金肥(読み)キンピ

精選版 日本国語大辞典 「金肥」の意味・読み・例文・類語

かね‐ごえ【金肥】

  1. 〘 名詞 〙 農家で金銭を支払って買い入れる肥料。化学肥料など。きんぴ
    1. [初出の実例]「干鰯油糟、是を畿内辺にては金肥といふ」(出典:農稼業事後編(1830)三(古事類苑・産業三))

きん‐ぴ【金肥】

  1. 〘 名詞 〙 金銭を支払って購入する肥料。化学肥料その他の人造肥料をいう。かねごえ。〔訂正増補新らしい言葉字引(1919)〕

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百科事典マイペディア 「金肥」の意味・わかりやすい解説

金肥【きんぴ】

販売肥料とも。堆肥厩肥(きゅうひ),人糞尿などの自給肥料に対し,商品として販売される肥料。日本では江戸時代から魚肥油かすなどが金肥として登場した。元来農家が主として自給肥料にたよっていたころの言葉で,今日では化学肥料をはじめ販売肥料が肥料の大部分を占めている。
→関連項目イワシ(鰯)刈敷肥料

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金肥」の意味・わかりやすい解説

金肥
きんぴ

販売肥料のことで、農家が金を出して購入する肥料であることからこのようによばれ、購入肥料ともいう。農家が自家生産する自給肥料の対語。自給肥料が大部分天然に産する動植物質の有機質肥料であるのに対し、金肥は人工的、工業的に大規模に生産される無機質の化学肥料がその大部分を占める。ただし、魚肥、油かす類、鶏糞(けいふん)、骨粉などの動植物質肥料と尿素など一部の化学肥料は有機質である。自給肥料が一般に成分含有量が低く品質も一定せず、しかも取り扱いにくいのに対して、金肥は高成分で品質も一定しており、取扱いが容易であるなどの特徴がある。

[小山雄生]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「金肥」の解説

金肥
きんぴ

農民商人を通して購入する肥料。近世農業の施肥技術において刈敷・厩肥・人糞尿・藻などの自給肥料に対していう。採草地をもたない平場村落や商品作物の栽培が本格化した先進農業地では,糠・油粕・灰・〆粕(しめかす)・干鰯(ほしか)などの金肥が大量に畑に投下された。都市近郊農村では,都市住民の人糞尿を下肥として購入した。金肥価格が高騰して農業経営を圧迫すると,農民は値下げを求めて大規模な訴願運動をおこし,肥料商の打ちこわしまで発生させた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「金肥」の解説

金肥
きんぴ

江戸時代,農家が貨幣で購入した肥料
江戸時代に入り商品作物の栽培がさかんになるに伴って,人糞肥・堆肥 (たいひ) などの自給肥料のほかに購入肥料が使われるようになり,油粕 (あぶらかす) ・干鰯 (ほしか) がその代表であった。

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