日本大百科全書(ニッポニカ) 「那智勝浦」の意味・わかりやすい解説
那智勝浦(町)
なちかつうら
和歌山県南東部、東牟婁(ひがしむろ)郡の町。1955年(昭和30)勝浦、那智の2町、宇久井(うぐい)、色川(いろかわ)の2村が合併して成立。1960年下里(しもさと)町、太田村を編入。太地(たいじ)町を挟んで北から宇久井、勝浦、下里、浦神(うらがみ)に至る熊野灘(くまのなだ)沿岸、大雲取(おおくもとり)山から那智山を経て丹敷浦(にしきうら)に注ぐ那智川流域、色川から下里に至る太田川に沿う山間部の3地域からなる。宇久井も勝浦も陸繋島(りくけいとう)に囲まれた良港で、勝浦港はマグロ漁業の根拠地。また勝浦、湯川の両温泉があり、海岸風景にも恵まれ、熊野観光の基地となっている。太田川河口の下里と玉浦(たまのうら)湾の浦神は漁村。那智は熊野那智大社の門前町で、女人高野(にょにんこうや)の妙法山(みょうほうざん)阿弥陀寺も近く、補陀洛山寺(ふだらくさんじ)のある浜ノ宮は海水浴でにぎわう。太田川上流の色川は落人(おちゅうど)伝説のある秘境で、銘茶の産地。2004年(平成16)には熊野那智大社をはじめ、青岸渡寺、那智大滝などが世界遺産(文化遺産)に登録されている。那智の田楽(国指定重要無形民俗文化財)は2012年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録された。海岸に沿う熊野古道に並行してJR紀勢本線(きのくに線)と国道42号が走り、那智勝浦新宮道路(那智勝浦インターチェンジ)が通る。宇久井には休暇村南紀勝浦がある。勝浦港外に点在する奇岩などを楽しむ紀ノ松島めぐりの遊覧船もある。面積183.31平方キロメートル(境界は一部未定)、人口1万4137(2020)。
[小池洋一]
『『那智勝浦町史』全7冊(1976~1980・那智勝浦町)』