日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動着陸装置」の意味・わかりやすい解説
自動着陸装置
じどうちゃくりくそうち
automatic landing system
霧や雨などで視程が低下した状態でも、自動的に安全、正確に飛行場への進入・着陸を行わせる装置。航空機の離陸から着陸までの一連の操作を自動化して操縦士の負担を軽減し、安全性と定時性を確保しようとする自動飛行制御装置の一部で、オートパイロット(自動操縦装置)、オートスロットル、低高度用精密電波高度計、ILS(計器着陸装置)で構成されている。
従来から用いられているGCA(地上誘導着陸方式)は地上からレーダーで誘導し、ILSでは地上からの電波を受信して計器に表示させて進入・着陸を行っているが、いずれも機器の能力の関係で、進入の最終段階は操縦士の肉眼によって滑走路を確認し着陸操作を行っていた。このため、それぞれの飛行場ではデシジョンハイト(D/H:decision height、操縦士が着陸するか否かを決定する高度)や滑走路視程(RVR:runway visual range)の最低値を決め、気象条件がそれを下回るときは上空で待機するか、定められた代替飛行場か予備飛行場に着陸して、天候の回復を待つことになる。航空機事故は悪天候下で着陸を強行することで起こることが多い。自動着陸装置は、この着陸時の安全性と、運航の定時性を確保するために開発された装置である。
自動着陸装置の理想は、雲高ゼロ、視界ゼロの状態でも、安全に着陸し、タキシング(地上滑走)を行えることである。国際民間航空機関(ICAO(イカオ))では全天候着陸装置の開発にあたって、1964年に雲高と滑走路視程に関して五つのカテゴリー(Ⅰ、Ⅱ、ⅢA、ⅢB、ⅢCの五段階)を設け、その段階ごとに到達目標を決めて地上設備と機上装備の改善を推進している。現在、カテゴリーⅠとⅡはほとんどの主要空港で達成され、自動進入着陸を必要とするカテゴリーⅢを目標に整備が進められている。
自動着陸装置による着陸は、オートパイロットとILSによって正確に滑走路に進入し、低高度用精密電波高度計が約15メートルの高度を測定すると、自動操縦装置が機首上げの操作を行うと同時に、オートスロットルがエンジン推力を絞って滑走路に接地する。カテゴリーⅢCでは、その後のタキシングも自動操縦で行う。
[落合一夫]