えびす

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

えびす

恵比須,恵比寿,とも書く。福利,獲物を司る神。エビスの語は,古くはエミシとともに異民族をさす語で,辺境にある者の神とされたこともあった。のちに市場の守護神として勧請され,商業の発達とともに福利の神として広く信仰を集めることとなった。また漁民の信仰では,一般に大漁をもたらす神とされ,ところによってはクジラ,イルカ,サメあるいは海中から拾い上げた石,漁網の浮きなどをエビスと呼ぶこともある。さらに農山村にもエビス信仰はあり,狩人がシカの心臓の上部をエビス様と呼ぶ例が群馬県にある。七福神の1神として烏帽子をかぶり鯛を釣上げるエビスは,兵庫県西宮神社の祭神。なお,江戸以降の民間行事として,商家では正月と 10月の 20日に戎講を催して1年中の商売繁盛を祈るならわしができた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

えびす
えびす / 夷・恵比須・戎

生業を守護し福利をもたらす神として、わが国の民間信仰のなかで広く受け入れられている神霊。語源はさだかではないが、、つまり異郷人に由来すると考えられ、来訪神、漂着神的性格が濃厚に観念されている。現在一般にえびすの神体と考えられている烏帽子(えぼし)をかぶりタイと釣り竿(ざお)を担いだ神像によってもうかがえるように、元来は漁民の間で、より広範に信仰されていたものが、しだいに商人や農民の間にも受容されたと考えられる。漁村では多くの地方で、海中から拾った、あるいは浜辺に漂着した丸い石をえびすの御神体と定めて祠(ほこら)に納め、初漁祝いや大漁祈願など各種の漁にかかわる行事で祭りを行う。またクジラ、サメ、イルカなどをえびすとよんだり、遭難者の遺体や漂着物をえびすとよんでこれをけっして粗末には扱わない風習がある。さらに漁師が海に出漁するとき、釣り糸を垂れるとき、海女(あま)が海に潜るときなどに「えびす」と唱え言をすれば漁があると伝えている所も多い。いずれも、魚群は回遊するという性質と、この神霊に観念されている属性とが結び付けられていると考えられる。[野口武徳]

えびす信仰

えびす神は、漁師や農家あるいは商家などで、生業を守護し、福徳をもたらす福神として祀(まつ)られる。祭神は、事代主命(ことしろぬしのみこと)あるいは蛭児命(ひるこのみこと)とする両説がある。また七福神の一つとして大黒天(だいこくてん)と並び祀られる。古くより「寄り神」として海浜に祀られ、漁師が大漁を祈っていたが、海産物の売買により市(いち)の神、商売繁栄の神として、広く商家にまで信仰されるようになった。関西では1月10日を「十日戎(とおかえびす)」といって、大阪市の今宮戎(いまみやえびす)神社、兵庫県西宮(にしのみや)市の西宮神社などへ招福を祈る多数の参拝者があり、西日本の神社でも1~2月に同様の祭りが多い。農家では旧暦の1月と10月の20日に夷棚(えびすだな)や祠にタイなどを供え、豊作の祈願と感謝の祭りをする「えびす講」の行事もある。商家でも秋に「えびす講」あるいは「誓文払(せいもんばらい)」と称し、駆け引きで客を欺いた罪を祓(はら)うため、神社に詣(もう)でたり、客を供応したり、大安売りをすることがある。[寳來正彦]

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精選版 日本国語大辞典の解説

えびす【恵比須・恵比寿・夷・戎・蛭子】

(「夷」と同語源だが、「恵比須」とあてる慣用が多く、そのかなづかいは「ゑびす」とする場合もある)
[1] 七福神の一つ。蛭子神(ひるこのかみ)とも、事代主命(ことしろぬしのみこと)ともいわれる。風折り烏帽子に狩衣(かりぎぬ)、指貫(さしぬき)を着け、釣りざおで鯛を釣りあげている姿をしている。商家の福の神として祭られることが多い。夷三郎(えびすさぶろう)。えびすがみ。えびすさま。
※承安二年広田社歌合(1172)「世(よ)をすくふ夷(えびす)の神のちかひには洩(も)らさじものを数(かず)ならぬ身も〈安心〉」
[2] 〘名〙
① 異郷から訪れて漁をもたらす神。漂着する神。漁民の信仰で、魚群を追う鯨、鮫(さめ)の類や、漁期はじめに船主などが海から拾ってくる石、また、水死人などをいう。
※虎明本狂言・石神(室町末‐近世初)「はるかなるおきにもいしの有物をゑびすのごぜのこしかけのいし」
② 家の福を増す神。台所を守る神。農村の信仰。
③ 操り人形。
※日葡辞書(1603‐04)「Yebisuuo(エビスヲ) マワス〈訳〉あやつり人形を舞わせる」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)六「一両弐歩の鯛(たい)を調(ととのへ)てゑびすの祝(しふ)義をわたしけるに」
※地方凡例録(1794)一一「日本に絵銭と云て、大黒・戎・駒引・念仏・題目・福寿、其外種々の物あり」
※雑俳・桜狩(1743)「ある時は夷箱(エビス)にも成たばこ入」
⑦ (裏面にえびす神が描かれていたところから) 明治一〇~一一年(一八七七‐七八)に発行された国立銀行交換紙幣。額面は、一円と五円があった。
⑧ 狂言面の一つ。「夷大黒」や「夷毘沙門(えびすびしゃもん)」に用いる。

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