軸受合金(読み)じくうけごうきん(英語表記)bearing metal
antifriction metal

精選版 日本国語大辞典 「軸受合金」の意味・読み・例文・類語

じくうけ‐ごうきん ヂクうけガフキン【軸受合金】

〘名〙 軸受に使われる合金荷重高温度に耐え、軸となじみやすくかつ耐摩耗性が大きいので、摩擦熱を放散させるため熱伝導性が高い。ホワイト‐メタル砲金など。

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デジタル大辞泉 「軸受合金」の意味・読み・例文・類語

じくうけ‐ごうきん〔ヂクうけガフキン〕【軸受(け)合金】

平軸受けに用いられる合金。耐磨耗性が大きく熱伝導性の高いホワイトメタルなど。

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改訂新版 世界大百科事典 「軸受合金」の意味・わかりやすい解説

軸受合金 (じくうけごうきん)
bearing metal
antifriction metal

軸受には大別して,ころがり軸受とすべり軸受とがある。ころがり軸受の球などの材料は軸受鋼が用いられ,熱処理して硬くして使用する。これに対して,すべり軸受は比較的軟らかい非鉄合金で作られる。この材料が軸受合金である。すべり軸受は軸と接触しながら高速で互いにすべっており,接触圧力に耐え,摩擦係数が小さくて,耐摩耗性がよく,軸とよくなじみ,しかも焼き付かず,摩耗粉異物が入りこんだ場合には素地金属の中に埋没させ,潤滑油とよくなじむなどの軸受性能を発揮するものでなければならない。多くの場合,軸受用合金をそのまま軸受とすることはなく,鋼などの裏金の上に鋳造などによって付けて,さらにそれをじょうぶなケースに入れた状態で使用される。また裏金に付けるときに異なる材料を2層に付けるものもあるなど,材料の選択とともに軸受の設計と製造にくふうがこらされている。上記のようなさまざまの要求を満たすために,軟らかい部分と硬い部分が混在している組織であるものが多い。

 スズ-鉛系の合金にはホワイトメタル,あるいはバビットメタルと呼ばれるものがあり,小型の機械から大型のタービンに至る広い範囲で使用されていて,すべり軸受用の代表的な合金である。アンチモンSbを10%前後含み,残りが大部分スズであるものから,大部分鉛であるものまで,一連の組成のものがある。銅のなかに鉛を20~40%ほど分散させたものはケルメットと呼ばれている。また銅合金には古くから砲金として知られているものがあり,これは銅-スズの合金で,さらに鉛を含んでいる。また,リン青銅鉛青銅も使用される。アルミニウム合金にはおもにスズを含むものがあり,亜鉛合金ダイカストも使用されている。また,含油軸受は鉄あるいは銅合金の焼結体であって,焼結によってできた空孔に油を含ませ,さらに黒鉛,鉛などを分散させたものである。
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百科事典マイペディア 「軸受合金」の意味・わかりやすい解説

軸受合金【じくうけごうきん】

すべり軸受に用いる合金。耐摩耗性が大きく,荷重と衝撃振動に耐える強度・粘性をもち,摩擦係数が小で,摩擦熱を放散するに足る熱伝導性などが要件。荷重・回転速度など使用個所の条件に応じ種々の合金が選択されるが,おもなものに,銅系では砲金ケルメットなど,スズ系ではバビットメタルなどがあり,スズ・鉛系ではホワイトメタルと総称,鋼・砲金の台金に内張りして用いる。耐食性を要する場合はモネルメタルなどを使用する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「軸受合金」の意味・わかりやすい解説

軸受合金
じくうけごうきん
bearing metals

回転する軸を固定した面で支持する平軸受に使用される合金。熱伝導性がよく、熱膨張率が小さく、圧縮強さ、高温硬さなどの大きいことが要求される。長時間使用に伴い摩耗するので定期的に点検、調整、交換する必要がある。この種の合金は鋳造材と焼結材に分類される。鋳造材は古くから使用されているもので、硬質母相にきわめて軟らかい相が分散している。その代表例はホワイトメタルと称される鉛、アンチモン、ビスマス、スズ、カドミウム、亜鉛などを含む低融点の白色合金(バビットメタルとよばれるものがその一例)である。そのほか鉛を25~40%含む銅‐鉛鋳物や砲金(亜鉛1~9%、スズ10%の銅合金)もよく用いられる。比較的近年になって用いられるようになった軸受に含油型焼結材がある。これは青銅(スズ約10%含有銅合金)粉末あるいは鉄(炭素約3%含有)粉末を焼き固め、その空隔部に潤滑油を15~30体積%しみ込ませたものである。その強度も比較的高く、油を注ぎ足す必要がないので、給油困難な場所、油の飛散を避ける必要のある場所などに使用される。

[及川 洪]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軸受合金」の意味・わかりやすい解説

軸受合金
じくうけごうきん
bearing metal

機械の回転軸の支持合金材料。荷重に耐え,軸とよくなじみ,油もちがよく,潤滑油による腐食がなく,摩擦発熱が少いことを条件とする。組織は一般に軟らかい地に硬い粗大な結晶粒の分布したものがよい。軟らかい地が多少摩耗でへこむために油もちがよくなり,荷重を受ける硬い結晶粒と軸の間をよく潤滑するためである。材料としては銅系 (ケルメット) ,スズ系 (バビットメタル) ,鉛系の合金が主流であるが,カドミウム系,亜鉛系,アルミニウム合金も使われる。鉛,スズなど低融点金属系の軸受合金はホワイトメタルと総称される。このほか注油を要しない含油軸受や鉄系の軸受 (軸受鋼) もある。鉛系合金の軸受はやや少くなっている。最近は粉末冶金法で硬質の材料を軟質金属地に分散させたものも製造使用されている (→複合金属材料。粉末冶金) 。

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