出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
平安前期の歌人。三十六歌仙の1人。閑院左大臣藤原冬嗣(ふゆつぐ)の曽孫(そうそん)、父は利基(としもと)。従三位(じゅさんみ)中納言となり、邸(やしき)が賀茂川堤近くにあったためもあって、世に堤中納言とよばれた。醍醐(だいご)天皇の寵遇(ちょうぐう)を得、従兄弟(いとこ)であり岳父であった三条右大臣藤原定方(さだかた)とは親交が厚く、紀貫之(きのつらゆき)をはじめとする当時の文化人たちの庇護(ひご)者的存在でもあった。『大和(やまと)物語』には彼を中心とするグループのエピソードがいくつも伝えられている。家集に『兼輔集』があり、『聖徳太子伝暦(でんりゃく)』は彼の撰(せん)といわれている。
人の親の心は闇(やみ)にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな
[久保木哲夫]
…聖徳太子の事績を編年体に記した伝記。藤原兼輔が,917年(延喜17)に撰したとみるのが通説であったが,近時これを疑う説もある。2巻。…
…この1編以外はすべて中古最末期までの成立とみてよかろうか。 もと独立していた短編がいつまとめられ,《堤中納言物語》と名づけられたか,その由来は皆目不明であるが,後者については,堤中納言藤原兼輔の事跡物語と読者が誤認しての名,《逢坂越えぬ権中納言》の略名《権中納言》の権を堤と誤写したことに発する名,10編の物語を包んで〈物語一つつみ〉と記しておいたことが誤られての名など,憶説めくものは数多くある。各編の順序は,流布本はほぼ四季に従って並べられているが,三手文庫本,前田家育徳財団蔵元禄本,天理図書館蔵佐佐木氏旧蔵本その他,順序がそれぞれに異なる伝本もある。…
※「藤原兼輔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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