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鉱害 コウガイ

6件 の用語解説(鉱害の意味・用語解説を検索)

デジタル大辞泉の解説

こう‐がい〔クワウ‐〕【鉱害】

鉱業がもたらす害。地下採掘による有毒ガスの発生、鉱水の流出、地盤沈下、製錬過程での鉱煙や廃水の排出など。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

鉱害

石炭などの採掘による地盤沈下や傾斜によって家屋が倒壊したり地面が陥没したりする被害。かつては国が中心となって復旧したが、九州の筑豊地方では巨額の事業に介入する「鉱害屋」が横行、贈収賄事件も相次いだ。02年度に岐阜、愛知、福岡、長崎などの計12県で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とそれぞれの県が出資して復旧のための基金が設置された。

(2008-10-06 朝日新聞 朝刊 岐阜全県 1地方)

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百科事典マイペディアの解説

鉱害【こうがい】

鉱山の採掘・製錬作業などの廃棄物によって鉱山外に生ずる被害。煙害や,鉱山廃水,坑内水などで河川や海の水質が汚染されることによる人畜,水田,水産資源などの被害(鉱毒),採掘による地表陥落など。
→関連項目鉱山保安

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世界大百科事典 第2版の解説

こうがい【鉱害】

鉱業活動によって引き起こされる環境破壊地域社会の損害を指す。本質的には公害の一形態であるが,鉱害が公害一般と区別されてきたのは,日本では鉱業による公害が他にさきがけて早くから激甚化し,鉱害賠償規定も戦前から成立していたためである。 鉱害は採掘過程からのものと製錬過程からのものとに分かれるが,前者には地表の陥落,地盤沈下,坑内水や捨石からの浸透水による水の汚染があり,後者には大気汚染,製錬排水や鉱滓からの浸透水による水の汚染がある。

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大辞林 第三版の解説

こうがい【鉱害】

鉱業によって引き起こされる被害。有害な鉱煙や廃液が人畜や農作物に及ぼす害や地表の陥落やぼた山の崩壊による被害など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鉱害
こうがい
injury from mining

鉱山が採掘、選鉱、製錬などの過程で第三者に与える害。鉱山に起因した公害ともいうべきものである。鉱業法(昭和25年法律289号)第109条には「鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若(も)しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいたい積又は鉱煙の排出によって他人に与えた……損害」と定義されている。今日では休廃止した鉱山による二次的な鉱害もみられる。[西田 正]

鉱害の歴史

鉱害は公害の原点ともいわれるようにその歴史は古い。すでに江戸時代に佐渡(新潟)、別子(べっし)(愛媛)、生野(いくの)(兵庫)、土呂久(とろく)(宮崎)など、金属鉱山における鉱毒の記録がある。本格的な鉱害の発生は、近代化が推進された明治時代に入ってからである。足尾(栃木)、別子、日立(茨城)、小坂(こさか)(秋田)などで鉱毒、煙害事件が続出した。石炭採掘による鉱害が次に続く。明治以来約1世紀にわたる石炭採掘のため、筑豊(ちくほう)(福岡)、宇部(山口)などの産炭地では著しい被害を被り、被害はまだ残存している。
 第二次世界大戦後の鉱害では、日本の四大公害裁判の一つであるイタイイタイ病事件が著名で、ほかに水溶性天然ガス採取に起因した地盤沈下問題がある。新潟ガス田、南関東ガス田における地盤沈下が知られ、1955年(昭和30)ごろから顕著となった。過剰なガス採取に伴うガス層内の圧力低下が原因である。ガス採取量の制限、地下への還元など種々の規制措置の結果、沈下は鈍化傾向を示している。今日では休廃止金属鉱山の坑内水の流出、旧産炭地における浅所(せんしょ)陥没の発生、古洞水(ふるとうすい)の湧水(ゆうすい)など二次的な鉱害の発生が新たな問題となっている。
 外国では石炭採掘による鉱害が古くからみられる。ドイツ、イギリスなどではすでに18世紀以来、石炭採掘がなされ、しかも比較的狭い地域で農地や工業地帯などの下が多く採掘されているため被害の歴史も古い。したがって、鉱害防止のための採掘方法、測量制度、鉱害賠償制度なども早くから検討されている。たとえばドイツでは、マルクシャイダーMarkscheiderの名称で鉱業権者および土地所有者から独立している鉱山調査測量技師の制度が確立されている。古くから精密な測量を継続して行っており、これが今日の正確な鉱害予測の基礎となっている。イギリスでは、炭鉱の国有化(1946)によって採掘法が統一されたため、鉱害の減少、鉱害賠償の円滑化などの成果を得ている。[西田 正]

