公権力でない私的集団が,その内部のメンバーに刑事裁判権,警察権を行使すること。日本における中世国家権力は,社会の基層部にまでその権力が浸透せず,社会を構成する血縁・地縁・職能集団など数多くの集団は,強烈な自力救済観念のもと,みずからの力で集団内部の秩序を維持していた。武士団などの族的集団においてもこうしたことが行われたが,通常自検断という場合は,中世後期に成立した自律的集団たる国人一揆,惣村などの検断をさす。これらの集団は,一揆契約状,村法にみずから検断権の行使を成文化しており,それによって集団の結束,自律的性格を保持しようとした。そのため自検断は,惣村成立の要素として惣有地の保持,地下請(じげうけ)とともに重視されている。中世村落の自検断は,盗犯者に対する死刑までを含む強大なものであったが,幕藩制国家により否定され,近世村落では軽犯罪に対する内部処理というかたちで生きのびたにすぎない。
→惣
執筆者:勝俣 鎮夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中世後期、村落などで発生した犯罪について、犯科人を検挙し処断する「検断」手続きに際し、守護の介入を拒絶する意図をもって、「自検断」の語が用いられることがあった。中世、「大犯(だいぼん)三箇条」の語によって象徴される重犯の検断は、基本的にはその国を管轄する守護の職務とされていたが、本家・領家の権威をもって「守護不入(ふにゅう)」の特権を認められた荘園においては、守護検断によらず自前の検断を主張することがあり、これが「自検断」の原型をなす。中世後期、惣(そう)と呼ばれる村落共同体の生成に伴い、内部の秩序維持を惣の自律によって行おうとする動きが生じ、荘園の「守護不入」特権のそうした名目と看板によりつつ実際には「地下(じげ)検断」として村落ごとに遂行される「自検断」が生じた。その背景には、外部から検断の手が入ることによって関係者の所領や財物が「検断得分(とくぶん)」として押収され流出することを、回避しようとする意図があったものと推察される。
[新田一郎]
地下(じげ)検断とも。中世後期,荘園村落・惣村がみずからの定めた掟に背く者に対しムラ自身の実力で制裁を加える行為。対象はムラ内部の規律違反者や近隣村落との紛争の実力による解決など。年齢階梯制をとる西日本の村落では,村落指導部である乙名(おとな)に対する若衆(わかしゅ)が村の武力となり実施する。鎌倉後期~戦国期に盛んで,荘園領主の検断権は検断得分の没収物の取得権に縮小した。近世村落では村八分などの非実力的な方法で抑圧された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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