衣帯(読み)イタイ

デジタル大辞泉 「衣帯」の意味・読み・例文・類語

い‐たい【衣帯】

衣と帯。
衣服を着、帯を結ぶこと。服装。装束。

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精選版 日本国語大辞典 「衣帯」の意味・読み・例文・類語

い‐たい【衣帯】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 身につけている帯。
    1. [初出の実例]「衣帯百廿五文に一筋買了」(出典:多聞院日記‐天文一一年(1542)閏三月二八日)
    2. [その他の文献]〔古詩十九首〕
  3. 着物と帯。転じて、装束、着衣
    1. [初出の実例]「天皇不予。太子不衣帯。日夜侍病」(出典聖徳太子伝暦(917頃か)上)
    2. [その他の文献]〔管子‐弟子職〕

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改訂新版 世界大百科事典 「衣帯」の意味・わかりやすい解説

衣帯 (えたい)

仏事の儀容的服装。僧尼の日常の服装は通常含めない。衣帯は宗・派により名称,形状,用途が異なることが多いので,ここでは共通する事項についてのみ述べる。衣帯の基本は法衣(ほうえ)(いわゆる衣(ころも))と袈裟(けさ)で,それに被(かぶ)り物,履き物,持ち物等の付属品が加わる。衣帯を着けるには,下着として通常,白小袖(しろこそで)を着用し,その上に袴(はかま)の類をはき,法衣を着け,袈裟を掛けるが,袴類を用いない衣帯もある。

裾をすぼめてくくる指貫(さしぬき)と,裾のまっすぐな切袴(きりばかま)と表袴(うえのはかま)がある。いずれも紋織の綾などで仕立て,宮廷装束のものとほぼ同じである。

もっとも一般的な法衣は,袍裳(ほうも),鈍色(どんじき),素絹(そけん),直綴(じきとつ)の4種である。(1)袍裳 法服(ほうぶく),袍服(ほうぶく)とも記し,上半身の袍と,下半身の裳とに分かれた仕立てである。袍の襟の頂点が三角形またはハート形にとがっていて,これを僧綱襟(そうごうえり)と呼ぶ。その僧綱襟を後頭部に立てて着る着装法と,背後に垂らしておく着装法とがある。また僧綱襟でない普通の襟に仕立てた略式の袍裳もある。袍裳の生地は地文(じもん)のある綾などが多く,裏地のある袷(あわせ)仕立てである。(2)鈍色 袍裳とほぼ同じ仕立てだが,単地(ひとえじ)で無文(むもん)の生地を用いる。鈍色という語は,ねずみ色または白色(2説ある)を意味するが,現在では色と無関係な形状の名称となっていて,紫色などの鈍色も用いられる。(3)素絹 上半身,下半身がひと続きに仕立てられた法衣で,横生地で裾に幅広く縫い足しをしてあるが,その裾の横脇の部分にひだを畳み重ねてあるのが特色である。生地は単で,無文が原則だが,宗派により地文のある紗(しや)なども用いる。素絹で特に丈が長く引きずるように仕立てたものを,長素絹(ながそけん)という。素絹の素は白色の意味だが,鈍色と同様に現在では形状の名称となっているので,緋色や紫色の素絹がある。(4)直綴 上半身,下半身の両部分を直接縫い合わせてあることを示した名称である。その縫い目は腰のあたりにあり,そこから下の両脇にひだが畳み重ねてある。生地は単で,無文が普通だが,これも綾や紗で地文のあるものがある。法衣の色は一般に僧階に基づいて定められた色を用いる。紫は高位,緋はさらに高位というのが普通だが,茶,緑,浅葱(あさぎ)などの上下は宗派によって違い,緋は最高だが赤はずっと低いという宗派もある。なお全員が白,黒などの同色を用いる仏事もある。

