窺・伺(読み)うかがう

精選版 日本国語大辞典 「窺・伺」の意味・読み・例文・類語

うかが・う うかがふ【窺・伺】

〘他ワ五(ハ四)〙
[一] (窺) (古くは「うかかう」)
① 様子などをひそかにさぐる。
(イ) 物のすきまなどから、そっと様子をのぞき見る。
書紀(720)崇神一〇年九月・歌謡「御間城入彦はや〈略〉一に云ふ、大き戸より 于介伽卑(ウカカヒ)て 殺さむと すらくを知らに 姫遊(ひめなそ)びすも」
(ロ) (それとなく)様子をさぐる。
源氏(1001‐14頃)夕顔「御使に人を添へ、あか月の道をうかがはせ」
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「政清先まかり向候て、ことの躰伺(ウカガヒ)候べし」
② ひそかに時機の来るのを待つ。
(イ) ある状態になるのを、そっと待つ。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「もののふのねしづまるをうかがひて」
(ロ) 機を見て何かを得ようとねらう。すきをねらう。
※書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓)「蘇我臣入鹿が〈略〉社稷(くに)(ウカカフ)(はかりこと)を挟(わいはさ)むことを憤(いく)みて」
平家(13C前)六「西寂(さいじゃく)を打ちとらんとぞうかがひける」
③ 調べ求める。調べ捜す。
※守護国界主陀羅尼経巻八平安初期点(900頃)「其の是非を窺(ウカカヒ)て、還りて我が衆に帰く」
④ 物事の一端を知る。いちおう知っておく。また、推定する。察知する。
徒然草(1331頃)一二二「弓射(ゆみい)・馬に乗ること、六芸に出せり。必ずこれをうかがふべし」
[二] (伺) (一)から転じて、貴人、目上の人などに対する謙譲語として使われるようになったもの。
① 「問う」「聞く」の謙譲語で、その動作の相手を敬う。
(イ) 神仏や目上の人などに指図、意見などを仰ぐ。うかがいをたてる。
※平家(13C前)五「院宣うかがはうに一日が逗留(とうりう)ぞあらんずる」
(ロ) 目上の人に対して質問する。お尋ねする。とくに健康や安否などを尋ねる。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「キゲンヲ vcagǒ(ウカガウ)
(ハ) 目上の人の話や歌などを聞く。聞かせていただく。
※人情本・花筐(1841)三「お嬢さん〈略〉は、お琴がとんだお上手ださうでございますが、竟(つひ)に私は伺(ウカガ)ひません」
② 「訪問する」の謙譲語で、相手をうやまっていう。目上の人をお訪ねする。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙一六「お帰京と聞たから、早速伺(ウカガ)はうと思ったが」
③ 相手にとっていやなものを与える。お見舞いする。
曾我物語(南北朝頃)一〇「君を一太刀うかがひ奉て、後生のうったへに仕るべきか」
④ (「ごきげんをうかがう」の意から転じて) 寄席などで客に話をする。さらに転じて、一般に、あることについて大勢に説明する。講義する。「一席伺う」の形で用いることが多い。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「是れからが肝腎要(かなめ)、回を改めて伺ひませう」

うかがい うかがひ【窺・伺】

〘名〙 (動詞「うかがう(窺)」の連用形の名詞化。古くは「うかかい」)
[一] (窺)
① そっとのぞき見ること。様子を見ること。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「人のうかがひなどするに、尋ね出でられて」
敵陣の様子をひそかに探ること。また、その人。まわしもの。間者(かんじゃ)間諜(かんちょう)。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
[二] (伺)
① 神仏や目上の人などに指図・意見を仰ぐこと。特に、人民や下級の役人・官庁から、幕府・政府や上級の官庁に指示を仰ぐこと。
※御触書天明集成‐二四・天明六年(1786)九月「大目付・御目付え 諸願諸伺等」
② 「問うこと」「聞くこと」「訪問すること」などの謙譲語で、相手を敬って用いる。
※浮世草子・新色五巻書(1698)一「さじかげんのうかがゐ、薬とりに通い」
③ 機嫌伺いの客。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「うかがいに下女めしびつをひっかかへ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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