和歌山県那智勝浦町の北東部、那智川上流の
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和歌山県南東部,東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町にある山塊。熊野三山の一つである熊野那智大社(那智山権現)があり,那智山はこの大社の名称でもある。大雲取山(966m)を最高に,光ヶ峰(686m),妙法山(750m),烏帽子(えぼし)山(910m)などを含む那智川上流一帯の山塊で,表面はかなり浸食が進んで壮年期的な山地となり,年間降水量は3500mmを超える多雨地帯である。これが那智滝の豊富な水源をなし,樹種300余種におよぶという,暖地性広葉樹を主とするうっそうたる原始林に覆われる。またこの那智原始林(天)はシダ植物の多いことでも知られる。那智四十八滝や熊野古道と合わせて観光資源ともなっており,全山が吉野熊野国立公園に含まれる。
執筆者:重見 之雄
熊野の地を根の国・常世(とこよ)国とみる信仰にもとづき,那智山には古くから多数の修行者が入山し,修験道が成立するに及んで,その拠点となった。熊野三山のなかでも特異な位置を占め,那智滝を中心として信仰が展開してきた点や,熊野那智大社にまつられる熊野夫須美(ふすみ)大神が万物生成をつかさどる産霊の転化した神であり,その本地が千手観音とされたことから観音の補陀落(ふだらく)浄土(補陀落山)とされてきた点が注目される。滝が重要な位置を占めてきたことは,四十八滝と称されるごとく多数の滝を有し,那智滝を神格化した飛滝(ひろう)権現をまつることや,那智山組織が東西の執行を頂点として衆徒,滝衆,行人などで構成されるなかで,滝衆が重要な地位を占めるとともに,東の執行を滝本執行と称してきたことでも知りうる。また浄蔵,応照,仲算に代表される那智千日修行は滝修行を中心とするものである。
一方,那智山を補陀落浄土とみなしたことから,那智山権現の供僧寺であった青岸渡(せいがんと)寺が西国三十三所観音巡礼(西国三十三所)の第1番札所とされ,また那智の浜ノ宮から海上に船出して補陀落浄土に往生しようという補陀落渡海も行われ,補陀洛山寺の住僧をはじめ,渡海者が輩出した。
→熊野大社
執筆者:宮本 袈裟雄
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…南方海上にあるという観音の浄土,補陀落世界へ往生しようとする信仰により,舟に乗って熊野那智山や四国足摺岬,室戸岬などから出帆すること。信仰のためとはいいながら,実在かどうか定かでない補陀落(インド南部にあると伝えられるPotalakaの音訳)に向かって決死の船出をするふしぎな宗教現象なので,古来なぞとされている。…
…熊野那智山の神職社僧として栄えた豪族で,代々那智実報院(実方院)を本拠とした。その祖は藤原実方中将といわれ,その子,僧泰救以来の熊野別当家の一門に属し,法橋範永を氏の祖とする。…
※「那智山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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