中国,清末・民国の学者。字は叔言,号は雪堂。浙江省上虞の人。日清戦争の影響で,農学を中心とした国力振興を考え,日本,西欧の農書を翻訳し,翻訳者養成のため東文学社を建てた。1909年(宣統1)張之洞の推薦で京師(けいし)大学堂農科大学監督に就任したが,11年の辛亥革命で女婿(じよせい)王国維とともに日本に亡命し,旧知の内藤湖南(虎次郎),狩野直喜らのいる京都に7年間滞在した。20世紀初頭の殷墟(いんきよ)や敦煌から発現した新資料の価値をいち早く認識し,その収集と整理に努力してきたが,日本滞在中に《鳴沙石室佚書》《流沙墜簡》をはじめ《芒洛冢墓(ぼうらくちようぼ)遺文》など数多くの資料集を出版した。とりわけ,前・後・続3編の《殷墟書契》は近代的印刷による甲骨文字のはじめての図録集で,その解説《殷墟書契考釈》とともに甲骨学研究の基礎を築いたものである。19年に帰国し,以後は天津に住み宣統廃帝溥儀(ふぎ)の師となり,その間,宮中内閣大庫の明・清時代の文書類(檔案(とうあん))が故紙として流出,廃棄されんとするのを防ぎ,あるいは東方学会を設立するなど,資料保存,学問の基礎作りに貢献した。32年満州国成立とともに,参議府参議,監察院長となる。37年72歳で退職,40年6月,75歳で没するまで旅順で著述生活を送った。上記著作のほか,金石文字を集めた《三代吉金文存》《貞松堂集古遺文》や,400部以上の珍しい書物,文献の復刊を行った。それらは《羅雪堂先生全集》7編にまとめて出版されている。
執筆者:梅原 郁
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中国、清(しん)末~中華民国初期の考証学者・金石学者。字(あざな)は叔言(しゅくげん)、号は雪堂。浙江(せっこう)省上虞(じょうぐ)県の人。清末、試署参事官兼京師大学堂農科大学監督となる。1911年(明治44)辛亥(しんがい)革命が起こり日本に亡命、京都に住む。1919年(大正8)帰国。一時、宣統帝(溥儀(ふぎ))の教育にあたるが、満州国成立後は参議府参議、監察院長を歴任。経学・史学に通じ、古典の校訂や甲骨、銅器、木簡などの新資料の研究に従事した。とくに殷墟(いんきょ)出土の遺物について、甲骨だけでなく伴出遺物にも関心を寄せ、女婿の王国維と協力して殷文化の解明に努めた。主著に『殷商貞卜(ていぼく)文字考』『流沙墜簡(りゅうさついかん)』『殷墟書契』『三代吉金文存』などがある。
[太田侑子 2016年3月18日]
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(阿辻哲次)
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1866~1940
中国の考証学者。浙江(せっこう)省上虞(じょうぐ)の人。溥儀(ふぎ)の教育にあたり,満洲国の参議,監察院長を歴任。甲骨文,敦煌(とんこう)文書,明清档案(みんしんとうあん)その他多くの新資料の発見と収集保存,整理研究や出版に大きな功績を残した。
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…浙江省海寧県の生れで,字は静安,号は観堂。1898年(光緒24)に上海の東文学社に入学してしだいに学才を認められ,以後羅振玉から特別に目をかけられるようになる。1901年に日本に留学して物理学校に学んだが脚気を患って翌年に帰国し,羅振玉に従って師範学校の教職に就いたりする。…
…いずれも発見されるごとに学界の注目を集め,多数の学者が研究を行い,甲骨学,簡牘(かんどく)学,敦煌学という名称も生まれた。以上の4文書群すべてに研究の先鞭をつけ,その後の発展に貢献したのは羅振玉と王国維である。解放後の中国では,さかんな古墓の発掘にともない各地から戦国・秦漢の帛書や竹木簡が大量に出土し,新たなトゥルファン文書も発掘された。…
… 敦煌文献の紹介と研究は,1908年ペリオが収集写本のめぼしいものの目録と実物数点とを携えて北京に赴き,学者たちに展示したことに始まる。羅振玉らはさっそく《莫高窟石室秘録》《敦煌石室遺書》(ともに1909)などを出版して,これらを紹介し,その後もペリオから送られて来た写真を影印して,《鳴沙石室佚書》(1913)《鳴沙石室古籍叢残》(1917)などをやつぎばやに公刊した。これら書名にみられるように,当時の学者たちの関心の的は古佚書の写本に置かれていた。…
※「羅振玉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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