日本大百科全書(ニッポニカ) 「南アルプス国立公園」の意味・わかりやすい解説
南アルプス国立公園
みなみあるぷすこくりつこうえん
山梨、長野、静岡の3県にまたがる山岳を主とした国立公園。1964年(昭和39)指定、1976年大井川源流部を削除。面積357.52平方キロメートル。日本アルプスの一つとして北アルプスと並び称せられるアルピニストのメッカとして名高い。赤石山脈(あかいしさんみゃく)がその主要部を占め、北は鋸山(のこぎりやま)(2685メートル)から南は光(てかり)岳(2592メートル)まで南北約60キロメートルに及ぶ。その間に富士山に次ぐ高峰北岳(3193メートル)をはじめ仙丈(せんじょう)ヶ岳(3033メートル)、塩見岳(3047メートル)、荒川岳(3141メートル)、赤石岳(3121メートル)、聖(ひじり)岳(3013メートル)など3000メートルを超す高峰が並び、また北東部に支脈をなす鳳凰三山(ほうおうさんざん)(最高2841メートル)も含まれる。北アルプスより南に位置するため森林限界が高く、野呂(のろ)川、大井川の峡谷部から稜線(りょうせん)近くまで原生林が密生しており、その上部にかつての氷河の名残(なごり)であるカール(圏谷)をもった山稜がそびえており、ライチョウ、カモシカなどの特別天然記念物も多く、高山植物のチョウノスケソウもみられる。主要峰への登山は、以前は山が深く、山麓(さんろく)まで達するのが容易でなかったため、登山家に限られる傾向があったが、いまでは道路の整備も進み、場所によっては一般登山客の入山も可能になった。登山口は甲府盆地側からは夜叉神(やしゃじん)峠越え、韮崎(にらさき)から甲斐駒(かいこま)ヶ岳、鳳凰三山経由、伊那谷(いなだに)側からは三峰(みぶ)川沿いに北沢峠に至るコース、また小渋(こしぶ)川沿いに塩見岳、荒川岳に至るもの、静岡側は大井川上流部から聖岳、赤石岳に入る経路などがある。しかし、南アルプス林道の開通などで森林破壊や道路の崩壊をおこし、最近は自然や景勝美の保護が叫ばれるに至っている。
[横田忠夫]