領家(読み)りょうけ

精選版 日本国語大辞典 「領家」の意味・読み・例文・類語

りょう‐け リャウ‥【領家】

〘名〙 古代末・中世荘園領主本所本家対比してよぶときは、先に荘園領主であった者が上級権力者に荘園を寄進して本所・本領として形式的にその下に属し、荘園からの収益権を保持する者をいう。
※高野本平家(13C前)一二「国は国司にしたがひ、庄は領家(リャウケ)のままなり」

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デジタル大辞泉 「領家」の意味・読み・例文・類語

りょう‐け〔リヤウ‐〕【領家】

古代末から中世にかけての荘園領主の称。平安中期以後、在地の領主が有力者保護を得るために名目的に土地権門勢家に寄進した場合、その寄進を受けたものを本所といい、寄進者を領家という。

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百科事典マイペディア 「領家」の意味・わかりやすい解説

領家【りょうけ】

(1)荘官(しょうかん)と区別された荘園領主一般をさす。本所(ほんじょ)(本家)と並称。(2)寄進地系荘園において,寄進をうけた者。その者が得分の一部をさらに権門家に寄進して保護をあおいだ場合,権門家を本家といい,自分は領家と称した。領家は預所(あずかりどころ)を補任し,荘園管理の実務を行わせ年貢(ねんぐ)・公事(くじ)を受け取った。
→関連項目朝妻阿【て】河荘伊作荘石黒荘大田荘太田荘小宅荘葛西御厨葛川葛野荘鹿子木荘革島荘久世荘久多荘国富荘国富荘倉月荘椋橋荘倉見荘神野真国荘御恩・奉公近木荘雀岐荘佐々目郷鹿田荘直務下地中分信太荘倭文荘地【び】荘島津荘彼杵荘蘇原御厨田渋荘田仲荘太良荘垂水東牧・垂水西牧東郷荘富田荘富田荘名田荘新見荘西津荘沼田荘拝師荘(拝志荘)檜物荘南部荘三村荘村櫛荘山科温泉荘和与

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「領家」の意味・わかりやすい解説

領家
りょうけ

荘園(しょうえん)制における荘園領主の称。領家は荘園から一定の経済的得分(とくぶん)を得た。これを領家職(しき)といい相伝された。領家は経済的権益を得るかわりに荘園の不輸・不入権を確保し外部からの侵略を阻止していく義務があった。

 領家には二義がある。(1)領家を本所(ほんじょ)または本家(ほんけ)とも称する場合。『式目新編追加』に、「諸国御家人跡(ごけにんあと)、領家進止(しんじ)タルノ所々、御家人役事」として、「御家人相伝所帯等、本所進退タリトイエドモ、サセル誤リナク改易セラレルニオイテハ、先度ノ御教書(みぎょうしょ)ノ旨ニ任セテ子細(しさい)ヲ申サルベキナリ」とあって、領家と本所とは同意義に用いられている。『式目抄』にも「本所トハ領家也(なり)。元来ノ領主ヲ云(いう)也」とある。(2)領家が荘園の諸権益を確保するために、さらに寄進契約を行って権門を上級支配者と仰ぐ場合、上級支配者を本所あるいは本家と号した。この場合、領家と本所あるいは本家とは上下の支配関係に置かれ、領家は本家に次ぐ地位にある領有者をさすことになる。たとえば肥後(ひご)国鹿子木(かのこぎ)荘の場合、大宰大弐(だざいだいに)藤原実政(さねまさ)は同荘の開発領主の子孫から「権威ヲ借ランガ為メ」といって寄進を受けて領家となったが、実政の末流願西(がんせい)は、「国衙(こくが)ノ乱妨(らんぼう)ヲ防ガズ」とこれを鳥羽院(とばいん)の皇女高陽院(かやいん)内親王に寄進して、同内親王を本家と仰ぎ、領家得分を割いて本家に納めることにしている。また、領家は本家の預所(あずかりどころ)としての地位にたつことになるところから領家を預所とよぶこともあった。

