菟玖波集(読み)ツクバシュウ

デジタル大辞泉 「菟玖波集」の意味・読み・例文・類語

つくばしゅう〔つくばシフ〕【菟玖波集】

南北朝時代の連歌撰集。20巻。二条良基救済ぐさい共撰。正平11=延文元年(1356)成立、翌年勅撰集に準ぜられる。上古以来の連歌二千余首を収め、連歌の地位を高めた。

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精選版 日本国語大辞典 「菟玖波集」の意味・読み・例文・類語

つくばしゅうつくばシフ【菟玖波集】

  1. 最初の連歌撰集。書名は、連歌の起源とされる記紀の「新治(にいはり)筑波を過ぎて…」の問答歌に因(ちな)む。二〇巻。二条良基、救済(ぐさい)共撰。文和五年(一三五六)成立、延文二年(一三五七)勅撰集に准ぜられる。古来の連歌二千余首を収集してあり、変遷史を知ることができる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「菟玖波集」の意味・わかりやすい解説

菟玖波集
つくばしゅう

南北朝時代の准勅撰連歌(ちょくせんれんが)集。20巻。二条良基(よしもと)が救済(きゅうせい)の協力を得て編集。文和(ぶんな)5年(1356)3月付けの序文を有するが、完成したのはその年の冬から翌年の春にかけての間のことである。所収の作品は、『日本書紀』所載の日本武尊(やまとたけるのみこと)と秉燭者(ひともせるもの)との唱和をはじめ、奈良朝、平安朝鎌倉の各時代を経て当代に及び、種類は、付句(つけく)と発句(ほっく)のほか、少数の雑句をあわせて、総句数2190句である。作品の採り方は、平安朝および鎌倉期の短連歌はそのままの形でとり、鎖(くさり)連歌、百韻、千句、一万句などの長連歌は、そのうちの優れた部分を二句、付句として採用し、まま三句、四句続きで収めてある。作者は名の明らかな者が約450名で、30句以上の入集(にっしゅう)者は、救済、尊胤(そんいん)、良基、道誉(どうよ)、尊氏(たかうじ)、為家、善阿(ぜんな)らである。文芸性の支えをなしている当代の作品は、幽玄美を指向しながら、俳諧(はいかい)的な作品をも含み、全体的に生き生きとして躍動的な一面を有する。連歌の時代の到来を示す記念碑的な作品集である。

木藤才蔵

『金子金治郎著『菟玖波集の研究』(1965・風間書房)』『伊地知鉄男校注『日本古典文学大系39 連歌集』(1960・岩波書店)』

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百科事典マイペディア 「菟玖波集」の意味・わかりやすい解説

菟玖波集【つくばしゅう】

南北朝期の連歌撰集。20巻。二条良基救済(ぐさい)撰。1356年の序があり,翌年準勅撰となる。上代から当代までの付句2000余,発句約120を収める。全体の構成,組織は《古今和歌集》を模倣。代表作者は救済,梶井宮尊胤法親王,良基,佐々木道誉足利尊氏藤原為家,善阿(ぜんな)ら。作者は500名以上に及び,武家層,地下(じげ)連歌師らの活躍がみられる。後の《新撰菟玖波集》とともに連歌史上の両峰をなす。連歌の文学的地位を高め,その後の発展の重要な礎石となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「菟玖波集」の意味・わかりやすい解説

菟玖波集 (つくばしゅう)

連歌撰集。1357年(正平12・延文2)成立。20巻。書名は連歌を〈筑波の道〉というによる。《筑波集》《古筑波》とも。二条良基救済(ぐさい)の協力で古代から当代までの連歌作品を集大成したもので,構成は勅撰和歌集にならう。准勅撰となり,連歌の文学的地位を確立。収録数2100余句。作者は広い層から500名以上に及ぶが,武家層,地下(じげ)連歌師の活躍がみられる。代表的な作者はほかに導誉,尊胤など。作風は一般に巧緻にして古雅。〈ただ一めぐり秋ぞしぐるる 草にさく花見車の野に出でて〉(救済)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菟玖波集」の意味・わかりやすい解説

菟玖波集
つくばしゅう

南北朝時代の連歌集。 20巻。正平 11=文和5 (1356) 年に,関白二条良基救済 (ぐさい) の協力によって編集。佐々木道誉の推挙により正平 12=延文2 (57) 年準勅撰となり,連歌の文学的地位を確立。巻頭に真名序 (近衛道嗣) ,仮名序 (良基) がある。句数 2190句。作者は公家,武家,僧侶ほか各階層にわたり 500人にも及び,伝不明の者も含まれる。前句,付句の付合 (つけあい) だけではあるが,古代から南北朝時代までの連歌を集大成したもので,連歌史上,最も重要である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「菟玖波集」の解説

菟玖波集
つくばしゅう

准勅撰連歌撰集。20巻。二条良基(よしもと)が救済(きゅうぜい)の協力をえて編纂。1357年(延文2・正平12)成立,総句数は2190句。句数の多い作者は救済・二品法親王尊胤のほか,良基・導誉(どうよ)(佐々木高氏)・足利尊氏。書名は連歌道を「筑波の道」というところからきており,連歌の地位を高めたことでは,和歌の「古今和歌集」にも比せられる。鎌倉~南北朝初期の連歌の状況を伝える史料として貴重。「日本古典文学大系」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の菟玖波集の言及

【佐々木高氏】より

…すなわち道誉は茶寄合や立花,聞香を愛好し,近江の田楽(でんがく)をひいきにし,世阿弥とも接触があった。さらに連歌をよくし,道誉風の連歌が流行したといわれ,《菟玖波集》には73句が採用されて第4位を占める。同集が勅撰に準ぜられたのも,道誉の尽力による。…

※「菟玖波集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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