脳幹網様体(読み)ノウカンモウヨウタイ(その他表記)brain stem reticular formation

デジタル大辞泉 「脳幹網様体」の意味・読み・例文・類語

のうかん‐もうようたい〔ナウカンマウヤウタイ〕【脳幹網様体】

脳幹にある、神経細胞体神経線維が入り交じって網目状をなす構造大脳皮質への刺激通路となり、意識水準を保つ働きをし、睡眠に関係している。

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改訂新版 世界大百科事典 「脳幹網様体」の意味・わかりやすい解説

脳幹網様体 (のうかんもうようたい)
brain stem reticular formation

単に網様体reticular formationということもある。脳幹被蓋の上方から下方にかけて存在する一連の構造で,網目状に複雑に走る神経繊維網と,その間に散在する神経細胞の集団からできている。系統発生的に古く,ほとんどすべての脊椎動物にみられる基本的な構造である。網様体は広く脊髄から間脳にまで存在するとされているが,通常は延髄,橋(きよう),中脳の網様体を脳幹網様体と総称している。かつては,その結合や機能がよくわからなかったため,脳幹網様体として総括的に取り扱われてきた。網様体の中にある神経細胞の集団は全体として網様核と呼ばれるが,現在では多くの核群から構成されていることが明らかにされている。その結合も複雑で,それぞれ機能に応じて特定の結合をしている。網様核の神経細胞には遠心性に長い経路を出すもののほか,他の経路との中継をなす介在細胞としての働きをするものがある。

 橋にある尾側橋網様核や延髄の内側にある巨大細胞網様核と腹側網様核は,大脳皮質の運動野と体性感覚野,上丘,小脳核などからの繊維を受けたのち,橋網様体脊髄路あるいは延髄網様体脊髄路として脊髄に投射している。これらの経路は四肢の筋肉の緊張や反射の調節を行っている。脳幹網様体の正中およびその周辺には縫線核と呼ばれる神経細胞の集団がある。これらの細胞は細胞体の中にセロトニンアミンの一種)をもっており,脊髄の後角の表層に投射して,痛みの伝達抑制する働きをしている。縫線核のセロトニン含有細胞や延髄の下面の表層にあるアドレナリン含有細胞は視床下部からの繊維を受けて,脊髄で胸髄の高さにある中間外側核(交感神経繊維を出す核)に接続している。このようにして呼吸や血圧の調節を行っている。橋にある橋被蓋網様核,延髄の正中旁網様核や外側網様核は,大脳皮質の運動野や体性感覚野,小脳核,前庭神経核などからの入力を受けて小脳に投射する。なかでも外側網様核は脊髄の屈曲反射の求心性繊維から強力に入力を受けている。これらの網様核は運動や平衡に関する情報を統合して小脳皮質に伝える重要な働きをしている。

 延髄の外側にある小細胞性網様核には上唾液核や下唾液核がある。上唾液核からは涙腺や顎下腺の分泌を促進する分泌繊維が中間神経を通って出て行く。下唾液核からは耳下腺の分泌を促進する分泌繊維が舌咽神経を通って出て行く。小細胞性網様核には,そのほか心臓の収縮を抑制する心臓抑制繊維を出す細胞群や呼吸運動を調節する細胞群がある。これらの細胞群には上位の視床下部からの投射がある。また,網様核には,大脳皮質の運動野からの入力を受けて運動性脳神経核に接続するもの,大脳皮質の前頭眼野や後頭眼野からの入力を動眼神経核,滑車神経核,外転神経核に伝えて眼球運動の制御を行うものなどがある。中脳の網様体には上位の視床核や淡蒼球と相互に結合して運動の調節に関与しているものがある。また中脳の腹側被蓋野は視床下部や扁桃体と結合しており,いろいろの自律神経系の機能に関係している。

 網様体の神経細胞のなかには,アセチルコリン,P物質,ドーパミン,エンケファリン,コレシストキニンのほかいろいろのペプチドを含有するものがあり,脳内で広範に繊維をはりめぐらしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の脳幹網様体の言及

【運動障害】より

… 一方,この最終共通経路に対して中枢神経の四つのおもな系統の調節系が作用を及ぼして,随意運動や不随意な自動的運動が営まれている。それは,(1)大脳皮質運動野からの系統(錐体路系),(2)脳幹網様体などに由来する系統,(3)小脳系,(4)大脳基底核系であり,これらの病変によって種々の運動障害が生じる。
[錐体路系の運動障害]
 大脳皮質運動野にある神経細胞であるベッツ巨大錐体細胞から出た軸索は,脳幹や脊髄の運動ニューロンに達して,シナプスで連絡する。…

※「脳幹網様体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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