給主（読み）キュウシュ

デジタル大辞泉

きゅう‐しゅ〔キフ‐〕【給主】

⇒給人きゅうにん1・2

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

きゅう‐しゅキフ‥【給主】

1. 〘 名詞 〙 中世、所領の管理を任され、領主に対して年貢課役などを納入する義務を負った者。預所(あずかりしょ)を指すことが多い。〔色葉字類抄（1177‐81）〕
   1. [初出の実例]「所領一所に四五人の給主(キウしゅ)附いて」(出典：太平記（１４Ｃ後）一二)

出典　精選版 日本国語大辞典

改訂新版　世界大百科事典

給主 (きゅうしゅ)

中世，荘園・国衙領において，上級領主から所領の管理（所務）をまかされ収益権を与えられるとともに，年貢課役を上納する責任を負った者。〈給主〉の呼称が出現したのは荘園制の形成される12世紀初めである。伊勢神宮領では，神領田の地主として作人から官物（かんもつ）を徴収し神宮に上納する者を給主と称した。また御厨（みくりや），御薗（みその）にも給主がおかれ神宮の禰宜（ねぎ）層が補任された。その職権は，荘官の補任，年貢納入，紛争の際の訴訟等を担当するもので，一般荘園での領家，預所にあたっている。鎌倉時代，荘園制下で給主の呼称はひろく用いられた。東国の鹿島神宮領で預所職に任ぜられた者が給主とよばれ，また武家の所領でも地頭代を給主と称する例がみられる。北条氏得宗家領（大部分は地頭職）では多くの場合，現地支配機関として政所が設置され，その下には村々に地頭代として所務を行う給主がおかれた。豊後国大野荘でも，志賀村北方地頭の詫摩（たくま）氏が，村内の名（みよう）に給主を任じて課役徴収を命じている。

　鎌倉後期になると，下地中分などによって本家－領家－預所－地頭・下司といった重層的な荘園支配秩序がくずれ，領家，地頭らはたがいに荘園を分割し一円化した所領の支配を行うようになった。このような新たな段階に至り，それまでの職（しき）にかわって，一円領の領主（領家ないし地頭）の下で在地の支配にあたる〈給主職〉が広く登場してくる。東寺領荘園を例にみると，領主東寺（領家職ないし地頭職）－給主（所務職ともいう）－給主代（所務代官）といった新たな支配体制がとられている。そして南北朝・室町時代には，荘園支配の実権は給主ないし給主代の手にうつって，在地の武士や借上（かしあげ）・土倉が請負代官として起用されることが多くなり，さらに荘園制の崩壊とともに給主職も姿を消していった。
執筆者：斉藤 利男

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

世界大百科事典（旧版）内の給主の言及

【給人】より

…(1)9世紀後半から律令制度にもとづく食封制度の衰退にともない年給をうける人々が出てきて，その年給をうける人のことを給主あるいは給人と呼んだ。この制度はしだいに形骸化しながら江戸時代初期までつづいた。…

※「給主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」