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古語シノフ(ときにシヌヒ)は,ほめる,慕い偲ぶ意。シノヒコトは,もとは寿詞(よごと)に通じ,死者を思慕することばの意。天平神護2年(766)正月の宣命に〈志乃比己止乃書(ふみ)〉とある。生前の徳を重ねて顕彰し,系譜や行跡を誦して哀悼する古代ギリシアの〈墓前の辞〉や中国の誄(るい)にも類し,その漢字をあてる。王族,貴族のほか,民間にも行われたが,《日本書紀》の敏達天皇の14年(585)敏達没後の殯宮(もがりのみや)(埋葬まで遺骸を置く仮宮)の儀礼の記事にみえるのが初見,のちには天武殯宮の儀礼に哭泣(こつきゆう)して哀しむ発哀の礼などと並んでくり返され,王権を強化する役割をも果たした。中国風に,誄して諡(おくりな)を定めたこともある。《貞慧(じようえ)伝》(奈良時代)に漢文の誄がのこるほか,《日本後紀》大同元年(806)桓武天皇没後の〈天地の共(むた)長く,日月の共遠く〉など漢文脈を日本化した誄句は,さかのぼって《万葉集》柿本人麻呂らの挽歌や讃歌の〈シノヒ〉にも通じる類型である。
執筆者:本田 義憲
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…天平神護2年(766)正月の宣命に〈志乃比己止乃書(ふみ)〉とある。生前の徳を重ねて顕彰し,系譜や行跡を誦して哀悼する古代ギリシアの〈墓前の辞〉や中国の誄(るい)にも類し,その漢字をあてる。王族,貴族のほか,民間にも行われたが,《日本書紀》の敏達天皇の14年(585)敏達没後の殯宮(もがりのみや)(埋葬まで遺骸を置く仮宮)の儀礼の記事にみえるのが初見,のちには天武殯宮の儀礼に哭泣(こつきゆう)して哀しむ発哀の礼などと並んでくり返され,王権を強化する役割をも果たした。…
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