郡上一揆(読み)ぐじょういっき

百科事典マイペディア 「郡上一揆」の意味・わかりやすい解説

郡上一揆【ぐじょういっき】

江戸時代,美濃(みの)国で起きた一揆。延宝(えんぽう)年間(1673年−1681年)の一揆は藩の年貢(ねんぐ)増徴に反対して起きたもので,藩内でこの政策をよしとしない国家老が暗殺されると聞いた百姓らはその屋敷を守護するなどの事態に至った。1683年に藩主遠藤氏が帰国して両派とも処分された。宝暦(ほうれき)年間(1751年−1764年)の一揆もまた年貢の増徴策として実施されていた検見取(けみどり)などに反対するもので,1754年一揆勢は諸課役の廃止を求める16ヵ条を提示した。藩はいったん受けるが,幕府を通じて庄屋(しょうや)層に検見取を承知させた。百姓は再び一揆を結び,また老中(ろうじゅう)酒井忠寄駕籠訴(かごそ)を行うなどした。この間,立(たち)百姓と寝(ね)百姓(脱落者など),杉本派・上村派の分裂などがあった。1758年ようやく幕府の裁許が出され,藩主金森頼錦(よりかね)が領知没収のほか,老中・若年寄大目付(おおめつけ)・勘定奉行らの役義取上げなどの処分があり,一揆側は13人が処刑されている。
→関連項目郡上藩

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改訂新版 世界大百科事典 「郡上一揆」の意味・わかりやすい解説

郡上一揆 (ぐじょういっき)

郡上藩領でおきた一揆としては,延宝期の家中騒動のからんだ一揆と,宝暦期の一揆とがあるが,ふつうには後者をさす。

 藩主金森頼錦(よりかね)治政下の1754年(宝暦4),年貢増徴のために採用しようとしていた検見取(けみどり)などに反対する一揆が発生した。郡上郡内の農民は検見廃止をはじめ諸課役廃止16条を藩に要求し,藩は一度はそれを受理した。しかし幕府に手を回して,美濃郡代青木次郎九郎から,翌55年に郡内庄屋36人に検見取を承知させた。それを機に農民は再び結集して,藩へ,また老中酒井忠寄へ駕籠訴し,なかなか幕府の審理が行われないため,58年には評定所前の目安箱に箱訴している。この間藩側の切り崩しがあったりして苦しい闘いが展開されているが,一揆に結集した者を立百姓,未結集や脱落者を寝百姓と称した。この一揆の最中,郡上藩管轄下の石徹白(いとしろ)の白山社領で神頭職杉本左近派と神主上村豊前派とが激しく対立し,郡上藩によって石徹白を追われた杉本派が一揆のさなかの1756-58年に,幕府に駕籠訴,箱訴を行い上村派の不当を訴えた。ついに58年に,幕府の両事件への裁許が下り,農民一揆では13人の死罪,石徹白騒動では上村豊前が死罪になるなど多数の犠牲者が出たが,他方で藩主金森頼錦の領地没収をはじめ,老中本多正珍,若年寄本多忠央,大目付曲淵英元,勘定奉行大橋親義,美濃郡代青木次郎九郎らが役義取上げ,知行召上げなどに処せられた。この後に登用される幕閣が,田沼政権に連なっていくところから,郡上一揆は幕政転換の契機となったとされている。また,この一揆を講談化して口演した馬場文耕が幕政を批判したとして獄門に処せられ,その講談本《平かな森の雫》が発禁とされたことも,幕府の思想統制の強化のはじまりをしめすものとして注目されている。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「郡上一揆」の解説

郡上一揆
ぐじょういっき

美濃国郡上藩でおきた1677~83年(延宝5~天和3)の延宝一揆と,1754~58年(宝暦4~8)の宝暦一揆の総称。延宝一揆は年貢増徴策への反対運動に端を発し,やがて藩内を二分する家中騒動に発展。農民側についた家老の暗殺阻止に百姓が城下に集結する事件などが発生。また江戸藩邸へも出訴した。1683年両派の家臣処罰されて決着。宝暦一揆は検見取(けみどり)への移行に対して百姓が城下強訴や老中駕籠訴・評定所箱訴などを繰り広げた闘争。これに白山中居(ちゅうきょ)神社の神職(白川派と吉田派)間の対立した石徹白(いとしろ)騒動が重なり,責任を問われた藩主金森家は除封され,さらに老中本多正珍(まさよし)などの処罰をひきおこした。途中百姓が最後まで一揆を闘うとした立者(たてもの)と一揆から脱落した寝者(ねもの)に分裂,後々まで影響を与えた。石徹白騒動は藩によって500人余が追放され,餓死者70人余を出した。一揆後きびしい隠田の摘発が行われた。義民に前谷(まえたに)村定次郎・歩岐島(ほきじま)村四郎左衛門などがいる。

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