六訂版 家庭医学大全科 「脊髄炎とその類似疾患」の解説
脊髄炎とその類似疾患
せきずいえんとそのるいじしっかん
Myelitis and related diseases
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
脊髄は
原因は何か
脊髄炎の原因は、①原因が不明な特発性、②ウイルス、細菌、寄生虫などの感染による感染性あるいは感染後性、③全身性エリテマトーデスなどの
正確な頻度は不明ですが、ウイルス感染に関連して発症するものが多いようです。原因ウイルスとしては、
症状の現れ方
急性脊髄炎では、脊髄は横断性(水平面全体)に損なわれます。傷害された脊髄の部位に相当する部分に運動障害と感覚障害がみられ、加えて膀胱直腸障害を生じます。胸髄が損なわれる頻度が高く、両下肢の麻痺(
障害が横断性でなく部分的である場合もあります。たとえば、運動神経の通っている脊髄の前方部分だけが損なわれると、運動障害だけが現れます。
検査と診断
急性脊髄炎ではまず感覚障害の分布を参考にして脊髄MRIを行い、圧迫性・腫瘍性病変、血管障害のないことを確認します。脊髄炎では急性期には脊髄の腫脹や病変部を異常信号域としてとらえることがあります。次に
病因を調べるためには、ウイルス抗体価、髄液細菌培養、膠原病および類縁疾患のチェックなどが必要です。鑑別すべき疾患としては、脊髄
HAM(HTLV1関連脊髄症)は、緩やかに進行する
髄液検査では軽度のリンパ球性細胞の増加、軽度から中等度の蛋白増加のほか、核の分葉したリンパ球を認めることがあります。脊髄MRIでは著しい脊髄
治療の方法
急性脊髄炎はウイルスの直接感染による場合と、ウイルス感染に伴う遅発性アレルギー反応によるものが大部分を占めています。したがってアシクロビル(ゾビラックス)などの抗ウイルス薬や、アレルギー反応を抑えるために副腎皮質ステロイド薬を投与したりします。
頸髄障害による呼吸不全がみられた時は呼吸管理も必要になります。排尿障害に対しては、膀胱カテーテルの留置が必要になる時も多く、慢性期になっても自己導尿を行う場合もあります。薬物療法は1カ月程度で終了し、早期から積極的にリハビリテーションを行います。
HTLV1関連脊髄症は自己免疫学的機序(仕組み)の関与が推定されており、ステロイド療法やインターフェロン療法を行います。
病気に気づいたらどうする
できるだけ早く治療を開始する必要があるので、ただちに神経内科、整形外科などの専門医の診察を受けてください。
綾部 光芳
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報