給人(読み)キュウニン

デジタル大辞泉 「給人」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐にん〔キフ‐〕【給人】

古代、年給を賜った人。給主。
中世、幕府・主家から恩給としての所領を与えられた者。また、領主の命を受けて領地を支配した者。給主。
江戸時代、幕府・大名から知行地あるいはその格式を与えられた旗本・家臣。

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精選版 日本国語大辞典 「給人」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐にんキフ‥【給人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 年給を賜わる人。
    1. [初出の実例]「直物〈略〉去年給若当年給等不任人之官姓名只書給人官姓許也」(出典:江次第鈔(1480頃か)四)
  3. 中世、主家から恩給、扶持を受けて家臣となっている者。また、領主の命を受けて領地を支配する者。
    1. [初出の実例]「止給人景清妨」(出典:吾妻鏡‐元暦二年(1185)三月二日)
  4. 給分をうける人。
    1. [初出の実例]「東御方以下給人方可支配之由仰了」(出典:大乗院寺社雑事記‐文正元年(1466)三月八日)
  5. 江戸時代、武家で扶持米を与えて、抱えて置く平侍(ひらざむらい)
    1. [初出の実例]「御家人、給人、商人、見物、行かふ人にまぎれても」(出典:浄瑠璃・百日曾我(1700頃)二)

きゅう‐じんキフ‥【給人】

  1. 〘 名詞 〙きゅうにん(給人)

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改訂新版 世界大百科事典 「給人」の意味・わかりやすい解説

給人 (きゅうにん)

(1)9世紀後半から律令制度にもとづく食封制度の衰退にともない年給をうける人々が出てきて,その年給をうける人のことを給主あるいは給人と呼んだ。この制度はしだいに形骸化しながら江戸時代初期までつづいた。(2)一方12世紀ごろから国衙領や荘園関係の史料に官使給田,下司給,大工給,所司給などと呼ばれる給田を授けられ,そこからの税収の一部を受け,その反対給付として一定の奉仕,つまりおのおのの職務の遂行を要求される人々が見える。これらの人々は給主と呼ばれており,貴族社会において給人が給主と呼ばれていたことから考えると史料上には見えないが,彼らも給人と呼ばれた可能性がある。鎌倉時代に入ると荘園の下司職などの後身である地頭職などの所職を鎌倉殿より御恩として授かった人々を給人と呼び,その(しき)にともなう権利・義務の行使地を給地と呼んだ。そしてこの所職を授けられたことに対して給人は,鎌倉殿への軍役その他の奉仕を行う義務を負っており,前代の国衙領,荘園における給主たちと本質的な違いはない。室町時代に入り職が平準化してくると,室町幕府直轄領の代官職を給与された奉公衆も給人と呼ばれ,各地の大名に給地を授けられた人々も給人と呼ばれるようになる。さらに戦国時代にいたると名主職,下作職などまで各地の戦国大名によって給地化される事例が出現し,また戦国大名の検地によって職支配体制が解体された場合は,南北朝期にその端緒が見えるが,何貫文の地,何石の地という,職でなく得分(とくぶん)のみを問題とした給与が一般化する。豊臣秀吉のもとでの太閤検地によってこの検地体制は全国ほぼ一律に普及し,以後大名から石高にもとづく知行地を授けられた人を給人と呼ぶようになる。しかしこの時期までは,土地にかかる税の一部または全部を取得する権利を授けられた人という点で,平安時代からの概念はつながっている。
執筆者: 江戸時代,大名の家臣のうち土地で知行を給与されたいわゆる地方知行(じかたちぎよう)の受給者をいう。地頭とも称する。主として上中級の藩士が給人となった。給人は彼の知行所の土地・領民を直接支配し,みずから貢租を収取したが,その知行権は行政・司法権ともに制限付きのものであり,時代の下降につれて漸減し,蔵米取となる傾向にあった。幕府の旗本・御家人の地方知行の受給者も地頭と称した。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「給人」の意味・わかりやすい解説

