座るときに敷くもの。通常〈しとね〉といっているものは方形で,畳表または絹織物のまわりに縁をつけたものをいい,平安時代に形式が整った。畳表の方は当時官庁などで用い,小町蓆(むしろ)と呼ぶ藺蓆(いむしろ)を表に,中に薦(こも)を数枚重ね,裏に布をつけ,四周に幅5寸ばかりの布帛の縁をつけてある。縁は位によって五位以上は黄絹縁,六位以下は紺布縁,さらに縁なしなどと違っていた。絹織物の方は宮中や上級貴族用で,東京(とうぎよう)錦(ベトナムのトンキンから渡来した錦の意で,赤白の碁盤目で白地には赤く蝶鳥の模様を織った錦)や唐錦などを表にし,綿と蓆を芯にして,唐綾の縁をつけたものである。方3尺から4尺ぐらいの1人用,長さ8尺から9尺ぐらいの2人以上用があった。また東京錦を用いた茵は,とくに東京茵(とうぎようのしとね)と呼ばれた。茵は昼の御座として畳の上に座布団として敷くほか,倚子(いし)や床子(しようじ)の上にも敷いて使った。寝るときに敷くものも〈しとね〉といい褥の字をあてているが,同じく〈しとね〉と呼ぶ理由は,古くは寝具も座具もきちんとした区別がなかったためと考えられる。
執筆者:小泉 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
座臥(ざが)具の一種。莚(むしろ)を芯(しん)として真綿を入れ布帛(ふはく)で覆い、錦(にしき)の縁をつけた正方形の敷物。『満佐須計(まさすけ)装束抄』に「茵長さ広さ四方三尺ばかりにて赤地の錦の縁の広さ四五寸ばかりなるを四方にさしまはして、なかに唐綾(からあや)もしは固(かた)織物などを縁のうちざまに付けて、そのなかにたてざまに縫ひ目あり、綿を中に入れたり、打裏なり」とある。『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』によると、3尺5寸の大きさで、白綾を中側にし、周囲に幅5寸の唐錦(からにしき)や東京錦(とうぎょうき)の縁をつけ、裏に紫色の絹を張って、それぞれ唐錦茵、東京錦茵とよんだ。『源氏物語』(初音(はつね))に「唐の東京錦の、ことごとしき縁さしなるしとねに」とあり、はでやかな縁の茵であった。
[高田倭男]
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…夫婦(めおと)座布団は大判の2枚組,茶席用のものは小ぶり,椅子に使う洋式のクッションは半ば装飾的である。 古代の敷物として,筵(むしろ),畳(薄縁(うすべり)状の)があるが,それを1人分の大きさに縁どりしたのが茵(しとね)である。稲わら,ガマやスゲの葉茎を円形に編んだ円座(えんざ)やわらふだ(わろうだ(藁蓋))も盛んに用いられたことが,鎌倉期の絵巻物によって知られる。…
※「茵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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