翻訳|keratosis
表皮角質層の著しい肥厚を主症状とする皮膚疾患群。このうち発赤を伴い炎症症状の顕著なものは炎症性角化症と呼ばれる。
魚鱗癬(ぎよりんせん)(さめ肌)を代表とし,多くは遺伝性を示すが,その発症機序は大部分不明で,現在国際的に統一された分類はない。おもな疾患として次のものがある。(1)尋常性魚鱗癬 生後間もなくから皮膚が乾燥し,ざらざらになり,魚鱗状を呈するもの。優性遺伝と伴性劣性遺伝の2型がある。(2)魚鱗癬様紅皮症 生下時すでにみられる全身の発赤と角質の増加が主症状である。先天性魚鱗癬,薄葉状魚鱗癬は本症とほぼ同症とされる。劣性遺伝。(3)水疱型魚鱗癬様紅皮症 前者と同様の症状のほか,水疱の形成が特徴である。優性遺伝。(4)魚鱗癬症候群 皮膚変化がいくつかの症候群の部分現象としてみられるもの。(5)紅斑角化症 発赤を伴う角質増加がおもに四肢末端から始まる疾患群。(6)掌蹠(しようせき)角化症 もっぱら手のひら,足の裏に角質の増加が現れるもの。(7)ダリエ病 角化性丘疹で,夏季増悪し悪臭を放つのが特徴。優性遺伝。(8)汗孔角化症 辺縁隆起した角質増加性環状皮疹が特徴。優性遺伝。(9)黒色表皮腫 腋窩(えきか)等,おもに皮膚のすれる部分が黒くなり,表面乳頭腫を示すもの。優性遺伝のほか,内臓の悪性腫瘍に伴うものがある。(10)毛孔性苔癬 おもに思春期の女子の上腕・大腿伸側に生ずる毛囊一致性角化性丘疹。
炎症性角化症のおもなものとしては次のものがある。(1)尋常性乾癬 円形ないし楕円形の紅斑に,厚い雲母状鱗屑(りんせつ)が固着し,銀白色を呈するのが特徴。(2)類乾癬 乾癬に似た皮疹で,粃糠(ひこう)様鱗屑を付着する。後に菌状息肉腫症に発展するものがある。(3)扁平紅色苔癬 表面光沢のある扁平な紫紅色丘疹が特徴。(4)毛孔性紅色粃糠疹 頭部,手,指背,肘頭,膝蓋等に,粃糠様鱗屑をもつ毛囊一致性角化性丘疹が多発融合し,ときに紅皮症化する。優性遺伝型で,暗順応障害のあるものがある。(5)ジベル薔薇色粃糠症 辺縁環状に鱗屑をもつ爪甲大程度の紅斑が,おもに体幹に多発する。軽度のかゆみがある。紅斑の長軸が皮膚割線方向に一致するのが特徴。青壮年に好発。4~6週間で消退。季節の変り目に多い。
角化症の多くは難治で,根本的治療法の見当たらないものがほとんどである。ただ内服療法としてレチノイドは著しい症状の改善をもたらす。外用剤としてサリチル酸ワセリン,尿素軟膏等が用いられている。
→乾癬 →苔癬
執筆者:石橋 康正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… (1)遺伝性疾患 生下時より病気の発症が運命づけられているもので,診断はできても治療は困難である。皮膚のあざや奇形,いわゆる母斑と全身異常を合併する母斑症,皮膚が魚のうろこ状を呈する魚鱗癬(ぎよりんせん)群を代表とする角化症,核酸,タンパク質,脂質,糖質代謝経路に関与する酵素の異常,欠損が証明されている種々の代謝異常症など。(2)伝染性疾患 いわゆる感染症で,ウイルス,リケッチア,クラミディア,細菌,真菌,原虫,寄生虫などによる皮膚病。…
※「角化症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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