踏車(読み)ふみぐるま(英語表記)treadwheel; treadmill

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

(1) 1818年,イギリスの技師ウィリアム・キュービットが,囚人に有益な労働をさせる手段として考案した懲罰のための器械。永久階段 everlasting staircaseとも呼ばれる。大きな円筒形の装置で,通常は円筒の外周の鉄枠に沿って木製の踏み板がついている。40人もの囚人が同時に乗れるものもあった。踏車が回り始めると,囚人は間断なく踏み板を踏み続けなければならない。踏車で得られた動力は一般にトウモロコシの製粉や水の汲み上げに使われたが,なんの用途もない純然たる懲罰として用いられることもあった。イギリスでの刑罰としては 1898年刑務所法により廃止された。
(2) 人力の簡易揚水機。羽根車と鞘箱からできており,羽根板を順次踏みながら羽根車を回すと,鞘箱と羽根の間の水が,鞘箱の囲いの中を押し上げられるようになっている。江戸時代初期に大坂の京屋七兵衛と京屋清兵衛が考案したといわれ,農村で水田の水の汲み上げに広く使われた。東南アジアの農村では今日も鞘箱のない踏車を使っている。(→揚水機

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

人力揚水機。江戸時代に日本で発明された揚水機で,羽根車を足で踏んで回転させ,水を順次押しあげるものである。人の体重および踏力を利用するので人力用として最も有効な揚水機であったが,揚程は低い。
→関連項目竜骨車

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

もっぱら水田の灌漑に用いられた日本独特の人力揚水機。回転する羽根車で水を揚げる。水を揚げる側と反対の側に回ってくる羽根車を,人が足で押し下げつつ回したので,この名がつけられた。固定して設置するのでなく,必要なところへ随時運んで使うことができる。一般に,水路より田面までの高さが約1m以内の揚水に用いられたが,さらに高い水田へは,2台,3台と連ねて使うこともあった。また,30cm程度の揚程のところで使う小型の手回し型もあった。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 足踏式の小形の水車。灌漑・揚水・排水に用いる。
※地方凡例録(1794)九「踏車とて、小き水車の様にして、羽を柄杓口に入田の水口へ移す」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版の解説

江戸前期以降,低所から高所用水を汲みあげた灌漑用具
水車と似ているが,水力で動かすのではなく足で踏んで車を回し水を汲み上げた。寛文年間(1661〜73)に作られ,江戸後期には従来の竜骨車に代わった。西日本では大正・昭和まで使用された。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典内の踏車の言及

【水車】より

…【冨岡 倍雄】
[日本]
 日本での水車の存在は,文献上は中世中ごろの京都近郊,大堰(おおい)川,宇治川の例にまでさかのぼるが,日本の水田灌漑は,一般に用水路によるか簡単な堰堤を設けることで容易に行えるので,水車による揚水に依存する度合は低かった。臨時的に用いる人力による揚水機にしても,17世紀に使用された竜骨車は製造がむずかしく普及しなかったし,代わって18世紀に登場した踏車も新たに用水路を作ることが困難な河川下流の干拓地や新田地帯で普及したにとどまる。総じて水車の利用は灌漑よりは他の用途で伸びた。…

【揚水機】より

…井戸の上に滑車をつるして手で巻き上げる〈つるべ〉がこれに続く。そして,といまたは筒を鎖上に並べてくみ上げる竜骨車タイプのもの(人力で動かす場合は踏車となる),さらに車輪の円周上におけまたは筒をとりつけて回転する筒車(ノーリア)タイプのものなどが現れた。これらの揚水機の動力源は,時代とともに,人力,畜力から水車や風車,やがて蒸気機関,電力へと移行していった。…

※「踏車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

オーバーシュート

感染症の爆発的な感染拡大を指す。語源は、「(目標を)通り越す」「(飛行機などが停止位置を)行き過ぎる」という意味の英語の動詞「overshoot」。2019年12月に発生した新型コロナウイルスに関して...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android