[奥野中彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「領家」の解説

領家
りょうけ

荘園領主のうち本家の下位におかれた権門勢家。本家職(ほんけしき)が成立していない場合は,領家ひとりが荘園領主であった。平安後期以降の荘園は,平安中期の国免荘(こくめんのしょう)を前提としたものが多く,院政期には,領家であった中流の貴族や官人が,競って上級権力者に国免荘を再寄進した。こうした場合には領家の上位に本家が成立したが,再寄進されないままの荘園も多かった。寺社領の荘園では,平安中期の荘園がそのまま再編されたものも多く,荘園領主は領家のみであった。その権限は,国衙(こくが)公権を分有したものであり,預所(あずかりどころ)や上司(じょうし)を現地に派遣して荘園の経営にあたったが,実際の経営は,下級荘官である下司(げし)などの在地領主層による場合が多かった。なお,領家は職権の面からみるときは領家職とよばれた。

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世界大百科事典 第2版 「領家」の意味・わかりやすい解説

りょうけ【領家】

古代末期~中世の荘園領主の呼称。(1)下司(げし),公文(くもん)などの荘官と区別された荘園領主一般をさし,本家本所などと同義的に用いられた。例えば,《御成敗式目》第6条の〈国司領家の成敗,関東御口入(おんくにゆう)に及ばざる事〉という規定は,鎌倉幕府の支配地域以外の領域を,国司と領家に代表させているが,この場合の領家は,国司=国衙領(公領)との対比から,荘園領主一般を意味していたと考えるべきである。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「領家」の意味・わかりやすい解説

領家
りょうけ

荘園制における荘園の所有者をいい,特に三位以上の荘園領主をさした。荘園に対する公法上の支配関係を意味する場合は,本所と称することもあった。また荘園を権門寺社などに寄進してその保護を仰ぐようになると,この権門勢家を本家と呼ぶのに対して,自分のほうを領家と称した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「領家」の解説

領家
りょうけ

寄進契約によって名目的な荘園領主となった貴族・寺院などの権門勢家
領家は寄進者に対し不輸・不入権を確保するなどその荘園を保護した。その代償として一定の報酬を年貢の形で収得したが,これが領家職の内容である。こうしてできた荘園を寄進地系荘園というが,領家が荘園の保護を十分に果たせないときにはさらに上級の者に名目的な寄進を行うことがあった。その上級の荘園領主が本家(本所)である。

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世界大百科事典内の領家の言及

【預所】より

…肥後国鹿子木(かのこぎ)荘は,根本領主寿妙の孫藤原高方が1086年(応徳3)私領を大宰大弐藤原実政に寄進し〈地頭預所職〉は高方の子孫相伝の職となった。一方実政の権限は,彼がまもなく失脚したため春宮大夫公実の系統に継承され〈領家職〉といわれているが,公実の孫の刑部大輔隆通(願西)は,娘の通子に〈預所職〉を与えている。いわば領家職から分化した預所職である。…

【代官】より

…これは,中央貴族の所有する荘園が全国各地に分散したり,在地武士の開発所領が広大な面積をほこるようになるにつれ,彼らの直接支配が困難になったという事情によるものにほかならない。中央貴族の場合でいうと,荘園を知行する中央貴族を領家(りようけ)といったが,その領家のもとには荘園を支配・管理する役人として,預所(あずかりどころ)が存在しているのが一般的であった。しかし領家の荘園の数が増えるにつれて,預所はすべての荘園を直接管理することが困難になったため,預所代という代官を任命して,荘園の管理に当たらせることにしたのである。…

【本所】より

…(1)古代末期~中世の荘園領主の呼称。荘園に対する進止(しんし)権の主体を意味することばで,本家―領家―預所(あずかりどころ)などと重層的に存在する荘園領主層のうち,現実に荘園の支配にあたる実権者を指した。《式目抄》に〈本所トハ領家也,元来ノ領主ヲ云也〉と規定されているように,荘園領主層のうち領家が本所の権能をもつことが多かった。…

※「領家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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