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漢字の書体の一種。筆線の中に墨のつかない白い部分がとびとびに現れる、つまりきわめてかすれた線が、波動し、また勢いよく飛翔(ひしょう)している独特の書体をいう。紙に接触する筆の面が転折で表裏反転しており、刷毛(はけ)のような特殊な筆を用いたと想像される。唐の張懐瓘(ちょうかいかん)の著『書断』によれば、後漢(ごかん)の蔡邕(さいよう)が都洛陽(らくよう)の鴻都(こうと)の門で左官職人が堊帚(あくそう)(堊(かべ)を塗る箒(ほうき))を使っているのを見て考案した書法で、宮殿の門額の題署のためのものであったという。現存最古の例は、唐の太宗の「晋祠銘(しんしのめい)」の題額で、ほかに高宗の「大唐紀功頌(だいとうきこうしょう)」額、則天武后の「昇仙太子碑(しょうせんたいしのひ)」額などがある。皇帝自らの手になっているものの多いことが注目され、唐代以後は宮廷を中心に愛好されたと思われる。ことに「昇仙太子碑」額は、点画のところどころを鳥の形に描いており、装飾性に重点が置かれている。空海の『性霊集(しょうりょうしゅう)』巻第四の「雑書迹を奉献する状」にみえる「鳥獣飛白一巻」というのは、このような書であったものに相違ない。また、同書同巻「劉希夷(りゅうきい)が集を書して献納する表」に、「飛白の書一巻、是(こ)れ在唐の日、一たび此(こ)の体を見て試みに之を書す。……」として、自筆の飛白を嵯峨(さが)天皇に献じていることから、わが国の飛白の嚆矢(こうし)は空海であると考えられる。空海の代表的飛白の遺品には『真言七祖像』の賛(京都・東寺)の祖師の名号があり、また、京都・神護寺伝来で明治初年に盗難ののち焼失した彼の「十如是(じゅうにょぜ)」は、さらに趣味的、遊戯的な傾向を強めた飛白で書かれていた。
[尾下多美子]
漢字の書体の一種。後漢の蔡邕(さいよう)の作と伝えられ,筆画が帚(ほうき)ではいたようにかすれ,あるいは飛動しているものをいう。漢・魏のころには宮殿の題額に用いられ,東晋の王羲之,王献之らも巧みであったというが,作品は伝わらない。斉・梁時代に流行した雑体書の一種にも挙げられ,梁の蕭子雲(487-549)は蕭の字をこの体で壁書した。唐以後は主として皇帝の間に愛好された。代表的な作品に,唐の太宗の《晋祠銘》,高宗の《大唐紀功頌額》《孝敬皇帝叡徳紀額》,則天武后の《昇仙太子碑額》,近年出土した《尉遅敬徳墓誌蓋》,日本には空海の《真言七祖像》の祖師の名号,《十如是》などがある。清の陸紹曾,張燕昌が《飛白録》を著した。
執筆者:杉村 邦彦
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…日本での〈かすり〉という名称は,織り出された文様の輪郭が絣糸の乱れによって,かすれたように見えることから名づけられたとされている。中国の〈飛白〉やヨーロッパで用いられるフランス語の〈シネchiné〉(まだらの意)などの名称も,同じ理由による。しかし今日では世界共通の染織用語として,〈結ぶ〉とか〈縛る〉を意味するマレー語のイカットikatという言葉が一般的に用いられる。…
…しかし今日では,影写本は,原本に接する機会が限られてきたため,利用価値が高くなり,研究機関で作製されることが多くなった(影写本は写真に比べて筆順・筆勢などがわかりやすく,長年月の保存にたえうるという利点がある)。なお,名家の書いた文字の輪郭だけを写し取った白抜きの文字を,籠字(かごじ),双鉤字(そうこうじ),飛白(ひはく)などとよぶこともある。天皇の筆写本を宸筆,宸翰,皇族の筆写本を御筆とよんで,特別に扱うこともある。…
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