日本大百科全書(ニッポニカ) 「追加法」の意味・わかりやすい解説
追加法
ついかほう
御成敗式目(ごせいばいしきもく)に追加された法の意。最狭義には、御成敗式目に「追加」として書き継がれた三十余箇条を指すが、それ以外に鎌倉・室町両幕府によって発せられた単行法令の類を指すこともあり、日本史学界の慣習的な用語としては、「追加集」と呼ばれるテクスト群に収録されたものや、その他さまざまな逸文から復元された単行法令の類を、広く「追加」ないし「追加法」と呼びならわしている。
追加集には、鎌倉幕府の政務処理上の方針決定や具体的な判断例、奉行人や六波羅探題(ろくはらたんだい)などに宛てられた指示命令などが幅広く採録されている。その原資料は、奉行人たちがそれぞれに業務上接した情報を手控えとして遺し、爾後の参照のために蓄積したものであるが、採録の範囲は網羅的でなく、標準化されてもいない。それらを基として「追加」の組織的な集成作業が行われたのは南北朝期以降のことであり、その結果、室町幕府のもとでは、「追加」を関連分野ごとに類別編纂した『新編追加』など、或る程度標準化された「追加集」が奉行人の実務上の参照に供されていたと推測される。
[新田一郎]
『佐藤進一・池内義資編『中世法制史料集』第1巻・第2巻(1955、1957・岩波書店)』▽『笠松宏至著『日本中世法史論』(1979・東京大学出版会)』▽『石井進・石母田正他編『中世政治社会思想 上』(2001・岩波書店)』