平安後期から中世にかけて,院・国衙などの下部機関に置かれた所(ところ)の一つ。〈さいくところ〉ともいう。調度・小道具その他の細工物を製作・修理することを職掌とした。その活動の一端を示せば1246年(寛元4)後嵯峨院の御車を新調,48年(宝治2)に宗尊親王のために文机を調進,98年(永仁6)伏見院御幸に際して狩胡籙(かりやなぐい)・弓・剣等を調進,などの記事をあげることができる。また大嘗(だいじよう)祭の際に臨時に設置されることもあった。さらに《新猿楽記》に記載があり,地方の国衙の下部機構としても置かれていたらしい。《吾妻鏡》によれば鎌倉幕府にも置かれていたことがわかる。その活動が史料上にあらわれることは少ないが,道々細工と呼ばれる種々の専門工人を組織していたらしい。別当や預(あずかり)が置かれ,所の管理に当たった。所の経済基盤としては細工所保の存在がみとめられる。なお,江戸幕府も若年寄の下に細工所を置いた。
→細工
執筆者:玉井 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
領主が高級手工業製品の確保のために、多様な部門の工匠を把握して経営する工房。律令(りつりょう)国家の官営工房が解体したあと、平安中期ごろから現れ始めた。有力貴族が私的に保有する院細工所・摂関家細工所などの家産工房と、国衙(こくが)に結集する在地領主が共有する国(くに)細工所に大別される。国細工所は鎌倉中期ごろに姿を消すが、家産工房としての細工所は、鎌倉幕府などにも置かれ、近世の大名家の細工所まで継続する。
[浅香年木]
…別当や預(あずかり)が置かれ,所の管理に当たった。所の経済基盤としては細工所保の存在がみとめられる。なお,江戸幕府も若年寄の下に細工所を置いた。…
… 院司の構成にはかなり変遷があるが,《西宮記》《拾芥抄》《名目抄》その他の記録により,平安・鎌倉時代の院司を概括すると,二十数種に及ぶ。それを性格・機能のうえから分類すると,(1)院中の諸事を統轄処理するもの=別当・判官代・主典代,(2)上皇の側近に侍し身辺の雑事に奉仕するもの=殿上人・蔵人・非蔵人,(3)各種の職務を分掌するもの=別納(べちのう)所・主殿(とのも)所・掃部(かもん)所・薬殿・仕所・召次所・御服所・細工所・御厨子(みずし)所・進物所・御厩・文殿(ふどの)など,(4)上皇の身辺および御所の警固に当たるもの=御随身所・武者所・北面・西面などに整理できる。まず(1)は院司の中核で,(1),もしくは(1)(2)に限って院司と称した例も多い。…
…1010年(寛弘7)神宝を作成した道々細工(〈九条家本延喜式紙背文書〉)も同じ事例で,鎌倉初期には〈殿下御細工〉といわれた鋳物師(いもじ)もみられ(〈民経記紙背文書〉),道々細工は各種手工業者の総称となった。これらの細工は朝廷では作物所,蔵人所に統轄され,行事所にも細工所が設けられたが,院や摂関家,さらに鎌倉幕府なども,それぞれ常置の細工所を持ち,道々細工を統轄した。これらの細工たちは特定の権門に専属せず,いくつかの権門に兼ね属する場合が多かった。…
※「細工所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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