内証(読み)ないしょう

デジタル大辞泉の解説

ない‐しょう【内証】

仏語。自己の心の内で真理を悟ること。内面的な悟り。
表向きにせず、内々にしておくこと。外部には隠しておくこと。また、そういう意向。内密。ないしょ。
「―にてのお掛合いも愈(いよいよ)手切と相成り候間」〈芥川・糸女覚え書〉
「商売の元手をとらすべしと、この―を両方へ聞かせしに」〈浮・桜陰比事・五〉
表向きでないところ。奥の間。特に、勝手、台所。また、そのやりくり。内々の経済状態。家の暮らし向き。ないしょ。「内証は火の車だ」
「―より内儀声を立てて」〈浮・諸国ばなし・一〉
遊女屋の、主人のいる所。また、主人。ないしょ。
「―の千臆(ちおく)さんへ…伝言をたのまれやしたから」〈魯文安愚楽鍋
内輪の事情。内々のようす。内情。
「扇風かたへ参りて―を吹き込みければ」〈浮・禁短気・一〉
他人の妻を敬っていう語。内室。
「塩冶が―顔世の頼み」〈浄・忠臣蔵
内輪の者。みうち。親族。
「世間、―ともに心を付けぬるかはゆさに」〈浮・一代男・六〉

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大辞林 第三版の解説

ないしょう【内証】

仏教で、自分の心のうちで真理を悟ること。また、心の中で体験する悟り。内心の悟り。
ないしょ(内緒)」に同じ。 「今、目の前でいただくも、-にて状でいただくも、同し事と/浮世草子・一代男 7
ないしょ(内緒)」に同じ。 「おもては立派で-はくるしい/黄表紙・金生木」
ないしょ(内緒)」に同じ。 「 -より内儀声を立て/浮世草子・諸国はなし 1
ないしょ(内緒)」に同じ。 「あれ程うつくしきはまたもなきに、天神になしけるは-に悪き事のありや/浮世草子・一代女 2
表向きにしないで、内々にしてある考えや意向。 「御-にかなふ事をつとめらるるごとく/どちりなきりしたん」
他人の妻妾を敬っていう語。内室。 「御亭主はまだか。御-は/洒落本・遊子方言」
身内みうち。親族。 「私は-の者でござる/狂言記・鱸庖丁」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

ない‐しょう【内証】

〘名〙
[一] 仏語。みずから心のうちに仏教の真理を悟ること。また、その悟った真理。
※真如観(鎌倉初)「我仏なりと悟れば、内証(ナイショウ)の仏也」
[二] 表向きにしないで内々にしておくこと。また、そのもの。ないしょ。
① 外部には知られないようにしてある考えや意向。
(イ) 内々にもっている考え。内意。
※天草本平家(1592)一「テンタウ ノ gonaixô(ゴナイショウ)ニモ ソムキ」
(ロ) 本当の気持やおもわく。本心。内心。
※玉塵抄(1563)四七「魏の太祖の東曹を内証にいやがることをよう知て」
② (形動) 人に知らせないこと。あらわにしないこと。また、そのさま。
※仮名草子・身の鏡(1659)中「家中の者を、敵のやうに内証(ナイシャウ)に法度を立(たて)
※滑稽本・世風呂(1809‐13)二「由良之助が如在ないから、内証(ナイシャウ)で手当もしたらうのさ」
③ うちわの事情。内々の様子。内情。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第三八「内証を聞たし風の吹やうに 船頭がなさけ乗合の上」
④ 家庭内部。うちわのこと。私事。
浮世草子・好色一代男(1682)六「御機嫌は、首尾はと、世間内証(ナイシャウ)ともに心を付ぬるかはゆさに」
⑤ 内々の経済状態。一家の財政状態、くらしむき。懐(ふところ)具合。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第四「内証の苦は色かゆる目安書 十露盤上手といはれし我も」
※黄表紙・莫切自根金生木(1785)上「おもては立派で内しゃうはくるしい」
[三] 表向きではない場所。また、内々の人。ないしょ。
① 奥向きの場所。奥の間。奥の庭。
※浄瑠璃・滝口横笛(1676)四「ないせうより、いとなまめいたる女の声にて」
② 主婦のいる奥の間。また、台所。勝手。
※浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)一「内証(ナイシャウ)より、内義声を立て」
③ 江戸時代、遊女屋の主人の部屋。帳場。また、その主人。江戸では、吉原でいい、岡場所では部屋、居間などといった。
※浄瑠璃・長町女腹切(1712頃)中「お花一人は我れらが内、手放してはないせうに気遣い有馬の、云ふな云ふな」
④ 芝居の裏方。楽屋。
※浮世草子・世間胸算用(1692)三「内証(ナイシャウ)より近付の芸者に花をとらせ」
⑤ 他人の妻を敬っていう。内室。
※浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)道中双六「姫さま御誕生、御ないせうのよしみにて、かかが乳を上まし」
⑥ 身内(みうち)の者。うちわの者。親族。
※狂言記・鱸庖丁(1700)「私は内証(ナイセウ)の者でござる」
[補注](二)(三)は、江戸時代以降「ないしょ」の形でも用いられ、「内所」「内処」の字を当て、あるいは「内証」を「ないしょ」と読ませている例もある。また、現代では「内緒」の字を当てることが多い。→ないしょ(内証)

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世界大百科事典内の内証の言及

【公界】より

…公共のものをさし,井田の中央を公界といったともいうが,無学祖元の〈円覚公界〉という表現,〈雲堂公界の坐禅〉(《正法眼蔵》),〈公界人〉(東福寺文書)などの用例からみて,俗界から離れた修行の場や修行僧を意味するものと思われる。南北朝時代には〈述懐ハ私事,弓矢ノ道ハ公界ノ義〉(《太平記》)のように,私事に対する公をさす語として,一般的に使われはじめ,室町・戦国時代に入ると,公界は世間・公衆の意味で,内々,内証に対する言葉として広く用いられるようになった。それとともに,公界者,公界衆は私的隷属民(下人,所従)とは異なる遍歴の職人,芸能民をさし,遍歴の算置(さんおき)が公界者に手をかけることを昂然と拒否したような(狂言《居杭(いぐい)》),積極的な意味を持つようになる。…

※「内証」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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