デジタル大辞泉 「スーパーカミオカンデ」の意味・読み・例文・類語
スーパー‐カミオカンデ(Super KAMIOKANDE)
[補説]平成10年(1998)、梶田隆章がニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の観測に成功。平成27年(2015)にノーベル物理学賞を受賞した。令和2年(2020)、ニュートリノに加えて中性子による信号を捉えるため、純水にガドリニウムを添加して観測が行われている。
岐阜県飛騨市の地下約千メートルの神岡鉱山跡にあるニュートリノ観測装置。高さ41メートル、直径39メートルの円筒形のタンクに5万トンの純水をたたえ、ニュートリノがごくまれに水にぶつかって発生する光を約1万1千本ある直径50センチの光センサーで捉える。
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東京大学宇宙線研究所が岐阜県吉城(よしき)郡神岡町(現、飛騨(ひだ)市神岡町)に建設した、素粒子観測装置。宇宙線研究所は、1983年(昭和58)神岡地下観測所(現、神岡宇宙素粒子研究施設)を設立、神岡鉱山茂住(もずみ)坑の地下1000メートルに設置した実験装置をカミオカンデ(KAMIOKA Nucleon Decay Experiment)と名づけた。このカミオカンデを前身とし、より大型化した観測装置であるスーパーカミオカンデ(Super-KAMIOKA NucleonDecay ExperimentまたはSuper-KAMIOKA Neutrino Detection Experiment)は1995年(平成7)に完成、1996年4月より観測を開始し、太陽ニュートリノについて興味あるデータを蓄積しつつある。カミオカンデを考案、建設へと導いた物理学者小柴昌俊(こしばまさとし)は2002年その功績が評価され、ノーベル物理学賞を受賞した。
スーパーカミオカンデは5万トンの水を入れた高さ約40メートルの水槽と、約1万本の光電子増倍管からなる。宇宙線などの影響を避けるため地下1000メートルに設置、宇宙からくるニュートリノをとらえる。ニュートリノが水中の電子や陽子とぶつかったときに出る光を調べれば、そのニュートリノが由来する天体の性質を推測することができる。前身のカミオカンデは同型で10分の1の規模の実験装置で、1987年大マゼラン星雲で発生した超新星爆発によるニュートリノを検出している。大統一理論が予言する陽子の崩壊を検証することも大きなテーマである。また、太陽から飛んでくるニュートリノが振動しているという可能性が観測され話題を集めた。ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミュー・ニュートリノ、タウ・ニュートリノの3種類があるが、太陽の中心では、電子ニュートリノが生成される。これは70万キロメートルで太陽表面に達し、1億5000万キロメートル飛行して地球に達する。もしニュートリノが質量をもっていれば、電子ニュートリノが密度の高い太陽の物質中を通るときミュー・ニュートリノに変わることが理論的に予想され、これをニュートリノ振動とよぶ。スーパーカミオカンデの実験では、電子ニュートリノの観測例は理論値の37%にすぎないことを示しており、振動がおきている可能性が高いことを示唆している。また、大気上空でできるミュー・ニュートリノが飛行中にタウ・ニュートリノに変わるというニュートリノ振動がおこっていることが見出され、太陽ニュートリノの振動とともに、ニュートリノが質量をもつことがはっきりしてきた。ニュートリノの質量はあったとしても非常に小さく、振動の効果も微小である。そこで、ニュートリノ振動を精密に測定し、その質量を決定しようという「長基線ニュートリノ振動実験」が、筑波研究学園都市にある高エネルギー加速器研究機構とスーパーカミオカンデで進められている。すなわち、まず素性のわかったニュートリノを筑波の加速器でつくり、それをスーパーカミオカンデまで飛行させ、その間にニュートリノの性質が変わるかどうかを確実に検証しようというわけである。実験ではまず、加速器からの陽子をアルミニウムの標的に当てる。するとパイ中間子が生まれ、それが崩壊してミュー・ニュートリノが発生する。そこで高エネルギー加速器研究機構に設置した測定器を通してその数を測った後、スーパーカミオカンデに打ち込んで、どれくらい減少したかを測定する。筑波を出たニュートリノは地中を直進して、1000分の1秒後には250キロメートル先の神岡に到着する。1999年6月19日にはこの実験による初めてのニュートリノがスーパーカミオカンデで観測された。
[広瀬立成]
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水チェレンコフ検出器の一つ.岐阜県吉城郡神岡町神岡鉱山の地下1000 m の坑道中に設置されている.東京大学宇宙線研究所に所属する.Super-KamiokandeはSuper-Kamioka Nucleon Decay ExperimentまたはNeutrino Detection Experimentの頭文字をとった名称.超新星ニュートリノ,太陽ニュートリノ,大気ニュートリノの観測研究と大統一理論の検証を目的とする.1990年建設開始,1995年完成,1996年4月から観測開始.5万t の超純水を入れたタンクと約11000本の口径50 cm光電子増倍管からなり,水中に発生するチェレンコフ光を検出して,飛来したニュートリノの数と進行方向や,水中の陽子崩壊を観測する.ニュートリノが質量をもつこと,陽子が初期の理論的予想より安定であることを示す実験結果を得ている.カミオカンデは,スーパーカミオカンデの前身で,3000 t の水タンクと1000本の光電子増倍管から構成されており,1987年2月にマゼラン星雲中の超新星からのニュートリノを観測して一躍有名になった.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)
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