人を教唆しもしくは幇助(ほうじょ)して自殺させ、または人をその嘱託を受けもしくはその承諾を得て殺す罪であり、6月以上7年以下の懲役または禁錮に処せられる(刑法202条)。その未遂罪も処罰される(同法203条)。外国には、かつて自殺を犯罪とする立法例もみられたが、日本では、自殺そのものを犯罪とする立法は存在しない。しかし自殺が犯罪とならないからといって、他人の自殺に関与することは、やはり他人の生命を否定する行為であるから、本人自身が自殺することとは質的に異なる。そこで、自殺に関与する行為を犯罪とする諸外国の立法例は多い。日本の刑法も、嘱託(依頼)・承諾(同意)による殺害行為と自殺の教唆・幇助とを自殺関与罪としてあわせて規定しているが、被殺者の意思に反する殺人(同法199条)より刑を軽減している。
本罪が成立するためには、被殺者が、自殺の意味を認識しうる能力をもつとともに、自由な意思決定に基づき真に自殺をする意思を有しなければならない。したがって、幼児や心神喪失者(たとえば精神障害者)の「自殺」に関与したり、暴行や脅迫により「自殺」させれば、むしろ普通殺(刑法199条)に該当する。ただ、欺罔(ぎもう)(あざむきだますこと)により自殺の意思を生じさせる場合、とくに追死(ついし)の意思がないのに、これを偽って「心中」をもちかけ、相手を自殺させる事案については、通説・判例は普通殺にあたると解しているが、自殺それ自体につき意思を有している以上、動機の錯誤にすぎないから、自殺関与罪にあたるという見解が有力に主張されている。嘱託殺人の場合は嘱託の有無が問題となる。これに関連して「任意的安楽死」すなわち、被殺者の意思による安楽死も本罪の構成要件に該当するが、違法性阻却事由(違法性の認定が排除される特別な事情。違法阻却事由ともいう)にあたるかが問題となる。
[名和鐵郎]
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…例えば,いわゆる植物状態からの生命維持装置の除去や脳死状態の者からの移植のための心臓摘出等は,脳機能の不可逆的停止をもって人の終期とする脳死説の立場からは殺人とはならないが,なお社会通念上大きな反発を呼んでいるのである(〈臓器移植〉の項参照)。 殺人罪に関連する特殊な犯罪類型として,刑法は,人を教唆もしくは幇助(ほうじよ)して自殺させる罪(自殺関与罪)と,被殺者の嘱託を受けもしくは承諾を得てこれを殺す罪(嘱託殺人罪,承諾殺人罪)を定める(202条)。刑は6ヵ月以上7年以下の懲役または禁錮。…
※「自殺関与罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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