質量保存の法則(読み)シツリョウホゾンノホウソク(英語表記)law of conservation of mass

デジタル大辞泉 「質量保存の法則」の意味・読み・例文・類語

しつりょうほぞん‐の‐ほうそく〔シツリヤウホゾン‐ハフソク〕【質量保存の法則】

化学反応の前と後で、反応にあずかる物質質量総和は変わらないという法則。1774年ごろ、ラボアジェ発見。質量不変の法則。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「質量保存の法則」の意味・わかりやすい解説

質量保存の法則
しつりょうほぞんのほうそく
law of conservation of mass

化学反応においては、反応前の物質の全質量と、反応後に生成した物質の全質量とは等しいという法則。質量不変の法則ともよばれる。1774年、フランスのラボアジエによって発見された。歴史的には、化学反応というのは、初めにあった物質が、その構成要素(原子)が組み換えを行い、姿・形を変えた新物質をつくることであり、けっして無から有を生ずるものではないことを明らかにしたことに意味がある。今日では、全宇宙的にみて質量保存の法則が成り立つと拡張してもよい。有限の資源をどのように有効に用いるかという理論基盤である。

 この理論は、1908年にドイツランドルト、1909年にハンガリーエートベシュによって厳密に検討され確立した。しかし、ドイツのA・アインシュタインは、相対性理論のなかで、エネルギーが質量と結び付くことをEmc2の形で明らかにしたので、質量保存の法則は、エネルギーの出入り考慮しなければならない。しかし化学反応においては、エネルギーの出入量は全質量に対して無視できるほど小さく、この法則が成立すると考えてよい。事実、ランドルトの実験で、質量変化が2×10-7~10-8の誤差範囲で成立することが示されている。「保存」の概念は、対象として考えている「系」を設定しなければならない。化学反応を行う場合には、一定量の物質を一定の器具の中で反応させており、質量に着目する場合、器具外の物質を考慮に入れてはならない。この場合「一定の器具」が「系」にあたり、たとえばフラスコがそれにあたる。もし、机の上にあるごみが混入したら、質量保存が成り立たないことは自明である。したがって、全宇宙的に保存の概念を考えるのは、系が大きいだけに、種々の議論をよぶことになる。

[下沢 隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「質量保存の法則」の意味・わかりやすい解説

質量保存の法則 (しつりょうほぞんのほうそく)
law of conservation of mass

質量不変の法則ともいう。化学反応の際には反応する物質の全質量と生成する物質の全質量はまったく等しく,反応の前後において物質の全質量は変わらないという法則である。1774年A.L.ラボアジエにより発見され,〈定比例の法則〉や〈倍数比例の法則〉とともに,原子の存在を仮定する実験的基礎になった。1908年ランドルトHans Heinrich Landolt(1831-1910),09年R.vonエトベシュらにより精密な実験で検討され,化学反応に関するかぎりつねに成り立つことが証明された。物質は一定の質量をもつ原子からできていて,化学反応は単に原子の組合せの変化であるということが明らかになった現在では当然と考えられる。特殊相対性理論によるとエネルギーは質量と等価であり,原子核反応のように膨大なエネルギーの出入りを伴う反応では,エネルギー変化分も考慮しなければこの法則は成り立たない。もちろん普通の化学反応でのエネルギーの出入りによる質量変化は全体の物質の量に比べれば完全に無視できるものである。
相対性理論
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百科事典マイペディア 「質量保存の法則」の意味・わかりやすい解説

質量保存の法則【しつりょうほぞんのほうそく】

質量不変の法則とも。化学反応の前後において,反応物質の全質量と生成物質の全質量とは等しくて変化しないという法則。1774年ラボアジエが発見。後にランドルフ,エトベシュらにより実験的に正しいことが確かめられた。アインシュタインの特殊相対性理論によるとエネルギーと質量は等価であるため,核反応のような膨大なエネルギーの出入りを伴うものではエネルギーの変化分を考慮に入れなければこの法則は成り立たないが,通常の化学反応では,この影響は無視できる。→保存則
→関連項目化学方程式質量

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「質量保存の法則」の意味・わかりやすい解説

質量保存の法則
しつりょうほぞんのほうそく
law of conservation of mass

化学の基本法則の1つ。化学反応の前後において,化学反応にあずかる物質の総質量は反応の前後において不変であるという法則。 1774年 A. L.ラボアジエによって発見され,20世紀初め H.ランドルト,R.エートベッシュらによって実験的に検証された。アインシュタインの相対性理論によれば,エネルギー E と質量 m との間に Emc2 ( c は真空中の光速度) の関係があり,化学反応に伴うエネルギーの出入りは必ず質量の変化を伴うため,この法則は厳密には成立しない。しかし,普通の化学反応では質量の変化が微量であり,実用上では近似則として成立すると考えてよい。しかし,エネルギー変化の大きな原子核反応ではそれに伴う質量変化も大きく,この法則は成立しない。

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