鉱害の種類と対策


土地の掘削による鉱害
石炭、亜炭の採掘に伴う地盤沈下が大きな問題である。被害は明治時代にもみられたが、昭和に入ってとくに激烈を極めた。筑豊炭田、宇部炭田などの被害が著しく、最盛期には246鉱山で全国出炭量の約40%を占めた筑豊炭田では、累計沈下量が7~8メートルに及んだ所もあった。「石炭採掘による鉱害のため、美田変じて泥海と化し、住宅は日夜倒壊の危険に脅かされ、交通機関は杜絶(とぜつ)し、祖先の墳墓は水底に没する等惨憺(さんたん)たるその実情は、路傍の人もなお、正視するに忍びないものがある」(1950年、第7回国会衆議院本会議での鉱害に関する決議の冒頭部分)ともあるように、被害は広範囲に及んだ。
 石炭採掘による被害現象は、地表面の沈下、傾斜、湾曲、水平移動、およびひずみの五つの要素(鉱害五要素)に分類される。これらの要素が単独あるいは複合して、田畑、家屋、鉄道、橋梁(きょうりょう)、道路、河川、井戸、上下水道などの地表物件に諸種の被害を与える。水平な炭層が採掘された場合、限界角(採掘端と地表面の沈下端を結ぶ線が水平面となす角)で規定される範囲の地表面が移動する。限界角は地域により異なるが、日本では55度前後である。沈下は採掘中央部の直上付近がもっとも大きくなる。地表面の水平移動は採掘中央部では小さく、採掘端の直上付近が最大となる。ただし、採掘の左右では移動の方向が異なる。沈下量は、採掘された炭層の厚さ(山丈(やまたけ)または炭丈(すみたけ)という)に比例するが、採掘跡の充填(じゅうてん)、保安のための炭柱を残す採掘方法などにより沈下量を減少させられる。また、採掘の順序、速さ、範囲などを適当に調整して採掘(調和採掘法)を行うと、地表上の特定な地域の傾斜あるいは引張りひずみがなくなり被害が最小となる。今日では日本の地盤特性に応じた沈下理論も確立され、沈下予測計算も可能となっている。
 炭鉱閉山後は浅所陥没が新たな問題となる。地盤強度の低下、構造物などの荷重、地下水位の変動などが原因となり、地表面が地下浅所に残存している坑道あるいは採掘による空洞(古洞)へ瞬時に陥没する現象であり、つぼ抜けともいわれる。降雨との関連性がきわめて強く、雨期、豪雨時に頻発する。旧産炭地の筑豊地区では毎年50~60件発生している。地震も浅所陥没発生の誘因となる。1978年(昭和53)6月の宮城県沖地震(マグニチュード7.4)のとき、東北地方の亜炭採掘地域(宮城、北上、最上(もがみ)、相馬(そうま)など)では、通常毎年15~20件の浅所陥没が、一挙に200件以上発生している。浅所陥没は一般に古洞深度が30メートル以浅で、しかも炭層露頭線近くに多発している。陥没孔の大きさは直径3メートル、深さ2メートル程度のものが多い。旧産炭地に重量構造物を構築する場合の対策工法には、(1)充填工法、(2)剥土(はくど)工法、(3)杭(くい)打ち工法、(4)梁(はり)工法などがあるが、古洞の賦存状況、構造物の種類、経済性などを考慮して選択される。
 石炭採掘による鉱害の復旧は、臨鉱法とよばれる臨時石炭鉱害復旧法(昭和27年法律295号)に基づいて行われている。臨鉱法は当初10年の時限法であったが、累積している鉱害が膨大であったため、これまで二度延長されている。復旧は無過失賠償責任制度、すなわち加害者・被害者当事者間の解決に任された形であるが、国および地方自治体も一部負担して復旧している。とくに農地についてはその負担割合が大きく、鉱業権者は15%の負担でしかない。鉱業権者が無資力または所在不明の場合は国および地方自治体で復旧を行っている。1981年までに国が投じた鉱害復旧費は4000億円にも達するが、未復旧の農地、家屋などはまだ残存している。[西田 正]
