869年(貞観11)5月26日(ユリウス暦7月9日、グレゴリオ暦7月13日)の夜に東北地方の太平洋沖で発生した巨大地震。貞観三陸地震ともいわれる。901年(延喜1)に成立した歴史書である『日本三代実録』によれば、この日、陸奥国(むつのくに)で大地震があり、強い揺れで立つこともできず、倒れた家屋の下敷きになって圧死した者や、地割れに飲み込まれた者もいた。また、城下に大津波が押し寄せ、1000人ほどが溺死(できし)し、後には田畑も人々の財産もほとんど残らなかったという。ここで陸奥国の城とは、多賀(たが)城(宮城県多賀城市)と解釈するのが一般的である。
津波堆積(たいせき)物の分布から推定される仙台平野や石巻(いしのまき)平野での津波の遡上(そじょう)範囲は、当時の海岸から最大で3~4キロメートルも内陸に及び、これは2011年(平成23)東北地方太平洋沖地震による津波の遡上範囲と近い。福島県北部ではこの地震に伴う海岸の沈降が確認されており、地殻変動の面からも2011年東北地方太平洋沖地震と類似点がある。津波堆積物から復元された浸水範囲を基にした計算からは、震源域は仙台沖を含む日本海溝沿いで2011年東北地方太平洋沖地震のそれと一部が重なっていたと考えられ、地震の規模は少なくともモーメントマグニチュード(MW)8.6と推定されている。津波堆積物などの研究からは、貞観地震と比較される巨大地震の繰り返し間隔は500~800年と推定され、1454年(享徳(きょうとく)3)11月23日(ユリウス暦12月12日、グレゴリオ暦12月21日)に発生した享徳地震が2011年東北地方太平洋沖地震の一つ前の事例にあたるとする考えもある。
[藤原 治 2017年6月20日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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