日本大百科全書(ニッポニカ) 「逆二乗法則」の意味・わかりやすい解説
逆二乗法則
ぎゃくじじょうほうそく
二つの物体が互いに及ぼし合う力の法則の一つで、力が物体間の距離の2乗に反比例する(すなわち逆二乗に比例する)大きさをもち、2物体を結ぶ直線に沿う方向をもつことをいう。これは遠隔作用力である。二つの質量の間に働く万有引力、二つの電荷の間に働くクーロン力は、この法則に従う。前者は引力であり、後者は電荷が同種か異種かに応じて斥力または引力となる。一方の物体が点Oに静止しているとき、他方の物体mは空間において逆二乗法則に従う力を受けるので、その空間には逆二乗法則に従う力の場があるという。これは保存力の場であって、ポテンシャルはOからの距離に逆比例する。また、中心力の場であるため、mの運動は面積速度一定の法則(ケプラーの第二法則)に従う。mの軌道は円錐(えんすい)曲線で、力が斥力の場合、Oを外焦点とする双曲線となる。引力の場合には、mの全エネルギーがOから離れて無限遠まで飛んでいくのに十分な大きさでなければ軌道はOを一つの焦点とする楕円(だえん)となり、エネルギーが十分に大きければOを内焦点とする双曲線となる。いずれの場合にも離心率eの2乗と1の差はmの角運動量(あるいは面積速度)の2乗とエネルギーの積に比例し、Oにもっとも近づく点(近日点)のOからの距離を|1-e|aで与えるa(楕円軌道においては長半径)は全エネルギーの絶対値に反比例する。原子内部で原子核と電子の間、電子と電子の間に働く力も、逆二乗法則に従うクーロン力が主であるが、ここでは運動は量子力学によって決定しなければならない。
[江沢 洋]
『江沢洋著『物理は自由だ1 力学』改訂版(2004・日本評論社)』▽『江沢洋著『物理は自由だ2 静電磁場の物理』(2004・日本評論社)』