言語地図(読み)ゲンゴチズ

デジタル大辞泉 「言語地図」の意味・読み・例文・類語

げんご‐ちず〔‐チヅ〕【言語地図】

言語または方言の地理的分布地図上に表したもの。→方言地図

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「言語地図」の意味・読み・例文・類語

げんご‐ちず‥チヅ【言語地図】

  1. 〘 名詞 〙 同一の言語、または方言の地理的分布を表わした地図。言語分布図

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「言語地図」の意味・わかりやすい解説

言語地図
げんごちず

各地で用いられることばを示した地図。「言語分布図」ともいい、4種に分類できる。(1)言語・国語の使用地域を示す地図。住民の日常語を載せるのか公用語を載せるのかで別の分布を示すし、過去と現在でも違う。(2)多くの言語にまたがって、個々の言語現象(たとえば、語順や高さアクセントの有無)とか、個々の単語(たとえば、茶、じゃがいも)の呼び名を記した地図。言語間の影響や借用が読み取れる。(3)同一言語内の方言の総合的な違いを示す地図は「方言区画図」ともよばれる。音韻、アクセント、文法語彙(ごい)のどれを重視するかで区画が違ってくる。(4)一言語内の諸方言における個々の単語や発音の違いを記した地図。「方言地図」「方言分布図」ともよばれる。この意味の言語地図では、地理的分布パターンから、過去の言語変化を読み取ることができ、これが「言語地理学」の発展に結び付いた。もっとも一般的なのは、一定の意味(例「竹馬」「凍る」)についての呼び名を●、△、↑などの記号で示した分布地図である。ほかに、ある意味の語(例「ぼたん雪」)が存在するかどうかの地図、一定の語形(例「シアサッテ」)のさす意味の違いの地図、発音(シとスの区別)、アクセント(「橋」と「箸(はし)」と「端(はし)」の高低)、文法(「する」の命令形)などの地図もつくりうる。全国的な分布図だけでなく、地方単位や小地域の分布図もつくられている。老人若者の調査結果を別の地図に描けば、共通語化や方言の変化が読み取れる。

[井上史雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「言語地図」の意味・わかりやすい解説

言語地図
げんごちず
linguistic atlas

言語地理学において,言語の個々の要素あるいは体系一部分の分布状況とその歴史的変遷を知るための手段として,調査語形を (多くは符号化して) 書入れた一枚一枚の地図,およびそれを集めた図巻をさす。すべての語形を一つ残らず書いたもの (資料〈展示〉図) を重視する立場と,いくつかの特徴に注目して材料を選択し,分類して描いた結果,なんらかの有意味な分布を示して初めて言語地図といえるとする立場がある。後者の解釈図では,試行錯誤を重ね,分布の出る地図が描かれて初めてその分類が正しかったことがわかることになる。言語地図の解釈とは,そのような有意味な分布を示す地図から,その言語現象の変遷とその要因を読取ることをいう。ほかに,世界の言語の分布図など,要素ではなく,各言語単位,各語族単位の分布を示したものなども言語地図という。一国の言語地図としては J.ジリエロンの『フランス言語地図』L'Atlas linguistique de la France (1902~10) が最初。日本にも国立国語研究所編『日本言語地図』 (6巻,66~74) がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の言語地図の言及

【言語学】より

…単語などの地域的伝播の姿を解明しようとする分野が〈言語地理学〉と呼ばれる。手法としては,たとえばあることがらをあらわす単語をある地域の多くの地点において調査し,地図(〈言語地図〉)にその分布状況をあらわし,その姿からその地域にどのような変化がどう起こったかを推定するものである。言語(方言)が互いの影響関係の下で変化してゆく姿を解明する上で大きく貢献した分野である。…

※「言語地図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android