アルミニウムの酸化物。工業的にはアルミナともいう。水酸化アルミニウムAl(OH)3(=Al2O3・3H2O)からAl2O3までの脱水過程の中間にある含水酸化物Al2O3・xH2O(0<x<3)を含めることもある。純粋なものはα(アルファ)‐アルミナといい、わずかに水分を含んだものをγ(ガンマ)‐アルミナ(Al2O3・nH2O;0<n<0.6)といっている。γ‐アルミナは強熱すると脱水してα‐アルミナとなる。古くβ(ベータ)-アルミナとよばれたものがあるが、これはNa2O・6Al2O3であることが示されている。α-Al2O3は天然にはコランダム(鋼玉)として産出。コランダムの人造品は商品名でアランダムといわれている。水に不溶。酸、アルカリにも難溶。耐火性が高い。モース硬度9.0。切削砥石(といし)、耐火レンガ、耐火材などに用いられる。不純物を含んで宝石となったものにルビー(紅玉、酸化クロム(Ⅲ)0.2~0.3%)やサファイア(青玉、酸化チタンと酸化鉄(Ⅲ)0.1~0.2%)がある。不純物を含んだコランダムはエメリーとよばれ研磨剤として用いられる。活性アルミナとして市販されているものは、アルミナ水和物を加熱脱水して得られる多孔性固体で、主成分がγ‐アルミナである。水分吸着能に優れ、各種化学反応の触媒ないし触媒担体として広く用いられており、またクロマトグラフ用吸着剤として有用である。
[守永健一・中原勝儼]
化学式Al2O3。アルミナという慣用名が広く使われている。いくつかの変態が存在するが,すべて白色の固体で水に難溶である。(1)α-アルミナ 天然にはコランダムとして産出する。金属アルミニウムの燃焼,または水酸化アルミニウムの加熱によってつくられる。三方晶系(または六方晶系)結晶で,酸素原子は六方最密パッキング,その間隙の2/3にアルミニウム原子が存在し,アルミニウムのまわりには酸素がほぼ八面体に配位している。酸素原子のまわりには4個のアルミニウム原子が存在する。融点2015℃,比重3.97。耐火性がきわめて高く,また蒸気圧が1950℃でも10⁻6気圧と低いので蒸発しにくい。モース硬度が高い(8.8)。電気絶縁性がよく,300℃でも1.2×1013Ω・cmの抵抗を示す。(2)β-アルミナ 六方晶系。酸素は六方最密と立方最密とが交互にパッキングした配列となっている。比重3.3。(3)γ-アルミナ 等軸晶系。酸素は立方最密パッキング。比重3.5~3.9。β-アルミナもγ-アルミナも約1000℃に熱するとα-アルミナに変わる。なお工業的製法,用途などは〈アルミナ〉の項を参照。
Al2O3・nH2Oの組成をもつ物質もアルミナ(または水和アルミナ)ということがあるが,これは実際にはAlO(OH)のような酸化水酸化物である。このうち活性アルミナと呼ばれる物質は,触媒,クロマトグラフィーなどに広く使われているが,これも酸化水酸化物で,場合によってはほぼ[Al2(OH)5]2(CO3)・H2Oの化学式に相当する水酸化炭酸塩であることが多い。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Al2O3(101.96).アルミナともいう.天然にはコランダム(鋼玉)として産出する.金剛砂は不純物を含んだもので,ルビーやサファイアは微量の重金属を含んだものである.ボーキサイト,ギブス石,ダイアスポアは水和物である.いくつかの変態があるが,いずれも無色で水には溶けず,鉱酸や強アルカリにも難溶であり,燃焼性や毒性はない.熱的に非常に安定である.両性酸化物だが,強熱したものは酸に難溶となり,融解したものは硬度が大きく,耐火性にもすぐれている.アルミン酸塩水溶液の加水分解により各種の水和酸化アルミニウムが得られる.水和酸化アルミニウムを高温で脱水すると安定なα-アルミナを生じる.α-アルミナは,密度3.9 g cm-3.融点2015±15 ℃,沸点2980±60 ℃.水に不溶.モース硬さ9.脱水温度が300 ℃ より低いと準安定なγ-アルミナが生成する.γ-アルミナは密度3.5~3.9 g cm-3.吸湿性で,軟らかい.さらに低温で脱水したものが活性アルミナで,表面積がきわめて大きいために吸着剤,乾燥剤などとして用いられる.触媒,半導体,研磨剤,工具研削剤,耐熱剤,絶縁体,レーザー材料,模造宝石,ガラス繊維,ニューセラミックス原料などに用いられる.[CAS 1344-28-1:Al2O3][CAS 14457-84-2:AlO(OH)]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アルミニウムの酸化物Al2O3で,酸化アルミニウムともいう。α型(三方晶系),β型(六方晶系),γ型(等軸晶系)があり,高温ではα型が安定である。…
…これは表面に薄い酸化物皮膜を生じて内部を保護するためである。しかし高温になると急に酸化が進行し,融点近くに熱すると強い光を発して燃焼し,酸化アルミニウムAl2O3となる。酸には溶けるが,濃硝酸には酸化物皮膜をつくるため比較的侵されにくい。…
※「酸化アルミニウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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