南北朝時代の准勅撰連歌(ちょくせんれんが)集。20巻。二条良基(よしもと)が救済(きゅうせい)の協力を得て編集。文和(ぶんな)5年(1356)3月付けの序文を有するが、完成したのはその年の冬から翌年の春にかけての間のことである。所収の作品は、『日本書紀』所載の日本武尊(やまとたけるのみこと)と秉燭者(ひともせるもの)との唱和をはじめ、奈良朝、平安朝、鎌倉の各時代を経て当代に及び、種類は、付句(つけく)と発句(ほっく)のほか、少数の雑句をあわせて、総句数2190句である。作品の採り方は、平安朝および鎌倉期の短連歌はそのままの形でとり、鎖(くさり)連歌、百韻、千句、一万句などの長連歌は、そのうちの優れた部分を二句、付句として採用し、まま三句、四句続きで収めてある。作者は名の明らかな者が約450名で、30句以上の入集(にっしゅう)者は、救済、尊胤(そんいん)、良基、道誉(どうよ)、尊氏(たかうじ)、為家、善阿(ぜんな)らである。文芸性の支えをなしている当代の作品は、幽玄美を指向しながら、俳諧(はいかい)的な作品をも含み、全体的に生き生きとして躍動的な一面を有する。連歌の時代の到来を示す記念碑的な作品集である。
[木藤才蔵]
『金子金治郎著『菟玖波集の研究』(1965・風間書房)』▽『伊地知鉄男校注『日本古典文学大系39 連歌集』(1960・岩波書店)』
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准勅撰連歌撰集。20巻。二条良基(よしもと)が救済(きゅうぜい)の協力をえて編纂。1357年(延文2・正平12)成立,総句数は2190句。句数の多い作者は救済・二品法親王尊胤のほか,良基・導誉(どうよ)(佐々木高氏)・足利尊氏。書名は連歌道を「筑波の道」というところからきており,連歌の地位を高めたことでは,和歌の「古今和歌集」にも比せられる。鎌倉~南北朝初期の連歌の状況を伝える史料として貴重。「日本古典文学大系」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…すなわち道誉は茶寄合や立花,聞香を愛好し,近江の田楽(でんがく)をひいきにし,世阿弥とも接触があった。さらに連歌をよくし,道誉風の連歌が流行したといわれ,《菟玖波集》には73句が採用されて第4位を占める。同集が勅撰に準ぜられたのも,道誉の尽力による。…
※「菟玖波集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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