( 1 )古くは帝王に対してのみ用いられたことは、「史記‐淮南衡山列伝」や、前漢高祖の末子淮南厲王長の例によっても知ることができる。
( 2 )日本でももっぱら天皇の出御・入御に際して行なわれ、やや降って陪膳の折にも行なわれた(「枕草子‐二三」)が、次第に高貴な卿相公達もまた、私行の時に密かに行なうようになった(「江談抄‐一」)。
( 3 )発声者の順位や作法は細かく定められていた。なお、天皇の召しを受けた時などの発声は、「称唯(いしょう)」と言う。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
先払の声。〈けいひち〉ともいう。天皇が公式の席で,着座,起座のさい,行幸時に殿舎等の出入りのさい,天皇に食膳を供えるさいなどに,まわりをいましめ,先払をするため側近者の発する声をいう。古代中国皇帝が外出時に,道行く人を止め,また道を清めさせた風習が日本に移入されたもの。《枕草子》には,天皇に昼の食膳を供する蔵人(くろうど)が,足音高く,〈をし,をし〉といったとあり,ほかに〈アウ,アウ〉(《安斎随筆》)とも知られる。古くは声高にいい,後代では微音でいうふうにかわり,言葉も,出御のときは〈ケイーヒ〉,還御のときは〈ケイヒー〉と唱えた。行幸のさいの警蹕役は近衛の将が行うが,尊長に敬意をはらって上皇等の御所辺では警蹕をやめることがある。天皇に準じて高位の者も行うようになり,また神事のさいも,神降,神昇,奥殿の開扉,閉扉などにも行われた。現行の神事のさいには〈オー,シー〉などと唱えている。
執筆者:平林 盛得
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
先払いのこと。元来、中国で、天子が出入するとき、先払いの者があたりに声をかけて道筋の人々を静めることをいった。出るときには「警」(気をつけよ)、入るときには「蹕」(止まれ)と声をかけて制止した。転じて、天皇や貴人が出入する際、先払いが声をかけてあたりを静めることをいう。また、供御(くご)(天皇の食物)を奉るとき、神供(神前への供物)を奉るとき、神楽(かぐら)を奏するときなどにも行われ、「おお」「しし」「おし」「おしおし」などと声をかける。
[藤井教公]
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