(読み)ツムギ

デジタル大辞泉 「紬」の意味・読み・例文・類語

つむぎ【×紬】

紬糸で織った平織り絹織物大島紬結城ゆうきなど。紬織り。

ちゅう【紬】[漢字項目]

人名用漢字] [音]チュウ(チウ)(漢) [訓]つむぎ
繭から糸を引き出す。物事の糸口を引き出す。「紬繹ちゅうえき紬紡糸

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精選版 日本国語大辞典 「紬」の意味・読み・例文・類語

つむぎ【紬】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「つむぐ(紡)」の連用形名詞化 ) 紬糸または玉糸で織った平織絹布。絹物だがそれほど高級品ではなく、丈夫なので日常の衣料に用いられた。紬織。
    1. [初出の実例]「忽ちに二りの童子を見る。儀容秀麗しく、綺の衣紈(ツムギ)の袴」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))

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普及版 字通 「紬」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 11画

[字音] チュウ(チウ)
[字訓] つむぎ・つむぐ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は由(ゆう)。由に抽・宙(ちゆう)の声がある。〔説文〕十三上に「大絲(だいしそう)なり」、〔急就、注〕に「(そけん)のを抽引して、紡(つむ)ぎて之れをる」とあり、つむぎ織りをいう。糸粗く、厚くて強い布である。

[訓義]
1. つむぎ、つむぎおり。
2. 糸をつむぐ、つづる、ひく、あつめる。
3. いとぐち。
4. 抽と通用する。

[古辞書の訓]
名義抄〕紬 ツムギ・オホイト・ツグ・ヌキツ

[熟語]
紬引・紬繹・紬次・紬緝・紬績・紬段紬緞・紬被紬布・紬綿
[下接語]
紬・黄紬・山紬・白紬・碧紬

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紬」の意味・わかりやすい解説


つむぎ

紬糸で織った絹織物。紬糸は真綿を引き出して細く糸にしたものであるが、現在では手紡することが非常に高価につくため、玉糸(一つの繭の中に二つの蛹(さなぎ)が入った玉繭からとった節のある絹糸)や、木綿・毛・化合繊の節糸を使い、外観上ざっくりとした紬の風合いに似せたものも紬とよんでいる。

 紬は、蚕糸生産の発展過程のうち最初に現れた技法と一般に考えられているが、実物資料による限りでは、このような織物は発見されていない。また古代に生産された絁(あしぎぬ)に比定することも多くの文献にみえているが、正倉院蔵の資料によってもこのことは誤りであることがわかる。むしろ、蚕種生産あるいは生糸生産の過程でできる出殻繭(でがらまゆ)・屑(くず)繭などの利用方法として、農家の自家生産から生まれたものとみるのが妥当であろう。これが地方の特産品となったのは近世以後であり、1627年(寛永4)開板の『毛吹草(けふきぐさ)』によると、伊勢(いせ)紬、甲斐(かい)紬、八丈島紬、横山紬島、結城(ゆうき)紬、中山紬島、仙台紬、丹後(たんご)紬がみえ、各地に産物として現れてくる。そして近世後期には庶民の間に利用が許される絹織物としてもてはやされた。現在でも生産されているものに、結城紬(茨城県結城市)、十日町(とおかまち)紬(新潟県十日町市)、塩沢(しおざわ)紬(新潟県南魚沼(みなみうおぬま)市)、大島紬(鹿児島県)、長井(ながい)紬(山形県長井市)、石下(いしげ)紬(茨城県常総(じょうそう)市)、館林(たてばやし)紬(群馬県館林市)などがある。

 製造方法は、代表的な結城紬の場合で示すと、真綿を「つくし」とよばれる道具に絡ませておき、これを両手の親指と人差し指によって左右に練りをつけながら引き伸ばし、紡ぐものである。真綿は紬用として特別につくられている。1日の紡績量は、8時間労働としても5~6匁(約19~23グラム)にすぎないから、一反分を紡ぐためには実に多くの日数を要するわけである。紬に絹紡紬糸(ちゅうし)を使うこともあるが、これは絹紡糸をつくるとき、精綿工程でできる二等綿、または梳綿(そめん)工程で落とされる屑(くず)繊維を用いて紡績した糸で、紬糸とはまったく製造方法が異なる。

