長野・静岡県境に位置し,赤石山脈の名称のもととなった同山脈南部の山。標高3120m。明治初期まで大河原ノ岳と呼ばれていたが,内務省地理局が南斜面の赤色ケイ岩からなる沢を遡行し,これに赤石沢と命名したことに由来する。赤石山脈の王者にふさわしい重量感のある山容で,赤石岳,小赤石岳の2峰からなる。両峰の東斜面には,約2万年前の氷期に形成されたと考えられるカール地形がみられ,標高2900mのカール底には晩夏まで雪田が残る。山頂付近は森林限界より約600mも突出しているので,岩石が激しい風化作用によって破砕され,累々たる巨岩塊が散乱する。山頂から南西方向の百間平にかけての緩やかな山稜には,雪食作用によるみごとな地形,例えば稜線が平行に並ぶ二重山稜や,まわりより遅くまで雪の残る舟窪地形がみられる。頂上からは,赤石山脈の山々,遠く木曾,飛驒山脈,御嶽山を望むことができる。近年,登山道が整備されたとはいえ,長野県側の小渋川,静岡県側の大井川上流からのルートでもかなりの労力を要する。
執筆者:鈴木 郁夫
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長野・静岡県境に沿って走る赤石山脈(南アルプス)の主峰の一つ。標高3121メートル。南アルプス国立公園内にあり、頂上一帯は特別保護地区。主稜(しゅりょう)をつくる岩石は中生代の砂岩で、凝灰岩を挟み赤石帯よばれる。東側は静岡県大井川上流の渓谷になり、西側は長野県の天竜川支流遠山(とおやま)川と小渋(こしぶ)川の渓谷である。山容はみごとな高峰をなし、頂上からの展望が優れている。所々に赤色の珪岩(けいがん)が露出し、このため赤石の地名が生じたともいわれるが、実際は南麓(なんろく)に源を発する沢に、赤色の岩が露出しているところから赤石沢と名づけ、これから山名が生じた。山頂は緩やかな平坦(へいたん)地をなし、頂上には祠(ほこら)がある。また、東斜面には氷河によるカール状地形がある。山頂には避難小屋があるが、山が深く、登山には最低2泊が必要となるので登山者は少ない。登山口は、静岡県側の椹島(さわらじま)、伊那側の小渋温泉からが一般的である。なお、伊那側からの登山は、小渋川を繰り返し渡渉(としょう)するため、技術と経験が必要。
[小林寛義]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
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