紫衣(読み)しい

精選版 日本国語大辞典 「紫衣」の意味・読み・例文・類語

し‐い【紫衣】

〘名〙
紫色の衣。天子諸侯が着たもの。しえ。
虞美人草(1907)〈夏目漱石一一「紫衣(シイ)と云ひ、黄袍(くゎうはう)と云ひ、青衿(せいきん)と云ふ」 〔春秋左伝‐哀公一七年〕
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉十二月暦「紫衣(シイ)金襴袈裟しい和尚さんが」

し‐え【紫衣】

〘名〙 (「え」は「衣」の呉音)
① 紫色の袈裟(けさ)および法衣総称古く勅許によって着用を許されたもので、わが国では紫袈裟は玄昉に始まり、紫法衣(紫袍ともいう)は青蓮院行玄に始まるという。紫甲。しい。
田氏家集(892頃)下・傷左尚書「人事嫌猜応恨、紫衣金印九泉春」 〔釈氏要覧‐上〕
② =しい(紫衣)①〔日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「紫衣」の意味・読み・例文・類語

し‐え【紫衣】

紫色の袈裟けさおよび法衣の総称。古くは勅許によって着用した。紫甲。しい。

し‐い【紫衣】

しえ(紫衣)

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普及版 字通 「紫衣」の読み・字形・画数・意味

【紫衣】しい

紫色の衣。高貴の人、道・僧の徒が用いる。唐・谷〔狄右丞に寄献す〕詩 を偸(ぬす)みて、杜陵に向ふ を愛するも、紫衣のを愛せず

字通「紫」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紫衣」の意味・わかりやすい解説

紫衣
しえ

紫色の袈裟(けさ)や法衣(ほうえ)をいう。仏の制定したものでなく、朝廷が定めたもの。中国唐代の則天武后(そくてんぶこう)が法朗(ほうろう)ら9人に下賜したのを最初にする。袈裟は青、黒、木蘭(もくらん)の壊色(えじき)を如法(にょほう)色とするが、中国では、僧の功勲を服色に取り入れて制定した。日本でも、その制度が取り入れられ、栄西(えいさい)や道元(どうげん)も天皇より賜っている。

[川口高風]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紫衣」の意味・わかりやすい解説

紫衣
しえ

紫色の袈裟 (けさ) ,法衣の総称。修行僧の用いる衣の色には紫色は含まれていなかったが,唐代に朝廷から下賜された衣には紫色のものがあった。日本では玄 昉が霊亀3 (717) 年入唐して,唐朝より紫袈裟を賜わり,天平7 (735) 年帰朝後,やはり天皇より紫袈裟を賜わったのが最初であるとされる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「紫衣」の解説

紫衣
しえ

紫色の袈裟 (けさ)
「しい」とも読む。勅許により高位の僧尼に与えられた法衣。

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世界大百科事典(旧版)内の紫衣の言及

【袈裟】より

…普通には鬱多羅僧を七条,僧伽梨を九条袈裟と称しているが,平(ひら)袈裟,衲(のう)袈裟,紫甲(しこう)袈裟,遠山(とおやま)袈裟などの種別があり,僧階によりその着用が規制されている。例えば唐代では紫衣(しえ)と称し,紫色の袈裟と法衣は天子下賜のものとして重視された。735年(天平7)に帰国した僧玄昉は,入唐留学中に玄宗皇帝より三品に准ずるとして紫袈裟を賜ったが,帰国後に聖武天皇からも,紫袈裟をおくられ,僧正に任ぜられた。…

※「紫衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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