ザリガニやアカテガニなど,汽水から淡水域に生息する甲殻類の胃中にできる主として炭酸カルシウムからなる白い結石。球形,半球形,円盤状のものがあり,胃壁に沿って左右2個作られる。一般的には脱皮に先立ち,甲殻中のカルシウム塩が血液中に溶かし出され,胃に送られて胃石が形成されるのであるが,クロベンケイガニなどでは必ずしも脱皮の前に形成されるわけではない。脱皮後は胃石は溶かされて血液カルシウムとなって新しく分泌された甲殻を硬化させるのに使われる。すなわち胃石の形成は,カルシウム塩の多くない生息環境において,甲殻中の炭酸カルシウムを脱皮のたびにすべて捨ててしまうのを防ぐ機構と考えられる。そのため,胃石は脱皮の直前に最大になる。ザリガニの胃石はとくに発達がよくて直径5mm以上になり,古くからoculicancri(〈カニの目の意〉)とよばれ眼病薬とされてきたが,これは外形からの発想であるにちがいない。効能書によれば,肺病,性病の特効薬であり,また強壮剤でもあるが,成分を考えれば,にわかには信じ難い。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
甲殻類のうちザリガニやオカガニなどの胃の中に、脱皮時に形成される2個の白色球形をした結石。海産のエビやカニ類と違い、カルシウム塩含量の少ない淡水にすむザリガニなどにとってはその補給がむずかしいところから、脱皮に先だち古い甲らの裂け目のできる部分やはさみなどからカルシウムの再吸収がおこり、胃に送られて胃石として蓄えられる。脱皮が終わると、胃石のカルシウムは血中にイオンとして溶け込んで、新しい甲らに運ばれ石灰化してそれを硬化する。しかし、一般には古い甲らを食べてカルシウムを得ることが多く、胃石がすべての供給源ではない。ザリガニの胃石はラテン語で「カニの目」を意味するオクリ・カンクリoculi cancriの名で古くから知られ、眼病薬として使用されたが、その効用には疑問がある。
[守 隆夫]
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