の始祖天穂日(あめのほひ)命以来とされる古式神事で,まず神伝の重宝である火燧臼と火燧杵を用いて神火を鑽(き)り出し,この浄火をもって斎食を炊(かし)ぎ,熊野大神,大国主神をはじめ国内の諸神に供し,新国造みずからも食し,初めてその職を襲ぐことができる。…

※「神魂神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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