税引前利益と税金費用とを合理的に対応させるために、法人税等を適切に期間配分する会計手続。法人税等には、企業所得を課税の基礎とする法人税、住民税、事業税などが含まれる。
企業会計上の利益計算と税務会計上の課税所得計算とはその目的が異なるため、損益の範囲や認識のタイミングに違いがある。このため税効果会計を適用しない場合には、課税所得に税率を掛けた額が法人税等として計上され、法人税費用が税引前当期純利益と期間ごとに対応せず、また、将来の法人税等の支払額に対する影響(税効果)が表示されないことになる。このミスマッチを解消するために、1998年(平成10)に「税効果会計に係る会計基準」が設定された。
税引前当期純利益と課税所得の間に不一致が生じる原因には「永久差異」と「一時差異」がある。永久差異とは、受取配当金や交際費のように、永久に解消されない不一致であり、会計上と税務上の損益項目の範囲の違いによって生じる。一時差異とは、不良債権の有税償却のように、損益を認識するタイミングの違いによって生じるものであり、将来のある期間に解消される。税効果会計の対象となるのは、この一時差異である。これには、差異が解消する期の課税所得を減額する効果をもつ「将来減算一時差異」と、逆に課税所得を増額する効果をもつ「将来加算一時差異」とがある。前者は法人税等の前払いという性格をもつので、将来回収されると見込まれる税額を繰延税金資産として貸借対照表に計上する。反対に、後者は法人税等の後払いという性格をもつので、将来支払うと見込まれる税額を繰延税金負債として計上する。
[濱本道正]
『トーマツ編『税効果会計の経理入門』(2008・中央経済社)』
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(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)
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