経師屋(読み)きょうじや

精選版 日本国語大辞典 「経師屋」の意味・読み・例文・類語

きょうじ‐や キャウジ‥【経師屋】

〘名〙
① =きょうじ(経師)③〔日葡辞書(1603‐04)〕
狂歌徳和歌後万載集(1785)一「経師屋春雨〈略〉やくそくの日よりも紙をはるさめへらをつかひてのばす経師屋」
② (「貼る」に「張る」をかけた語) 女にいいより、手に入れようとねらう者。狼連。
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉「経師屋(キャウジヤ)連だの或は狼連などと云ふ」

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デジタル大辞泉 「経師屋」の意味・読み・例文・類語

きょうじ‐や〔キヤウジ‐〕【経師屋】

経師1」に同じ。
《「貼る」に、つけねらう意の「張る」をかけて》女を手に入れようとねらう人をいう俗語

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改訂新版 世界大百科事典 「経師屋」の意味・わかりやすい解説

経師屋 (きょうじや)

巻物掛物,和本,屛風ふすまなどの表装をする職人経師は,古代には写経を業とする人をいった。写経司写経所)などに属する場合もあり,民間で活動する者もあった。写経司には,ほかに校生,装潢(そうこう)などの専門技術者がいた。装潢とは表装のことである。古代末期になって,個人による写経がさかんになると,経師本来の仕事はなくなり,写経のあとの表装の仕事に従うようになったと思われる。こうして中世には,経巻などの巻子本(かんすぼん)の表装を業とする専門職人になっていた。一方,中世中期のころには表褙師(ひようほえし)(表補絵師とも)と呼ばれる掛物の表具職人が成立し,やがてこれが表具師表具屋と呼ばれるようになる。こうして経師屋は巻物,表具師は掛物と,同じ軸物ながら縦のものと横のものとで仕事が分かれていた。近世初期になると,この境界領域が崩れたようで,《雍州(ようしゆう)府志》には〈表具と巻物とは横竪(よこたて)の差しかないが,表具師の巻物は使いものにならず,経師屋の表具もまたよくない〉とみえる。また,もとは唐紙師の業であった屛風,ふすまなどの仕事も,経師屋,表具師のいずれもが行うようになり,経師屋と表具師との区別はまったく消滅した。表具・表装に用いる道具には,各種のはけ,定規,断ちもの包丁,小刀,仮張り台などがあり,のり(糊)は古代では米ののりを用いたが,中世からは生麩(しようふ)のりが使われるようになった。なお,《おさん茂兵衛》などで知られる大経師は,もと朝廷の御用を勤務めた京都の経師仲間の長で,毎年奈良の幸徳,賀茂両家から朝廷に進奉される新暦を受けて〈大経師暦〉を発行する特権をもっていた。
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百科事典マイペディア 「経師屋」の意味・わかりやすい解説

経師屋【きょうじや】

表装をする職人。経師は元来経巻の書写や表装を業とするものをいったが,平安末期からの個人による写経の流行や鎌倉期以降の版経の盛行につれ表装のみの専業となった。江戸期には市井の職人としての経師屋が生まれ,掛軸の表装や和本の装丁,ふすま・障子の張替などを行った。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経師屋」の意味・わかりやすい解説

経師屋
きょうじや

経師

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