厚みのある短冊形鉄片の一側を刃とし,短い木柄をつけた工具の総称。両刃のものや,長柄のものなどもある。鉈は草,篠などを伐り払う,薙断(なぎたち)の略といわれる。また,割る,削るということから,庖丁という地方もある。木工具であるとともに山樵具(杣(そま)具),農具でもあり,その形状,用途の種類は多い。木工用としては,桶師,屋根葺きの柿師(こけらし)用の割鉈,薄板剝(は)ぎ用の剝(へ)ぎ庖丁,山樵具または農具として枝打ち用の鉈鎌,鼻付き鉈などがある。
執筆者:成田 寿一郎
東北日本では片刃の鉈が,西南日本には両刃の鉈が分布するが,南西諸島では山刀が使われ,鉈は戦後に導入された。また柄付け穴(シツ)をもつ鉈は四国,九州に多く見られる。鉈には包丁型の直鉈と先端に鉤(かぎ)のついた鼻付き鉈とがある。〈鼻〉は石の上で鉈を使っても刃を痛めないためと説明されているが,実用的なものとしてより,鍛冶のある種の呪術に関係したものではないかという見方もされている。鉈は年末に他の農具とともに飾って供物をし,正月の仕事始めに〈鉈起し〉といって使い初めをしたり,また鍛冶屋では剣,鎌,鉈の模型を作り水の字形に並べて神に供える。鉈は正月の成木責めや墓穴の魔除けにも使われ,新潟では新生児の雪隠(せつちん)参りの際に男児は鉈,女児は杓子を腰にさしたという。鉈は伊豆の大島で大切な嫁入り道具の一つとされたように,主要な農具であったから,北九州の農家では12月13日の下男下女の出替り日を〈鉈ナゲ〉と称していた。鉈の形をした鉈餅を搗(つ)く風習も各地でみられ,三州吉田領の《風俗問状答》には節分の夜に他家にこの餅を食べに行く〈鉈借り〉の風習があったと記している。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鉈は、本来林業や狩猟など山仕事に適した刃物類であり、薪割(まきわ)りにも使われる。種類は、刃の形状によって、剣鉈(けんなた)、腰鉈、海老(えび)鉈、竹割鉈などがある。
剣鉈は刃の先端がとがっているのが特徴。狩猟時の獲物の解体や、山に入ったときは枝を落としたり、藪払(やぶはら)い、木のつるを切ったりなど用途は多彩である。
腰鉈は刃が長方形で、枝や木を切る山仕事に欠かせない。また薪割りにも使用する。
海老鉈は、山仕事で森林の枝打ちに使用される。腰鉈に比べて少し幅広で刃の先端には、石などに当たって刃がこぼれるのを防ぐために「石突き」とよばれる突起がついている。
竹割鉈は、竹を縦に割るために使用する細身の鉈。竹に対して刃がまっすぐ入る必要があるため、刃は「両刃」になっている。
鉈の刃には片刃と両刃があり、両刃は右利き左利きにかかわらず扱える。薪や竹を縦割りするのに適しており、切り口はまっすぐになるが、刃が欠けやすい弱点がある。木の皮をはいだり枝を払ったりするには、両刃に比べて薄く鋭利な片刃がよい。
鉈は、一般的に木製や皮革の鞘(さや)に入れて腰にぶら下げる。枝払いや薪割りには刃自体の重さがあると、その勢いと刃の鋭さで切断しやすくなる。
[赤尾建蔵 2021年7月16日]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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