鉱廃水による鉱害
足尾銅山鉱毒事件、イタイイタイ病事件などがこの種の鉱害では著名である。足尾銅山および神岡鉱山の鉱廃水がそれぞれ渡良瀬(わたらせ)川、神通(じんづう)川を汚染し、沿岸流域の住民、農作物などに被害を与えたものである。鉱廃水とは、坑内水、露天掘り廃水、選鉱廃水、捨石または廃滓堆積(はいさいたいせき)場からの浸出水などである。多くの場合、遊離酸、重金属イオン、微細な鉱物粒子などの有害物質を含有する。また、鉱山が操業停止後も、坑口から坑内水を流出し被害を及ぼす場合もある。通商産業省(現経済産業省)の資料によると、約5700の休廃止鉱山のうち少なくとも約600鉱山は坑内水流出の危険性があり、鉱害防止対策が必要とされている。その方法には(1)中和沈殿法、(2)坑道閉塞(へいそく)法などがある。(1)は坑内水中の遊離酸を消石灰、炭酸カルシウムなどで中和し沈殿除去する、もっとも確実な方法ではあるが、処理施設建設費、処理費、さらに中和沈殿物の廃棄場所が必要である。旧松尾鉱山(岩手)の場合、建設費として約65億円、処理費として毎年約5億円が必要とされ、中和沈殿物の堆積場は20年分しかないといわれている。(2)は坑道をコンクリート製のプラグ(ダム)で密閉し坑内水の流出を防止しようとする方法で、施行後の維持管理は不要であるが、坑道周辺の岩盤が軟弱な場合、閉塞箇所が多い場合などは不適である。ほかに、坑内水を地下に戻す地下還元法、地下水が鉱体と接触しないように鉱体を被覆する方法などがある。
 旧産炭地でも金属鉱山の場合と同様な問題が生じている。炭鉱閉山後の坑内水位上昇による坑内水(古洞水)の湧水である。筑豊地区だけでも湧水箇所は50か所以上もあり、田畑の湿潤化、赤水、河川の汚染などを生じている。古洞水の湧水は一般に50メートル以浅の採掘がある地域で、しかも低地、谷部がほとんどである。湧水箇所よりも標高の高い坑口、採掘跡、山地などのため、古洞水が被圧され、採掘跡、断層、破砕帯などを経由して地表に湧水する。水質は、pH3~5の酸性で硫酸イオンを多量に含み、湧水箇所に酸化鉄の赤い沈殿物を生ずる高濃度のものから、河川水とほぼ同水質の低濃度のものまで多種多様である。古洞水の湧水防止には、揚水により坑内水位を低下させる抑(おさ)え水とよばれる方法がとられている。[西田 正]
鉱煙による鉱害
この鉱害は煙害ともいわれ、非鉄金属の乾式製錬所から排出される鉱煙による被害が多い。鉱煙は多くの場合、煙塵(えんじん)、亜硫酸ガスなどの有害物質を含有する。煙塵は表面に亜硫酸ガスを吸着するため、空気中での希釈、拡散を妨げ煙害を助長する。しかし、電気的に煙塵を沈積させるコットレル除塵装置の開発の結果、煙塵による害は減少している。亜硫酸ガスは空気に対する比重が2.264であり、500ppmの濃度では人は最初の一息で窒息するといわれている。植物に対する有害作用も著しく、煙害が多発した明治時代には製錬所周辺の山林は荒廃した。別子銅山煙害事件もその一つである。住友鉱業別子銅山の製錬所は当初、新居浜(にいはま)(愛媛)にあったが、排煙中の亜硫酸ガスが農作物などに多大の被害を与えたため、1904年(明治37)四国本土から約20キロメートル離れた四阪島(しさかじま)に製錬所を移転して煙害防止に努めたが、移転後も煙害はやまず、四国本土96町村に重大な被害を及ぼした。