 白紬、紬縞(じま)、紬絣(がすり)の種類があるが、地質、染色堅牢(けんろう)度が優れ、雅趣に富んだ織物であることから、現在では高級着尺地としての位置を占めている。ただ和服地としては、正装の位置を占めることはない。

[角山幸洋]


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改訂新版 世界大百科事典 「紬」の意味・わかりやすい解説

紬 (つむぎ)

絹織物の一種で,元来は紬糸を用いた織物のこと。組織は平織とし,色無地や縞,絣物を主とするが,後染用の白生地もある。外観は一般的な絹織物に比べて平滑さや,光沢に欠け,紬糸の糸質より生じる独得のざっくりとした風合いがある。紬糸とは,真綿もしくはくず繭から引き出して紡いだ糸をいう。引出し紡といって,〈つくし〉という枠にかけた真綿から指先で手前へ糸を引き出してとる結城紬(ゆうきつむぎ)の糸とりが,これの代表的なものであるが,最近はこの手紬糸に対し,機械紡の行われている産地が多くなっている。また今日では必ずしも紬糸によらない織物でも,できあがった織りの風合いが紬らしい粗い感じをもっているものを〈紬〉と称していることもある。すなわち玉繭(たままゆ)(一つの繭を2匹以上の蚕がつくった繭)からとった玉糸や山繭糸(ヤママユ)を用いて織ったものを〈山繭紬〉などと称し,反対にたとえば大島紬のように,現在の品はまったく紬の風合いを失ってしまったものでも,かつての名称どおり〈紬〉と称しているものもある。したがって〈紬〉と通称される織物も,材質的にみた場合とできあがった外観を主としていった場合とは,その間に多少のくい違いがある。これは明治以降の需要の増加と商品としての価格の点から,しだいに玉糸や紡績絹糸などが併用され,混織された結果であろう。

 絹を材料としながら,一見木綿のように見え,軽くて着ごこちもよく,長もちする紬は,江戸時代後期には特に町人階級に好んで用いられたが,明治後期になると,その控えめな渋味のある風趣が好まれてしだいに高級化し,今日の高級絹織物としての〈紬〉が形成された。その間に糸質の変遷や高級化に伴う加工技術の精巧化などに時代の好みを反映して,一般に昔の太織のような厚手のものから,しだいに糸織風の薄手のものに変わってきている。
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百科事典マイペディア 「紬」の意味・わかりやすい解説

紬【つむぎ】

絹織物の一種。真綿やくず繭から手紡ぎした糸を用い手織機によって平織にしたもの。織糸に節があるので野趣に富み丈夫。多くは植物染料を用い縞(しま),絣(かすり)の織模様とするが,白紬に染色することもある。産地によって特色があり結城(ゆうき)紬大島紬,伊豆八丈島の黄八丈,山形県の長井紬(米沢紬),長野県の上田紬,沖縄の久米島紬,石川県の白山紬などが有名。最近は練り絹糸を用いて節糸にしたり,またウールや合繊などで紬風に機械織したものなどもある。
→関連項目絹織物シャンタン

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日本文化いろは事典 「紬」の解説

[女性用] 紬とは蚕〔かいこ〕の繭〔まゆ〕から糸を取り出し、より(ひねり)をかけて丈夫な糸に仕上げて織った絹織物のことです。紬は織物の中で最も渋く、深い味わ いを持つ着物で、着物通の人が好む織物と言われています。世界一緻密な織物とも言われ、最近では普段着としての着物からおしゃれ着へと変化を遂げつつあり ます。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【大島紬】より

…生地はしなやかで軽く,しわになりにくい利点をもつ。奄美における紬織物の起源は明らかでないが,1720年(享保5)の《大島政典録》に薩摩藩が島民に紬着用禁止令を出したことがみえることから,これ以前に紬が生産されていたことはまちがいないようである。そのころの大島紬は手引きの真綿紬糸を用いて,地機(じばた)で製織されたきわめて素朴なものであったと思われる。…

【紬糸紡績】より

…絹の真綿を手で紡いで糸にすることをいう。こうして作った紬糸(つむぎいと)を経(たて)・緯(よこ)に使って,無地,絣(かすり)模様,縞(しま)に織ったのが紬である。茨城県結城(ゆうき)市および栃木県小山市をそれぞれ中心とする地域で生産される結城紬は,経糸に180~210デニール,緯糸に110~120デニールくらいの太さの紬糸を使い,縞または絣模様に織った平織の着尺地である。…

※「紬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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