中国,後漢の文人。陳留圉県(河南省)の出身。字は伯喈(はくかい)。博学で文章にすぐれ,数術や天文に詳しく,音律に精通して琴の名手であった。郎中から議郎にうつり,175年(熹平4),楊賜らと霊帝の許しをうけて六経の文字を正定し,それをみずから八分隷で書いて,46碑を太学門外にたてた。石経を見る者,筆写する者,日ごと1000余両の車がおしよせ,人々は漢字の神聖な芸術性に驚嘆したという。いわゆる熹平(きへい)石経である。しばしば災異が現れたので政治について改革意見を上奏したところ,程璜(ていこう)らのために罪に落とされた。大赦で放免された後も,身の危険を感じて長い間会稽に亡命していた。189年(中平6),司空の董卓に召されて祭酒となり,侍御史,尚書,さらに侍中,左中郎将に昇進したが,董卓が王允(おういん)に殺されたおり,罪に座して獄死した。書にたくみで草隷をよくし,〈骨気は洞達し,爽爽として神力あるが如し〉と評される。詩文を収めた《蔡中郎集》,名物制度を論じた《独断》など著述も多い。なお,匈奴の左覧王にやむなく嫁がされ,《胡笳十八拍》の作者といわれる蔡琰(文姫)は蔡邕の娘である。
執筆者:日原 利国
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中国、後漢(ごかん)の文人、学者。字(あざな)は伯喈(はくかい)。陳留(河南省)の人。博学で天文、音楽などの学問に通じ、文章にも優れ、琴(きん)の名手としても知られた。霊帝(在位168〜189)のときに郎中(ろうちゅう)となり東観で書物を校訂し、議郎となった。175年(熹平4)馬日磾(ばじつてい)らと六経(りくけい)の文字を校定し、自ら石に刻んで太学(たいがく)門外に立てた。これを熹平石経(きへいせきけい)という。のちに董卓(とうたく)に召されて左中郎となったが、卓が誅(ちゅう)されると捕らえられて獄中で死んだ。著書に『独断』『蔡中郎集』がある。詩人の蔡琰(さいえん)(文姫)は彼の娘である。
[根岸政子 2016年1月19日]
『内田泉之助著『漢詩大系4 古詩源 上』(1964・集英社)』
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…楷書の基本的点画8種が永の1字に包含されているとして,〈永〉字によって運筆法を説いたもの(図)。その来源には張旭説,智永説,蔡邕(さいよう)・王羲之説の3通りある。一般には,後漢の蔡邕が嵩山(すうざん)の石室で書を学び,神授されたと伝えられ,蔡邕から崔瑗(さいえん),張芝,鍾繇(しようよう),王羲之を経て,王羲之7代の孫,隋の智永に伝わり,彼はこれを虞世南に授けて今日に伝わったとされる。…
…印刷は文書,絵画,写真などの平面的な画像を多数複製する手段であるが,現在ではその技術は多種多様となり,印刷とは何かを定義することは困難である。
【歴史】
[源流]
ふつう印刷術は中国に始まったと考えられており,その場合の印刷術は木版に文字を彫りそれに墨を塗り,上から紙をあて〈バレン〉のようなもので文字を刷りとる方法が行われたのである。現在広く行われている活字印刷に対し,これを〈整版〉と呼んでいる。こうした印刷は唐代(618‐907)に始まったと思われるが,しかしそれ以前から印刷類似の方法が中国やオリエントで行われていた。…
…楷書の基本的点画8種が永の1字に包含されているとして,〈永〉字によって運筆法を説いたもの(図)。その来源には張旭説,智永説,蔡邕(さいよう)・王羲之説の3通りある。一般には,後漢の蔡邕が嵩山(すうざん)の石室で書を学び,神授されたと伝えられ,蔡邕から崔瑗(さいえん),張芝,鍾繇(しようよう),王羲之を経て,王羲之7代の孫,隋の智永に伝わり,彼はこれを虞世南に授けて今日に伝わったとされる。おそらく,唐代に楷書の様式が定まるにつれて考案されたものであろう。…
…中国の琴書。後漢蔡邕(さいよう)(字伯喈,132‐192)著。1巻(2巻に分けた板本もある)。古代の琴曲と作者を解説したもの。50曲の収録曲目は,歌詩五曲,十二操,九引,河間雑歌に分け,失われた4曲を除きすべて解題がほどこされている。作曲年代は太古にさかのぼるものもあるが,主として春秋戦国時代の作と伝えられるものが多く,孔子や伯牙の作も収められている。音楽的内容は不明。《鹿鳴》《将帰操》《拘幽操》などは明代以後の琴譜に同名曲が収録される。…
…中国で儒教の根本聖典である経書(けいしよ)の本文を,政府の手で石に刻したもの。儒教は中国の国教で経書は科挙の教科書でもあったから,その標準的テキストを公示する意味で古来何度か作り,太学(中央の国立大学)に立てたのである。 (1)漢石経 後漢末に経書本文に関する論争に決着をつけるため,蔡邕(さいよう)が定本を作り文字を書いて石に刻したと伝える。熹平4年(175)に起工し9年目に完成したので熹平石経といい,書体は隷書だけで書かれたので一字石経ともいう。…
※「蔡邕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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