袈裟の本旨は,粗末な端裂(はぎれ)をはぎ合わせた僧衣ということなので,その精神を形に示して,数枚の裂をつないで作った一条をさらに数条ならべて縫った形をとる。そのつなぎ目の部分と四周の部分に別の裂を配したものが多く,前者を葉(よう),後者を縁(えん)と称し,縁葉に囲まれた部分を田相(でんそう)また甲(こう)と称する。なお,全部同じ裂で作った無地のものや,つなぎ目に金色,朱色などの線を配しただけのものもあり,禅系諸宗では多くこれらを用いる。袈裟の条数は,五条,七条,九条と奇数条で二十五条まである。五条と七条とでは,全体の大きさがはっきり異なる。しかし七条以上は,条数が多くなるにつれて条の幅を狭くしてあるので,総体の大きさは同じになるから,ちょっと見ただけでは違いがわからない。着装法も,五条と七条以上とでは違いがある。九条以上は,禅系諸宗以外ではあまり用いないが,用いる宗派では,条数が多いほど高位の袈裟ということに定めてある。なお条数とは別に,生地や意匠によって,衲袈裟(のうげさ),甲袈裟紋袈裟平袈裟(ひらげさ)等に分けることができる。五条袈裟は,右の脇の下から右半身を前後にまとうように着け,細帯状の威儀(いぎ)と称する付け紐で左肩と左腕に吊りとめる。なお浄土宗などでは,左肩の上に乗せるような形に着ける大五条(おおごじよう)という袈裟があり,禅系諸宗では,首に掛ける絡子(らくす)または掛絡(から)と称する五条袈裟を用いる。七条袈裟は全体の丈が長く膝の下まであり,それを左肩から左腕まで覆うように着けて右の脇の下で前に回し,修多羅(しゆたら)という紐で右胸の部分と左肩の部分を結びとめる。九条以上の袈裟もこれと同様である。七条袈裟と組み合わせて,横被(おうび)という幅広の帯状の付属品で右肩を覆う衣帯がよく用いられるが,宗派によっては横被を用いない。衲袈裟は衲衣(のうえ)とも称し,金襴や錦の生地で作った袈裟をさす。衲衣という語は,つぎはぎの衣という意味だが,現在ではもっとも立派な袈裟をさしている。衲袈裟で縁葉も含めて全部同じ生地で作ったものを皆衲衣(かいのうえ),縁葉を別の生地にしたものを切交衲衣(きりまぜのうえ)と称し,前者の方がより上位の袈裟とされる。甲袈裟は縁葉が黒無地,田相が色無地の袈裟で,その色によって,紫甲(しこう),盧甲(ろこう),青甲(しようこう)などと呼び分ける。仏事の役の上下などに従って区別することが多く,だいたいは上記の順だが,衲袈裟よりは下位とされる。紋袈裟は寺紋または家紋縦横に行列させた袈裟である。紋は白色紋がふつうで紋白袈裟(もんじろげさ)と称するが,金紋などもある。五条紋白の袈裟は,もっともよく見受けられる袈裟である。紋袈裟は,生地の色で緋,紫,茶などと上下を定める。平袈裟は無地の袈裟である。最低の僧階の人が用いるが,それとは別に,仏事の会奉行(えぶぎよう)など,進行役の人が用いることも多い。これは,実際に仏事をつとめる職衆(しきしゆう)の人々と見分けがつきやすいためと考えられる。なお,職衆が七条を着ける仏事でも,会奉行などの行事役は五条を着けるという例が多く見られる。

衣帯としての被り物には,一定の形状に作った冠帽を頭に頂くものと,無地の裂の両端を縫い合わせて輪状にした布を着装するものとがある。前者には,誌公(しこう)帽子,燕尾(えんび)帽子,水冠(すいかん)などいくつかの種類があり,主として浄土宗や禅系諸宗で用いられる。後者は,単に帽子とも,花帽子(はなのぼうし),縹(はなだ)帽子とも称し,諸宗で用いるが,これを頭上からすっぽりかぶる着装法と,襟巻のように襟の部分に掛ける着装法とある。頭上からかぶるのは特定少数の高位の僧だけに限られるが,尼のばあいは例外がある。襟に掛ける帽子も,一定の資格以上の者でないと許さない宗派が多い。これは防寒用の被服が儀容化したものなので,夏季は用いない定めになっていることが多い。なお帽子の文字は,宗派によってボウシともモウスとも発音し,一様でない。

緒太(おぶと)などの草履の類と,沓(くつ)の類とがある。草履の類は,堂外および土間または石畳の堂内で用いる。沓の類はみな浅い突っかけ形式のもので,黒塗のものを鼻高(びこう),浅沓(あさぐつ),木履(きぐつ)などと称し,金襴を張ったものを草鞋(そうかい)と称する。草鞋は通常堂上でだけ使用するが,宗派によっては高僧が堂外で使用することもある。僧階の上下などで草鞋の色を区別する時は,赤地金襴,紫地金襴のものを高位とする。

仏事の所作に必要な持ち物は別として,終始所持するものに念珠(ねんじゆ)(数珠)の類と扇の類がある。念珠は百八珠のものが正式で,宗派や仏事の種類によって形状はさまざまである。水晶珠の大型のものを装束念珠(しようぞくねんじゆ),装束数珠と呼ぶなど,種別による名称もある。扇には,畳んだ時に先端が広がっている中啓(ちゆうけい)と,中啓より先端の狭い雪洞(ぼんぼり)とあり,いずれも骨は朱塗が多い。これらと別に,ヒノキの薄板を連ねて作った檜扇(ひせん)/(ひおうぎ)もしばしば用いられる。
袈裟 →法衣
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普及版 字通 「衣帯」の読み・字形・画数・意味

【衣帯】いたい

衣服と帯。〔文選、古詩十九首、一〕相ひ去ること日に已(すで)にく 衣帶日に已に(ゆる)し

字通「衣」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の衣帯の言及

【帽子】より

…白羽二重などの幅広く長い裂地(きれじ)の両端を縫い合わせて輪状にしたもので,これを畳んで形を整え,首をとおして襟に掛ける。防寒用の被服から出発して儀礼の衣帯(えたい)となったものなので,一定の資格以下の者は使用できないとか,夏季には使用しないとか,宗派によるきまりがある。また管長その他の高位の僧が頭上からかぶる宗派もある。…

※「衣帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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