軸受には大別して,ころがり軸受とすべり軸受とがある。ころがり軸受の球などの材料は軸受鋼が用いられ,熱処理して硬くして使用する。これに対して,すべり軸受は比較的軟らかい非鉄合金で作られる。この材料が軸受合金である。すべり軸受は軸と接触しながら高速で互いにすべっており,接触圧力に耐え,摩擦係数が小さくて,耐摩耗性がよく,軸とよくなじみ,しかも焼き付かず,摩耗粉や異物が入りこんだ場合には素地金属の中に埋没させ,潤滑油とよくなじむなどの軸受性能を発揮するものでなければならない。多くの場合,軸受用合金をそのまま軸受とすることはなく,鋼などの裏金の上に鋳造などによって付けて,さらにそれをじょうぶなケースに入れた状態で使用される。また裏金に付けるときに異なる材料を2層に付けるものもあるなど,材料の選択とともに軸受の設計と製造にくふうがこらされている。上記のようなさまざまの要求を満たすために,軟らかい部分と硬い部分が混在している組織であるものが多い。
スズ-鉛系の合金にはホワイトメタル,あるいはバビットメタルと呼ばれるものがあり,小型の機械から大型のタービンに至る広い範囲で使用されていて,すべり軸受用の代表的な合金である。アンチモンSbを10%前後含み,残りが大部分スズであるものから,大部分鉛であるものまで,一連の組成のものがある。銅のなかに鉛を20~40%ほど分散させたものはケルメットと呼ばれている。また銅合金には古くから砲金として知られているものがあり,これは銅-スズの合金で,さらに鉛を含んでいる。また,リン青銅,鉛青銅も使用される。アルミニウム合金にはおもにスズを含むものがあり,亜鉛合金のダイカストも使用されている。また,含油軸受は鉄あるいは銅合金の焼結体であって,焼結によってできた空孔に油を含ませ,さらに黒鉛,鉛などを分散させたものである。
執筆者:大久保 忠恒
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回転する軸を固定した面で支持する平軸受に使用される合金。熱伝導性がよく、熱膨張率が小さく、圧縮強さ、高温硬さなどの大きいことが要求される。長時間使用に伴い摩耗するので定期的に点検、調整、交換する必要がある。この種の合金は鋳造材と焼結材に分類される。鋳造材は古くから使用されているもので、硬質母相にきわめて軟らかい相が分散している。その代表例はホワイトメタルと称される鉛、アンチモン、ビスマス、スズ、カドミウム、亜鉛などを含む低融点の白色合金(バビットメタルとよばれるものがその一例)である。そのほか鉛を25~40%含む銅‐鉛鋳物や砲金(亜鉛1~9%、スズ10%の銅合金)もよく用いられる。比較的近年になって用いられるようになった軸受に含油型焼結材がある。これは青銅(スズ約10%含有銅合金)粉末あるいは鉄(炭素約3%含有)粉末を焼き固め、その空隔部に潤滑油を15~30体積%しみ込ませたものである。その強度も比較的高く、油を注ぎ足す必要がないので、給油困難な場所、油の飛散を避ける必要のある場所などに使用される。
[及川 洪]
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