美ヶ原(読み)ウツクシガハラ

デジタル大辞泉 「美ヶ原」の意味・読み・例文・類語

うつくし‐が‐はら【美ヶ原】

長野県松本市の東方にある溶岩台地高原標高約2000メートル。レンゲツツジをはじめ植物の種類に富む。四周の眺望にすぐれた観光地

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日本歴史地名大系 「美ヶ原」の解説

美ヶ原
うつくしがはら

市の東方に三・四キロの幅をもち、南北四キロにわたる乾燥高原。平均標高一九〇〇メートル。山辺やまべ谷の峡谷を隔てて筑摩ちくま山脈の主峰鉢伏はちぶせ山と相対する。標高二〇三四メートルのおうとうの高地を最高峰として、武石たけし峰・やけ山・牛伏うしぶせ山・鹿伏しかぶせ山・茶臼ちやうす山・物見石ものみいし山などが起伏して連なる中部山岳地帯の展望台である。第三紀末から第四紀にかかわる古い火山台地であり、浸食によって平坦な台地に変わり、更に隆起して高原状を呈したとみられる。東南には蓼科たてしな(二五三〇メートル)霧ヶ峰きりがみね高原、八ヶ岳連峰(主峰の赤岳は二八九九メートル)富士山の姿が望まれ、西には北アルプスの前山をはじめやりヶ岳(三一八〇メートル)穂高ほたか(三一九〇メートル)、西南の乗鞍のりくら(三〇二六メートル)、また南方の御嶽おんたけ(三〇六三メートル)仙丈せんじようヶ岳(三〇三三メートル)と三千メートル級の高山が眺められる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「美ヶ原」の意味・わかりやすい解説

美ヶ原
うつくしがはら

長野県松本市の東方、筑摩産地(ちくまさんち)にある高原台地。最高峰王ヶ頭(おうがとう)(2034メートル)を中心に、物見石山、武石峰(たけしみね)、王ヶ鼻茶臼山(ちゃうすやま)などの山々に囲まれた平均高度2000メートル前後の波浪状高原台地で、信州の展望台といわれるほど360度方向の眺望がきく。従来、この高原は溶岩台地といわれたが、最近は、凹地(くぼち)に堆積(たいせき)した火山性の凝灰岩や礫岩(れきがん)が隆起し、その後侵食されてできたものとされている。高原の面積はおよそ5平方キロメートルで、一面の草原をなし樹木はない。これは、従来牧場(1899年開設)に利用していたためで、人工的に形成されたものである。美ヶ原は八ヶ岳(やつがたけ)中信高原国定公園の一つの中心をなし、年間延べ約100万人の観光客が訪れる信州の代表的高原観光地。高原には美しの塔、三城(さんじろ)牧場、美が原高原美術館などがあり、北アルプス連峰をはじめ、富士山、八ヶ岳、中央アルプスなど雄大な眺めを楽しむことができる。この観光地の特色は、第一に植物の種類が多いことで、低山帯と亜高山帯の植物が入り交じり、ハクサンフウロウメバチソウマツムシソウヤナギランなどの群落や、レンゲツツジスズランキスゲなどがある。またチョウの種類も多い。第二は四周の眺望が優れていることで、詩人尾崎喜八(きはち)は、「登りついて不意に開けた眼(め)の前の風景に、しばらくは世界の天井が抜けたかと思う……」と歌っている。松本市、茅野(ちの)市、小諸(こもろ)市などからいずれもバスで1時間内外で到達でき、ロッジやホテル、ハイキングコース、キャンプ場がある。なお1981年(昭和56)霧ヶ峰ビーナスラインが開通した。

[小林寛義]

『斎藤守著『美ヶ原高原』(1964・朋文堂)』


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改訂新版 世界大百科事典 「美ヶ原」の意味・わかりやすい解説

美ヶ原 (うつくしがはら)

長野県の中央部にある高原。第三紀末に噴出した溶岩が浸食されて平たんになったもので,王ヶ頭(2034m)を中心に,武石峰,王ヶ鼻,牛伏山,物見石山など,標高2000m内外の台地が連なっている。高原は国有地であるが,地元の牧野組合に貸与されて1900年ころ牧場となり,夏の間乳牛が放牧されている。30年ころから観光の対象となり,第2次大戦後本格的に観光地化した。牧場の中心に〈美しの塔〉があり,尾崎喜八の美ヶ原をうたった詩が刻まれている。また高原の一角に野外彫刻を主体とする美ヶ原高原美術館がある。この高原には長野県の有料道路をはじめ,松本市,諏訪市,茅野市,上田市など県内各地から車道が通じ,八ヶ岳中信高原国定公園を代表する観光地である。美ヶ原からの展望は雄大で,北アルプス,中央アルプス,南アルプス,八ヶ岳,富士山,浅間山などの山並みを望むことができ,とくに北アルプスの展望はすばらしい。またレンゲツツジ,マツムシソウなどの植生も美しい。
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百科事典マイペディア 「美ヶ原」の意味・わかりやすい解説

美ヶ原【うつくしがはら】

長野県松本市東方,筑摩山地の王ヶ鼻,茶臼山,物見山に囲まれた標高2034m,面積約5km2の高原。溶岩台地が準平原化したものとみられ,ゆるやかな草原に高山植物,ツツジ,スズランが群生,北アルプス八ヶ岳の展望が雄大。冬はスキー適地。松本,下諏訪などからバスが通じる。
→関連項目日本百名山松本[市]八ヶ岳中信高原国定公園

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「美ヶ原」の意味・わかりやすい解説

美ヶ原
うつくしがはら

長野県中部,松本市東部から上田市長和町にかけて広がる高原。周囲約 40km。標高 2000m前後で,飛騨山脈赤石山脈浅間山などの眺望に優れ,信州の展望台といわれる。火山性堆積物が隆起したのちに浸食された地形で,明治期に牧場が置かれたため草原をなす。八ヶ岳中信高原国定公園に属する。西麓に美ヶ原温泉郷がある。

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事典・日本の観光資源 「美ヶ原」の解説

美ヶ原

(長野県)
日本百名山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の美ヶ原の言及

【筑摩山地】より

…長野県のほぼ中央に位置する標高1000~2000mの山地。南から北へ鉢伏山(1929m),美ヶ原(王ヶ頭(おうがとう),2034m),四阿屋(あずまや)山(1387m),聖(ひじり)山(1447m)など,おもに第三紀層からなる山々が並ぶ。中心の美ヶ原周辺にはなだらかな小起伏面が発達し,各種の高山植物,ツツジ,スズランなどが群生しており,冬はスキーの適地となる。…

※「美ヶ原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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