煙害防止のため硫煙(りゅうえん)希釈装置と称する低く太い煙突を採用したりしたが、効果は得られなかった。鉱煙中の亜硫酸ガス処理についての研究も積極的に行われ、1929年(昭和4)ペテルセン硫酸製造装置が導入された結果、製錬硫黄(いおう)量の70%以上が硫酸に転化され、1916年(大正5)には1%もあった鉱煙中の亜硫酸ガス濃度は、1931年に0.53%、1935年には0.19%まで減少した。その後、アンモニアを用いた中和法に切り替え、明治時代から続いた煙害事件はいちおう解決した。今日でも鉱煙処理は基本的にはコットレル装置による煙塵除去、亜硫酸ガスの硫酸転化であり、処理技術も大幅に進歩したため、従来のような煙害の発生はほとんどない。[西田 正]
捨石や鉱滓の堆積による鉱害
この種の鉱害では堆積物の崩壊または流出による被害が多い。捨石は脈石(無価値の鉱石)、浮遊選鉱の廃滓など、鉱滓とは、鉄製錬ではのろ、非鉄製錬ではからみなどといわれている廃棄物である。その処理には、(1)採掘跡の充填に使用、(2)海岸埋立てに使用、(3)土木材料として利用、(4)堆積場に廃棄などがある。(4)が一般的で、谷間に流出防止用の土止め施設(ダム)を築造して、捨石、鉱滓が廃棄される。捨石、鉱滓は含水すると総じて流動性が増加するため、暗渠(あんきょ)などの排水施設も必要である。事故は豪雨時などに多く、代表的な崩壊事例に、1936年11月、尾去沢(おさりざわ)鉱山中沢堆積場(秋田)のダム決壊がある。500人近くの死傷者があり、300戸以上の家屋が被害を被った。地震による崩壊例は少ないが、1978年1月には、伊豆大島近海地震(マグニチュード7.4)による持越(もちこし)鉱山ほうずき沢堆積場(静岡)の崩壊が記録されている。地震による堆積物の液状化が崩壊の原因と考えられている。
 石炭採掘の場合も、ぼたまたはずりとよばれる捨石を多量に産出し、普通は坑外に山積み(ぼた山またはずり山という)されるため、風化に伴う崩壊、地すべりなどの問題を抱えている。ぼた山またはずり山はかつては産炭地の象徴であったが、自然発火などの危険性も有する。対策は、ぼた山の取り崩しが最良であるが、膨大な費用が必要である。現在、取り崩したぼたを用いて海岸の埋立てを行い、埋立地およびぼた山の跡地を公共用地として利用しようとする考えもある。[西田 正]
『萩原義一・林裕貴著『鉱山読本』第3巻第20号(1963・技術書院) ▽飯島伸子著『公害、労災、職業病年表』(1977・公害対策技術同友会)』

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世界大百科事典内の鉱害の言及

【鉱業】より

…また汚染物質が重金属などの蓄積性をもつものの場合には,土壌汚染が問題となる。かつての日本では,銅山業,石炭業などを中心に製錬過程からの公害が大きな問題となり,とくに鉱害と呼ばれたこともあるが,今日では製錬過程での大気汚染が最大の問題となっている。鉱石は一般に硫黄分を含むため,製錬過程では多量の亜硫酸ガスが発生し,硫酸製造および排煙脱硫が行われない場合には高濃度の大気汚染が生ずる。…

【鉱山】より

…またいくつかの鉱山の鉱石を集めて処理する中央選鉱工場といったものもある。
[鉱害]
 鉱山の活動は,地下の土石を採掘し,その中の有用成分を採取することであるから,必然的に自然環境の破壊を伴う。したがって,鉱山の開発に際しては,その点に十分な配慮がなされなければならない。…

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