給人
きゅうにん

(1) 古代では,中央政府から年給を賜わった人をいう。年給とは年料給分の略で,律令制の変質,崩壊期に現れた一種の俸禄であった。 (2) 中世では,一般に幕府や荘園領主から所領の恩給を受けた者をいった。室町時代には,この給人を地頭とも称し,また守護から半済 (はんぜい) 分を給与された者を半済給人と呼んだ。戦国時代には,大名から恩給地を与えられて家臣となったものをいった。 (3) 江戸時代には,大名から実際に知行地を給与された上級家臣をさし,その知行地を給地といい,支配下の農民を給地百姓といった。江戸時代初期には,このような給人が知行地の農民を直接支配し,年貢額の決定,夫役の徴収,農民の処分などに関し強い権限をもっていた場合が多く,地方によっては給人が知行地に居住し,みずから知行地の一部を手作地として経営する例もあった。大名は自己の領内支配を確立するため,このような給人の恣意的な農民支配を制限し,その支配権を次第に削減していった。その際よくとられた方法は給地を与える地方知行から,蔵米を与える蔵米知行への改変であった。給地を与える制度を残す場合でも,その絶対量を減少させたり支配権にもいろいろな制限を付したり,また特定村落の指定をしないで,年貢量のみを指定したりした。このような改革は諸藩の初期藩政改革の一つの重要な問題点であった。なお,旗本の受けた知行地は,知行所と呼び給所とは呼ばなかった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「給人」の意味・わかりやすい解説

給人
きゅうにん

平安時代には年給を賜った人。鎌倉時代以降、幕府や荘園(しょうえん)領主から所領の恩給や給田を受けた人。戦国時代から江戸時代には、旗本や陪臣のうち俸禄(ほうろく)として知行地(ちぎょうち)を与えられた人をいい、地頭(じとう)、知行取り、地方(じかた)取りともいった。戦国より江戸前期の給人は、知行地および農民を直接支配し、年貢徴収、農民使役、処罰権を保持し、ときには知行地に屋敷を構えて手作り経営を行うものもいた。この知行形態を地方知行という。給人の支配権の強さは大名の領内支配権を弱めるため、藩政の確立を目ざす大名の多くは、一村を数名の給人に分割して給付したり(相給(あいきゅう)という)、給人の支配権をしだいに剥奪(はくだつ)して大名の支配権を強化し、さらに知行地を召し上げて家臣には俸禄として蔵米(くらまい)を与えるという蔵米知行に移行させた。ただし東北・九州などの外様(とざま)の大藩では地方知行が幕末まで残り、幕府でも旗本のほとんどは地方知行であった。

[根岸茂夫]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「給人」の解説

給人
きゅうにん

一般化していえば経済的な恩典を支給された人。平安時代以降,公武社会で長く用いられた。給主ともいう。公家社会では,年給を賜って,叙位・任官者を推挙し,それにともなう経済的利益をえた人のこと。荘園・公領では,公文(くもん)・下司(げし)・地頭など,職務に対する経済的保障として給田を支給された人のこと。将軍や大名から給地(知行地)を支給された武士も給人という。戦国期は,給人の給地に対する支配権が強かった。江戸時代の武士は,将軍・藩主から知行地をあてがわれる場合と,禄米を支給される場合があり,知行地を給与された武士を給人とよび,地頭ともいった。上・中級武士に多かったが,しだいに禄米支給に切り替えられた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「給人」の解説

給人
きゅうにん

③戦国〜江戸時代,大名の家臣のうち支配地(知行地)を有した者
①古代,年給をうけた人。
②鎌倉時代,将軍から所領の恩給をうけた人。
領主権の強化をめざす大名は給人の知行権の制限につとめた。

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世界大百科事典(旧版)内の給人の言及

【石高制】より

…取米高を基準に掛り物が課せられる地域では草高は名目化されるが,通常は領内で収穫される米の総量を意味し,年貢賦課の基準となる石高である。 概(平)高(ならしだか)給人知行地の実収高を基準に,それが一定の免率(たとえば4割)で徴収されたと仮定して逆算された名目上の石高。知行高が同じならば実収も等しく公平が期せられるという理由で,近世中期にいくつかの藩で実施されたが,真のねらいは,従来の高と概高との差額を藩庫に入れ,財政の立直しをはかることにあった。…

【太閤検地】より

…豊臣政権は土免を禁止する法令を出していた。 個々の領主(給人(きゆうにん))が定める免率を百姓が納得した場合は問題ないが,不満の場合,百姓は旱水損・風損・虫害などの自然災害や,土地の生産条件が不安定なことを理由に免率の引下げを領主に嘆願したはずであり,当時における農民闘争の主要な形態は,このようにして行われる年貢減免要求であったと思われる。紛争が収拾できなければ,力関係のいかんによっては給人は譲歩・後退を余儀なくされ,個別領主権は危機にさらされる。…

※「給人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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