不動産などに対する強制執行の一方法。債務者の所有する不動産等を売却せずに,管理人に使用収益させ,そこから得られる収益(賃貸料など)を債務者の負う金銭債務に振り当てる方式(民事執行法43条以下)。収益がその債務の引当てとなるため,収益執行とも呼ばれる。この点で,不動産などを裁判所の手で売却し,配当金を得る強制競売と異なる。
強制管理は,収益のあがる財産であれば,登記のある地上権・永小作権などもその対象にできる。強制管理は,譲渡禁止の不動産や,売却しても抵当権者に弁済をしたら余剰が出る見込みのない不動産などの場合に有効である。しかし,強制競売と異なり,一度に債務の弁済に当てうる収益額が少ないことや,弁済がすべて終了するまでに時間がかかることなどから,その利用度は一般的には低い。とくに農地の場合は,第三者による耕作・収穫という技術的・専門的作業を伴う必要があるため,利用されにくい。これに対し,船舶などは,もともと制度上,強制管理の対象とされていない。一般的に,専門的技術を持たない第三者には管理・収益が遂行できず,とりわけ人の生命と航行の安全に密接にかかわりがあるためである。しかし,不動産管理が専門の不動産会社により整備されていくなかで,強制管理は有効な民事執行方式として機能するようになるであろうし,現在は強制管理が許されない船舶や航空機などにも,管理人を限定して強制管理を認めることを考慮してもよいと思われる。
手続としては,不動産所在地を管轄する地方裁判所が,債権者の申立てに基づく強制管理の開始決定によって目的物を差し押さえ,債務者の使用収益権を奪い,管理人を任命する。管理人には弁護士や信託会社,銀行などがなる場合が多く,管理人が財産の管理ならびに収益の収取や配当などを行う。この配当に充てられる金銭は,収益された金銭から,公租,公課および管理人の報酬等必要な経費を控除したものである。
→強制執行
執筆者:清田 明夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
金銭債権の満足のため、債務者所有の不動産に対して行う強制執行。執行の対象である不動産を売却しないで、賃貸などをしてそれから得られる収益(賃料など)でもって金銭債権の充足にあてるという方法で行われる(民事執行法93条以下)。売却しないから一時に多額の金銭を取得することはできないが、少額の債権の満足のためには、債務者が不動産の所有権を失わなくてすむという利点があり、目的物件の売却が困難な場合にも便利な方法である。
強制管理の手続は債権者の申立てにより開始される。裁判所はこれを認めるときは強制管理開始決定を下し、管理人を選任する。開始決定では、当該不動産の差押えを宣言し、債務者に対しては収益処分の禁止を、給付義務を有する第三者がある場合には第三者に対して管理人への給付を命令する。また、管理人は、管理・収益のため不動産を債務者にかわって占有することができ、その不動産から得た収益から、執行裁判所の命じた債務者の生活費、その不動産の負担すべき租税などの公課、管理人の報酬その他の必要な費用を控除し、その残額を債権者に配当する。債権者は、強制競売(けいばい)と強制管理の双方が可能である場合には、そのどちらを選んでもよいし、二つの方法を併用することもできる。すなわち、不動産価額が低い場合に強制管理をし、高価になった時点で強制競売に切り替え換価することも可能である。
[本間義信]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…金銭債権の満足のために債務者所有の不動産に対して行う強制執行。その不動産を売却して代金を債権者に配当する強制競売と,裁判所が選任する管理人がその不動産を管理し,収益を債権者に配当する強制管理の2種類があり,どちらの方法で行うかは執行を申し立てる債権者が選択する(民事執行法43条)。強制管理は債務者の有するアパート等,継続的に収益を生ずる不動産について行われることが多い。…
※「強制管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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